2018年12月01日号
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artscapeレビュー

ミクニヤナイハラプロジェクト vol.4『五人姉妹』

2009年07月01日号

会期:2009/06/25~2009/06/28

吉祥寺シアター[東京都]

「延々に続けばいいのに」と思わされるか否か、ぼくにとって「傑作」かどうかの基準はこれなんだけれど、『五人姉妹』は傑作だった。五人のかしましい姉妹と一人の召使い男子。姉妹の一人春子は6時間しか起きていられず一日18時間は眠り姫。キャーキャーギャーギャー、激しい身ぶりを交えてほとんど聞き取れないガールズトークはマンガによく出てくる図形化したオノマトペ(擬声語・擬音語)みたいにポップ。と思うと、舞台の4つの白いキューブは、可動式で家の間取りを表わしながら、空間を均等に区切っていて、まるでコマ割。キャラや衣装は岡崎京子テイスト? マンガを舞台でやるという発想と思えば、とてつもない早口も、吹き出しを早読みする感じに似ていて楽しくなる。
激しいといえば、春子を起こそうと全員が体育用の笛を「ビャー」と吹くときの、耳が聞こえなくなりそうな感じや、春子が起き出してくるときに長い間真っ暗闇のまま舞台が進行する演出方法もじつに激しい。けれども、そうしたアイデアも、すべては演劇の効果として上手く機能していて不快ではない。物語は、つい先日の大叔母の死と、彼女たちにとってもっと深刻な17年の経つ母の死へと向かう。春子が危うく交通事故死しかけたところを助けてくれた男は、じつは母なのではないかと推測し出すクライマックスは、サリンジャーの『フラニーとゾーイ』を思い出させた。最後に、かしましさで埋めようにも埋められない大きな不在を示し、演出の才能のみならず戯曲作家としての力量を矢内原は見事に見せつけた。

2009/06/25(木村覚)

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