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artscapeレビュー

原久路「バルテュス絵画の考察」

2009年12月15日号

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会期:2009/10/27~2009/11/01

TOTEM POLE PHOTO GALLERY[東京都]

なんとも不思議な作品。静謐な雰囲気のモノクロームのポートレートが並んでいるのだが、それらは皆どこかで見たような印象を与える。それもそのはず、すべて「20世紀最大の画家」バルテュスの作品の構図をそのままなぞり、モデルを使って活人画風にその場面を再現しているのだ。とはいえ、フランスの豪奢な邸宅は日本家屋に置き換えられ、モデルはセーラー服や学生服を着ていて、背景の家具・調度もそれぞれ別なものになっている。だが全体としてみると、バルテュスの《居間》(1942/47)、《美しい日々》(1944/49)、《本を読むカディア》(1968)などの作品の雰囲気は、とてもよく再現されているといえるだろう。そのエッセンスにかなり深く肉迫しているように感じられるのだ。
作者の原久路がなぜこんな作業を思いついたのかは知らない。どちらにしても、絵画の画面を写真に移し替えていくのには、大変な手間と時間がかかり、繊細な集中力が必要だったことは容易に想像がつく。「絵画の空気遠近法を表現するために」、テレビの撮影などで使う濃縮した液体で霧を発生させる機械を利用しているのだという。また、バルテュスの絵のポーズは実際にやってみると、かなりアクロバティックで無理な体位のものが多いのだそうだ。そんな苦労を楽しみつつ、細かな作業に無償の情熱を傾けている様子が、画面からじわじわと伝わってきた。絵画と写真の独特のハイブリッド様式のスタイルが形をとりつつあるように見える。

2009/11/01(日)(飯沢耕太郎)

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