artscapeレビュー

ホナガヨウコ×サンガツ『たたきのめすように見るんだね君は』(DVD、WEATHER/HEADZ、2009)

2009年03月01日号

昨年6月に恵比寿siteで上演した同名作品をDVD化。「音体パフォーマンス」と称して独自の音や言葉とダンスとの繋がりを模索していたホナガサンガツとのコラボレーションで見せたのは、きわめて緻密なシンクロだった。ダンサーと音楽家のコラボというと、その日限りの即興がほとんどで、当たり障りのないところで接触するか、バトルにもならずディスコミュニケーションに陥る可能性が非常に高い。本作の素晴らしさは、そうした凡庸さを回避して、ときにダンスが主となり演奏が振りに音をあてがったかと思えば、ときにその正反対を行ないもする絡み合いの丁寧さにある。聴きながら踊るダンサー、見ながら演奏するプレイヤー。聴くことと踊ること、見ることと演奏することが緊張感をともなって交わる。サンガツの演奏、親近感のあるホナガのダンスそれぞれが魅力的なのは言うまでもないのだけれど、両者がひとつの塊となり舞台空間に渦をつくる様は奇跡的でさえある。そうしたパフォーマンスを映像作品として見ごたえのあるものに仕立て上げたという点でも、本作の価値は大きい。

2009/02/21(土)(木村覚)

2009年03月01日号の
artscapeレビュー