artscapeレビュー/プレビュー
松田達のレビュー/プレビュー
プレビュー:東京芸術学舎

京都造形芸術大学と東北芸術工科大学がプロデュースする学校であり、2010年10月に外苑前の校舎にて開校予定の新型アートカレッジ。千住博を学長とし、著名な芸術家、文化人等が講師陣に名を連ねており、104の講座が開講する。東京芸術学舎は、東京企画構想学舎、PROJECT INSTITUTEとともに、日本文化藝術研究センターの3本柱のひとつであり、神宮外苑のキャンパスはそれら芸術教育施設の拠点となる。15歳以上であれば誰でも受講できるという開かれた学校が、どのように根づいていくのか、秋からの展開が注目される。多少話がそれるが、フランスにはコレージュ・ド・フランスという、知の最高峰であり受講料も登録の必要もない世界でも珍しい教育機関がある。教育の形態や可能性はさまざまであり、この東京芸術学舎のように、新しい教育機関の可能性はまだまだあるのではないだろうか。
URL:http://gakusha.jp/
2010/07/31(土)(松田達)
3331 Arts Chiyoda
3331 Arts Chiyoda[東京都]
秋葉原と湯島のちょうど中間辺りにあり、2005年に廃校となった旧練成中学校を改修したアートセンター。改修は佐藤慎也、メジロスタジオ他。2010年6月にグランドオープンし、3月のプレオープン時以降、様々な展覧会やイベントが行なわれている。1階にはギャラリーやカフェ、ラウンジ、地階から3階までの部屋には、多くのアーティストやクリエイターが拠点を構え、それとは別にシェアオフィスも完備している。廃校の活用事例自体はすでに多くあり、雰囲気的には例えば旧世田谷区立池尻中学校を改修したIID(世田谷ものづくり学校)などに似ていると感じたが、3331 Arts Chiyodaの特徴は、第一にアートセンターであるという点であろう。福住廉はその二つの画期的な特徴として、イベントや展示の多彩さと、(BankART1929と比較して)ホワイトキューブを施工した点を挙げている。特に後者は近年の美術館の動きに引きずられておらず、アートスペースとしての今後の存在感を獲得する可能性が指摘されている。一方、筆者は隣の練成公園との一体再生の手法に興味を惹かれた。公園と学校を幅24mの広いウッドデッキでつなぎ、広い芝生を持つ公園からアクセスが可能となっている。芝生では、多くの人々がくつろいでおり、秋葉原に程近い場所に急に現われたオアシスのように感じた。たまたま訪れたのが週末であったからか、東京で公園がこれだけ有効に使われている例は見たことがない。それほど大きくない公園であり、くつろいでいる人の密度が相当高かったことが、これまでにない印象を生み出していたのかもしれない。例えば、代々木公園や新宿御苑における人々の公園の使い方とは、まったく別の使い方である。これだけの密度で人々がくつろいでいる様子は、実は筆者はパリでの人々の公園の使い方ととてもよく似ていると感じた。その密度が生む親密感は、独特のものがあり、東京でこのような場所が生まれていたことに驚きを感じた。それほど広くないけれども豊かな芝生をもつ公園と、廃校をリノベーションしたアートセンターという、不思議にマッチした組み合わせが興味深い。
2010/07/31(土)(松田達)
高嶺格「~いい家、よい体~」展
会期:2010/04/29~2011/03/21
金沢21世紀美術館[石川県]
正確にいえば、高嶺格の本展示は現時点でレビューすることはできない。なぜならこの展示は金沢21世紀美術館の長期インスタレーションルームにおいて、二つの展示を行なうものであり、筆者が7月末の時点で見ることができたのは前半の「よい体」のみだからである。後半の「いい家」は8月末からはじまる予定だというが、前半にだけでも触れておこう。前半の展示は、ある古い民家を解体して運ばれてきた引き戸や欄間などが壁などに配置され、また中央に設置された民家の一部の床には映像が投影されたものであった。映像は、ガラスの上を動く何人かの人々を、その下から撮ったようなものであり、床下に床上で動く人々の痕跡が残像のように浮かび上がるような仕掛けである。音声は金沢弁での問いかけに英語が答え、英語の問いかけに金沢弁で答える(答えはすべて「あんやと」「Thank you」)ものであり、さらにしばらくいると轟音が鳴り、全体がまるでリセットされたかのようになった後、再び映像と音声が始まる。民家に残る記憶の痕跡と遠い時空(他者)との対話とでもいったらよいのだろうか。轟音は、雨の多い金沢にいると時々信じられないような豪雨が降ることもあるので、感覚的に金沢の民家における時空間を引き寄せていると感じられた。ただし前半のこの展示だけでは、高嶺氏の展示意図は、まだよく分からなかった部分もある。おそらく土嚢や廃材を用いて家を構築するという後半の展示によって、その意図が明らかになってくるのではないだろうか。
展覧会URL:http://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=45&d=855
2010/07/24(土)(松田達)
「ヤン・ファーブル×舟越桂」展

会期:2010/04/29~2010/08/31
金沢21世紀美術館[石川県]
ヤン・ファーブルと船越桂という、ベルギーと日本の現代美術家の二人展。接点がなかったはずの二人に、必然的ともいえる接点を見出していこうとする展示は、見ていて緊張感があった。東西の二人が対話するだけでなく、ファーブルの作品にはフランドルの絵画が、船越の作品には明治期の仏教絵画が対置され、また挟まれることで、それぞれが古典とも対話するという、キュレーションの構造が見えてくる。実際、扱っているテーマはふたりとも似ている。ファーブルは自分の血や昆虫、剥製など、生命にまつわる素材を用いた作品によって、船越は楠を用いた異形の人間像の彫刻から両性具有のスフィンクスにまで至る作品によって、生と死というテーマが深く探求されている。二人とそこに対置された古典というそれぞれに接点があるのかどうか、それが問題ではなく、現にこのようにして接点が設けられ、ベルギーと日本、古典と現在という関係を超えていくような思考を可能にする、興味深い展覧会だった。ところで、ヤン・ファーブルは『ファーブル昆虫記』で知られるジャン・アンリ・ファーブルの曾孫だと聞いて、妙に納得した。生命に対する並々ならぬ関心とともに、作曲家であり詩人であったというジャン・アンリ・ファーブルと、現代美術家でありながら演出家、振付家でもあるというヤン・ファーブルの間にも、時空を超えた関係性を感じてしまう。とはいえ、このような有り得そうな関係性を飛び越えた、今回の二人の組み合わせによる展覧会は、キュレーションの自由度と可能性といったものを感じさせた。
展覧会URL:http://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=19&d=853
2010/07/24(土)(松田達)
『桑沢スペース年報2009-10』
発行所:桑沢デザイン研究所
発行日:2010年7月13日
専門学校桑沢デザイン研究所は、ヴィジュアル、プロダクト、スペース、ファッションという四つのデザイン分野に分かれている。スペースデザインはそのひとつで、建築やインテリアを学ぶ学生が集まるが、本誌は年報という形で活動をまとめたものである。非売品であり学内でしかなかなか見ないが、そのクオリティが非常に高い。それもそのはず、編集アドバイザーにはフリックスタジオの磯達雄氏が加わっている。責任者は専任講師である大松俊紀氏。しかし、製作は「桑スペ製作実行委員会」の学生中心である。この冊子自体もひとつの作品となっているといえるだろう。卒業制作を紹介すると同時に、各課題での作品紹介や各講師の講義紹介にもなっている。いわゆる学校案内の枠を超え、それと雑誌等の中間的な位置づけになるような冊子であるのが興味深い。発展すれば、売っていてもおかしくないようなクオリティになるのではないかと思う。
2010/07/13(火)(松田達)

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