2018年01月15日号
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artscapeレビュー

INLAY 坂本素行展

2014年08月01日号

会期:2014/07/13~2014/07/19

瑞玉ギャラリー[東京都]

ストライプ模様の花瓶や壺、幾何学模様で埋め尽くされたポットやカップ&ソーサー。坂本素行氏の作品を知ったのはLIXILギャラリー★1であったが、最初に作品を見たときは上絵かプリントなのかと思った。しかし絵付にしては非常にシャープなライン。これがすべて象嵌だと知って驚くと同時に納得した。象嵌技法自体は漆工や金工でよく見られるし、陶磁器においても絵付の一技法としてある。しかし器の表面すべてを異なる色土で象嵌する作品は稀ではないか。坂本氏はこれを部分的な絵付として用いられる通常の象嵌と区別して「INLAY」と呼ぶことにしたという。轆轤で挽いたボディに文様を罫描きして、輪郭にナイフを入れ、薄く表面を削って色土で埋める。絵付では不可能なシャープなラインはこうして生まれる。1色を埋めたらまた別の場所を削り、異なる色土で埋める。この繰り返しによって表面はすべて最初に轆轤で挽いた土と別の色土による文様で覆われる。時間がかかる工程なので、途中で土が乾いてしまわないように、霧吹きで水を吹いたり、部分的にラップで覆いつつ作業するという。
 坂本素行氏の経歴が興味深い。元々は日産のカーデザイナー。ある展覧会で象嵌青磁に出会って関心を持ち、独学で陶芸を始め、1980年、30歳のときに陶芸家として独立。その後、灰釉陶器などの技法を研究し、近年になってふたたび象嵌に回帰したという。今回出品されている作品は器のかたちも色彩も西洋的である。それは見た目だけではない。ゲージをあてて罫描きし、ナイフで削って土を埋めてゆくという工程もまた西洋的であり、土や手の痕跡を良しとする日本の陶芸とは異なる美意識の作品だ。デザイナー出身であること、陶芸を独学したことが、独自のスタイルの背景にあると思われる。[新川徳彦]

★1──「坂本素行 展──造り込んだもの」(LIXILギャラリー、2014年4月24日~6月7日)


展示風景

2014/07/18(金)(SYNK)

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