2018年06月15日号
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artscapeレビュー

第4回カルチベートトーク「アーティストの彦坂尚嘉さんと語る、こたつ問題1970~2009/建築と美術のあいだ」

2009年10月15日号

会期:2009/09/28

建築会館[東京都]

越後妻有トリエンナーレ2009において、作品としての完成度を疑われたある作品をめぐり、アイディアコンペの上位作品にみる問題性、アートの展覧会に建築関係者が出展するときの問題、審査の問題などを問う討議がなされ、五十嵐太郎氏は「こたつ問題」と名付け(作品名は「みんなのこたつ」)、建築系ラジオにて配信された。しかし「謝罪会見」「欠席裁判」と名付けられたこの配信回は、笑い声なども混じっていたことから、単なる個人攻撃ではないか、メディアとしてのモラルを問うなど、むしろ配信自体が問題化され、「『こたつ問題』問題」という二重化された問題となり、ネット上において、ブログやツイッターなどを中心として賛否両論を巻き起こした(配信直後の8月半ばから9月末まで)。これらの是非をめぐって、問題を決着させるために五十嵐氏が企画したのが第4回カルチベートトークである。
おそらく建築系のイベントとしては初めて、Twitter中継+イベント映像配信を同時に行なった。討議の内容は担当者がTwitterによって要約を実況中継し、定められたハッシュタグを用いて会場外の意見をリアルタイムに会場内に取り入れた。映像配信はUstreamとStickamという二つのサービスを利用し、二つのライヴ映像を用いて行なった。また筆者は「こたつ問題」に関するさまざまなメディアの言説をまとめたページを用意し、そこからTwitter+映像を同時に見られるようにした(第4回カルチベートトーク公開ページ)。ネット上の臨場感は説明しにくいが「このライブ感は素晴らしい」「素晴らしすぎる!Twitter楽しい。ものすんごいライブ感です!」「うう、やはりtwitter上だけだと議論の流れを追いにくい... しかし、この完全同期でもなく非同期でもない感じは新鮮ではある」などコメントがあったので、それなりの新しい感覚があったといえよう。イベントの新しい体験方法という意味でも、実験的で有意義な試みであったといえる。
討議の内容は多様であり、批評とメディアとモラルをめぐる、実にアクチュアルなテーマが展開された。特に今回は、建築家・美術家・批評家だけでなく、ネットを通して学生や他の業界の人など多くの人が、この問題にプレイヤーとして参加したため、直接的な意見や立場表明のやり取りが多く行なわれた。批評的言説に誰でもリアルタイムに参加できる状況が生まれたことは、ネットテクノロジーの進化に負っている。その最初期であることから、多くの人はさまざまな違和感や痛みを覚えたかもしれない。しかし、今回のイベントが想像以上に注目を浴びたのは(最後の瞬間で、映像閲覧者数は862人という記録となった)、誰もがメッセージを発することができる以上、誰もがメディアの発信側でもあるという理由もあったであろう。誰もがネットを通じてそれにまつわる言説に参加できるという状況が生まれたことこそが、もっとも批評的な出来事であったといえるかもしれない。

イベントURL:http://news-sv.aij.or.jp/jnetwork/scripts/view30.asp?sc_id=2372
写真提供:木村静

2009/09/28(月)(松田達)

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