2018年11月01日号
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artscapeレビュー

第7回 新鋭作家展 見しらぬ故郷/なじみの異郷

2018年09月01日号

会期:2018/07/14~2018/09/02

川口市立アートギャラリー・アトリア[埼玉県]

同展は「新鋭作家展」という公募展をベースとし、そこで選出されたアーティストの作品プランを1年近くかけて学芸員と揉み、市民たちに揉まれながら地域と関係づけていくプロジェクト型の展覧会。ぼくも審査員の1人だが、選んだ作品がそのまま展示されるわけではなく、ヘタしたら揉まれるうちに原形をとどめないほど変わってしまうかもしれないという、審査員にとっても恐ろしい展覧会なのだ。今回(昨年)選ばれたのは津田隆志と力石咲の2人。

津田は川口市内を流れる旧芝川をフィールドワークしつつ、川面に映る街の風景を撮影した写真の展示を中心に、フィールドワークで得た資料や映像などを公開するプラン。結果はほぼプランどおり、いやプラン以上の成果を上げていたように思う。会場を2つに分け、最初の部屋で旧芝川から引き上げた2台の自転車、空き缶をピンホールカメラに仕立てて街の風景を撮った写真、水鏡に映った市民のポートレート写真などを展示し、次の部屋でメインの川面に映る風景写真を天地逆にして並べた。審査の段階では後者の風景写真だけで十分だと思ったが、川から引き上げた自転車や水鏡によるポートレート写真を導入することで、川面の写真がより身近に、よりおもしろく見られるようになった。

力石は街で見つけた日用品を毛糸で編みくるむ《ニット・インベーダー in 川口》をはじめ、《リリアン建築》《空気を編み包む》の3案を提案したものの、時間的な制約のため《ニット・インベーダー》のみ実施。街の鋳物工場でつくられた印刷機やマンホール、だるまストーブ、市民から借りたギターや太鼓などを黄色いニットで全部または一部を包んでいた。よくがんばりましたが、これが街のなかにあればインパクトがあるけど、なにがあってもおかしくないアートギャラリーに展示すると目立たず、ただの「作品」にしか見えない。彼女の作品はストリート・アートこそふさわしい。ただ、川口の建築写真の一部を黄色い毛糸で編み包んだ作品は、クリストの完成予想コラージュも彷彿させ、別の可能性を感じた。

2018/07/27(村田真)

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