2017年10月15日号
次回11月1日更新予定

artscapeレビュー

松田達のレビュー/プレビュー

第5回金沢学会

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会期:2010/12/02~2010/12/03

金沢エクセルホテル東急[石川県]

金沢創造都市会議と隔年で交互に開かれている会議で、金沢経済同友会が主催している。創造都市会議が公開シンポジウムというかたちで、都市問題を実践的なレベルで討議するのに対し、金沢学会はそこで挙げられたテーマをさらに掘り下げ、調査結果などに基づいて議論する非公開のシンポジウムである。立ち上げには創造都市研究で知られる佐々木雅幸教授が関わっている。1999年に第1回のプレシンポジウムが始まっており、かなり早い段階から創造都市に関する議論がなされてきたことは特筆すべきであろう(チャールズ・ランドリーの『創造的都市』の出版は2000年である)。第5回の金沢学会では「都心」をテーマに、「情報を発信する」「学生よ集まれ」「クラフトを活かす」という三つのセッションが行なわれ、都心に活力を与えるためのさまざまなアイディアが紹介、検証された。金沢は都市としての意識が非常に高い一方で、危機意識も高い。2014年の北陸新幹線開業によるストロー効果への対策として、都心強化とにぎわい創出の必要性が討議された。この会議と金沢という都市のゆくえは、日本の地方都市のあり方を考えるうえで、注目に値するだろう。

2010/12/02(木)(松田達)

GA JAPAN 2010

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会期:2010/11/20~2011/01/23

GAギャラリー[東京都]

出展者は安藤忠雄、磯崎新、伊東豊雄、北川原温、隈研吾、SANAA、西沢立衛、藤本壮介、山本理顕の各氏。GA JAPANシリーズの展覧会では、つねに日本の建築界の最前線の状況を垣間見ることができる。展示物は模型と図面、いくつかの映像であり、その情報は総合的であるが、GA JAPANでの展示では、「建築的な前進」の一歩が、最後に明際立つかたちで浮かび上がってくることが多いと感じる。今回の展示では、伊東豊雄は今治の《伊東豊雄ミュージアム》でベースにしていた60度を元にした多面体を、さらに複数の角度を組み合わせた自由な形にした《ベガ・バハ博物館》を、隈研吾は建築を埋める方向を極限にまで突き詰めたような、山の中の三葉形の切れ目のような建築を、SANAAは建築の単位が部屋となり、徹底した「床」の積層により庭や駐車場まで「床」となったような集合住宅を、藤本壮介は上海の美術館の一部にて、屋根までガラスの構築物と、むしろそれより目立つ樹木の組み合わせを、山本理顕はかつての県営保田窪団地での住宅とコモンスペースの関係を、トポロジカルに相同な形で変換させ縦列に複数棟配置させたソウルの集合住宅を、それぞれ提示していた。非常にテンションの高い展示だと感じた。

2010/11/28(日)(松田達)

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金沢工業大学建築アーカイヴス研究所

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[石川県]

金沢工業大学における、国内初の建築アーカイヴに関する研究機関。所長は竺覚曉教授。金沢工業大学は、2007年3月に日本建築家協会との協同でJIA-KIT建築アーカイヴスを開設し、近現代の建築家が作成した図面など建築関連資料を、文化遺産として収集・保存・整理・調査・公開を行なうなど、一私立大学でありながら建築アーカイヴに関して先導的な立場をとっている。この活動と並行してアーカイヴに関する研究を行なうため立ち上げられたのが本研究所であり、図面から3次元データ、アーカイヴの方法論や実情調査など、建築アーカイヴスに関する全般的な研究を行なっている。特に貴重資料室には、アルベルティなど15世紀以降の希少本が集まっており、日本ではここでしか見ることのできない本が多数あるという。なお、今後の建築資料は有事に備え、ネットワーク化してアーカイヴされていく必要があるという。つまり、アーカイヴもクラウド化の方向に向かっている。

2010/11/20(土)(松田達)

坂茂《成蹊大学情報図書館》

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[東京都]

竣工:2010年

坂茂の設計による図書館。左右のヴォリュームは大学本館の外装材にあわせ、レンガタイルで覆われている。特に注目すべきは中央のガラス張りのアトリウム空間を内包したヴォリュームである。中に浮かぶ複数の玉ねぎ型の球体。細い足で支えられ、それぞれ空中歩廊などからアクセス可能である。これらはグループ閲覧室であり、静かな図書館に対して、もっと自由に気軽に話をしたりできるスペースを設けようという、この図書館のコンセプトを体現したような部分である。この立体的な空間の使い方から、同じ坂茂による銀座のスウォッチ・ビル(《ニコラス・G・ハイエックセンター》)が思い浮かぶ。多数のエレベーターによって、1階からそれぞれのブランドのフロアにいくことができるという構成は、建築の立体的な自由度を高めているという意味で、この図書館との共通点が感じられる。

2010/11/06(土)(松田達)

中川運河キャナルアート

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名古屋市中川区舟戸町・岡谷鋼機株式会社 第三倉庫[愛知県]

会期:2010 年10月30日-31日(ただし30日は雨天のため延期)

かつての賑わいを失ってしまった名古屋の中川運河周辺の貴重な水辺空間を、広く知ってもらうために開かれたアートイベント。雨天のため初日のイベントは延期となったが、岡谷鋼機の倉庫を舞台に、映像インスタレーション、大茶会、トークイベント、ライブパフォーマンスなど多彩なイベントが行なわれた。実際に使っている倉庫の一部という空間がまず面白く、迫力のある空間が記憶に残った。一方、会場から運河そのものは遠目に見える程度だったので、イベントとしては、運河を散策させるような仕掛けがあればよいのではという点も感じた。水辺空間の再生という目的がはっきりしているのだから、瀬戸内国際芸術祭やあいちトリエンナーレなど、大規模な芸術祭の縮小再生産ではないかたちが求められているのではないかと思う。産業遺産の活用や、都市構造の再編など、重要なソーシャル・イシューも含まれる。今回が第0回ということなので、来年以降、どのような展開を見せるのかが楽しみである。

2010/10/31(日)(松田達)

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松田達

1975年生まれ。建築家。松田達建築設計事務所主宰。京都造形芸術大学、桑沢デザイン研究所、ブリティッシュ・コロンビア大学非常勤講師。隈研吾建...

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