artscapeレビュー

VOCA展2011

2011年04月15日号

会期:2011/03/14~2011/03/30

上野の森美術館[東京都]

震災後、初めて展覧会に足を運ぶ。2週間も展覧会を見なかったのは、この連載が始まって以来(もう15年になるが)初めてじゃないかしら。自慢じゃない、自嘲だ。あまり見たいとも思わなかったし、見たくても開いてないところが多かったし。「VOCA」展も初日こそ開いたものの翌日から数日間お休みしたそうだ。今日、平日の午前中だというのにそこそこ人が入っているのは、みんな気持ちに余裕が出てきたせいかもしれない。さて、今年は昨年に続き、VOCA賞の中山玲佳をはじめ6人の受賞者はすべて女性。それはいいのだが、気になるのは、受賞作品の大半が人物や動物を中心にさまざまなイメージをコラージュした物語性の強い具象画で占められていること。こうした傾向は今年に限ったことではないし、また、それらのなかにもさまざまな傾向が見られるのも事実だが、もっともっと多様な作品が出てきてほしいと思う。一時に比べ写真が激減したのも気になるところ。そんななか、とくに目を引いたのが小池真奈美と青山悟のふたりだ。小池の作品は、落語のストーリーをみずから江戸町人に扮して描いたもので、物語性の強い具象画という点ではまさに「VOCA調」といえるが、アナクロな題材(推薦人の山下裕二氏いわく、21世紀に復活した「近世初期風俗画」)と卓越した技法で際立つ。一方、青山の作品は、まず第1に21×29センチの画面が2点というサイズの小ささにおいて逆に目立ち、第2に絵画ではなく刺繍という手法において異彩を放ち、そして第3に絵画の審査を揶揄するような内容において「VOCA」そのものに揺さぶりをかけていた。今回最大の震源地といえよう。全体としてもうひとつ気になったのは、大作の場合2~4枚のキャンヴァスないしパネルをつないで1点の作品とする例が多いこと。これは制作スペースの制約によるものだろうが、つなぎ目の線がとても気になる。その点、4つのイメージを4枚のキャンヴァスに描いて1点の作品とした中山玲佳の分割法は納得できるが、最善の方法は青山のように小さな作品を出す勇気を持つことだ。

2011/03/25(金)(村田真)

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