2017年08月01日号
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artscapeレビュー

南宇都宮石蔵秘宝祭

2012年10月01日号

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会期:2012/09/01~2012/09/16

悠日[栃木県]

今をときめく女性アーティストたちによる芸術祭。宇都宮市内の石蔵を改築した会場に、20人のアーティストが作品を展示した。いずれも、「女性性」から出発しながらも、その言葉の内側にとどまることなく、外側に突き抜けた作品ばかりで、非常に見応えがあった。
企画者でもある増田ぴろよは、回転ベッドのインスタレーションを発表したが、表面の布には男性器をモチーフにした図柄がプリントされていた。笠原美希の黒い人体像も上半身が男性器と化したメタモルフォーズだったが、両者の作品には(これまでの女性作家がたびたび表現してきた)男性器への無意識の恐怖というより、むしろそれにたいする造型的な好奇心が強く感じられた。事実、みずからの欲望を率直に開陳する傾向は、たとえば俳優の綾野剛への愛憎を綴った少年アヤや、テレビ番組を偏愛するがゆえに録画行為にひたすら没頭するフルカワノリコなど、この展覧会に参加した美術家たちに共通する大きな特徴と言えるだろう。
これを共通項としたうえで、さらにもう一歩踏み込んでいたのが、山田はるかと久恒亜由美。山田は「華妖.vijyu」という4人組のヴィジュアル系バンドが唄う《愛の水中歌》のプロモーションビデオを発表したが、映像のクオリティに加えて、4人のバンドメンバーにみずから扮するというアイデアと、それぞれ異なるキャラクターを演じ分けたパフォーマンスの技術がすばらしい(現在はYOUTUBEでも視聴可能)。久恒の作品は、会場である宇都宮市内の公衆トイレにあらかじめ携帯番号を書き込み、着信と会話の記録を会場内のトイレでリアルタイムに公表するという、ある種の観客参加型作品。みずからの女性性を戦術的な手段としながら未知なる観客を自分の作品に巻き込んでいく発想が抜群にすぐれていた。ネット時代の只中で、コミュニケーションの水準をあえて公衆トイレという「ハッテンバ」にシフトダウンさせる回帰傾向もおもしろい。
山田と久恒に通底しているのは、みずからの女性性を巧みに使いこなす高度な戦略性である。そのたくましい知性は、情動的な女性アーティストとコンセプチュアルな男性アーティストという陳腐な二項対立を置き去りにするほど、鋭い。両者の作品には、そのいずれもの特質も内蔵されているからだ。

2012/09/06(木)(福住廉)

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