2018年11月15日号
次回12月3日更新予定

artscapeレビュー

映像に関するレビュー/プレビュー

國府理「水中エンジン」REDUX

会期:前期2017/07/04~2017/07/16、後期2017/07/18~2017/07/30

アートスペース虹[京都府]

國府理(1970~2014)が2012年に発表した問題作《水中エンジン》。同作は彼が愛用していた軽トラックのエンジンを水槽に沈めて稼働させるもの。エンジンを水に沈めること自体に無理があり、2012年の個展(初お披露目)では彼がつきっきりでメンテナンスを続けていた。同作は発表時期からも分かる通り、東日本大震災の原発事故から着想したものだ。その後、2013年に西宮市大谷記念美術館(兵庫県)での個展に出品され、今年4月から6月にかけて小山市立車屋美術館(栃木県)で行なわれた「裏声で歌へ」展にも再制作版が展示されている。さて肝心の本展だが、会期を2週間ずつ前期と後期に分け、前期は記録映像とエンジンのみを吊り下げた状態で展示し、後期は再制作版と2012年の個展で撮られた写真2点で構成された。同作は震災後につくられた美術作品のなかでも特に重要なものであり、その姿が記録だけでなく(再制作版とはいえ)実物で示されたのは特筆すべき成果だと思う。別の観点でいえば、われわれはひとつの美術作品が伝説化されていく過程をつぶさに見たことになる。例えば関根伸夫の《位相─大地》のように、何十年経っても消えない美術アイコンがここに生まれたということか。こういう卑俗な発言をすると美術ファンや関係者から軽蔑されるかも知れないが、それもまた一面の事実だと思う。

2017/07/04(火)、2017/07/18(火)(小吹隆文)

プレビュー:時差『隣り』

会期:2017/08/30~2017/09/03

green & garden[京都府]

「時差」は、特定の演出家や劇作家によるカンパニーではなく、複数のアーティストが同じコンセプトを共有しながら、それぞれの作家による新作公演をプロデュースする企画団体である。京都の若手制作者である長澤慶太によって2016年に立ち上げられた。第1回目の企画「動詞としての時間」では、精神科医の木村敏の著作を読み、「臨床哲学」の言葉を手がかりに、演劇、ダンス、映画作品を制作している。参加アーティストは、和田ながら(演出家)、城間典子(映画監督)、村川拓也(演出家、ドキュメンタリー作家)、岩淵貞太(ダンサー、振付家)であり、京都在住もしくは京都で発表歴のある気鋭のアーティストが名を連ねる。
今回の「動詞としての時間」第2回公演では、城間典子による映画『隣り』が上映される。この作品は、城間の幼馴染であり、統合失調症と診断された女性との共同制作による。映画は2つのパートから構成され、1)幼馴染の女性が、10代の頃、心のバランスを大きく崩した冬から春にかけて、彼女自身が「劇映画」として再現するパートと、2)その4年後に城間が再び彼女を訪ね、現在の様子を撮影したドキュメンタリーから成っている。発病当時、京都造形芸術大学の映画学科に在学中だった城間と、過去に演劇部に所属し、俳優を志していた彼女とのあいだで、1)の劇映画をつくることは自然な成り行きだったという。編集は城間に任されたが、4年かかっても終わらず、再び城間が彼女を訪ねたことを契機に2)が生まれた。そこには、一緒に劇映画の編集作業を行なう二人の様子とともに、通院を続け、絵を描きながら家族とともに暮らす彼女の日常生活が記録されている。本人の再現による「劇映画」とドキュメンタリーから成る構造は、ドキュメンタリー/フィクションという単純な二元論の解体についての問いを提起する。加えて、親密な関係のなかでカメラを向けるという被写体との距離感、病を抱えて生きることの困難とそこに寄り添って眼差しを向ける営みについてなど、さまざまなトピックを喚起する映画になるのではと期待される。
公式サイト: http://kyotojisa.wixsite.com/jisa

2017/06/30(金)(高嶋慈)

《広島平和記念資料館》

[広島県]

本館は改修工事中だが、東館は展示がリニューアルされている。パノラマ的な風景写真、原爆投下の前後やその瞬間を表現する円形の都市模型へのプロジェクション、インタラクティブな映像・情報検索のシステムなど。悪くないけど、すごく良いわけでない。文字が多すぎるかな。

2017/06/24(金)(五十嵐太郎)

クエイ兄弟 ─ファントム・ミュージアム─

会期:2017/06/06~2017/07/23

渋谷区立松濤美術館[東京都]

米国出身で、現在はロンドンを拠点に幻想的な人形アニメーションを制作しているクエイ兄弟の作品を紹介する回顧展。1947年に米国ペンシルベニア州で生まれた一卵性双生児のスティーブン・クエイとティモシー・クエイの兄弟は、1965年にともにフィラデルフィア芸術大学(PCA)に進学し、イラストレーションを専攻。1969年に英国のロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)に進学したときもイラストレーション専攻であった。PCA在学中よりすでに自主的にアニメーション映画を制作していたクエイ兄弟だが、1979年、RCAで映画を専攻した友人キース・グリフィス(1947-)の勧めで、英国映画協会より資金を得て、本格的に映画制作を始めた。今日まで、彼らはコマ撮りによる人形アニメーションと実写映画、そして両者を融合した作品を創り続けている。彼らに《ヤン・シュヴァンクマイエルの部屋》(1984)というタイトルの作品があるように、東欧アニメーションなどの作品に影響を受けた、シュールで幻想的な作風が特徴だ。松濤美術館での展示は、初期のイラストレーションと、彼らがデコールと呼ぶ人形アニメーションの場面を再構成したボックス、これまでに制作した映像やインスタレーションのパネルによる紹介と、映像ダイジェスト版の上映で構成されている。また、兄弟が影響を受けたというポーランドのポスターも出品されている。展示の見所はやはりデコールの数々だろう。なかでも丸いレンズ越しに見る形式のそれらは、怪しい見世物小屋を覗き見るかのような印象を抱く作品だ。
ところで映像作品なら理解できなくもないのだが、イラストレーションやドローイングを彼らはどのように共同制作しているのだろうか。本展コーディネーターである株式会社イデッフ代表 柴田勢津子氏によれば、彼らはほんとうに二人で描いているとのことだ。なるほど、神奈川県立近代美術館<葉山館>で行なわれた公開制作の記録映像(https://youtu.be/LqNvm743qOI)を見ると、確かに、二人が、なにか打ち合わせるでもなく淡々と絵を仕上げてゆく様子が写っている。柴田氏の話では、映像作品においても兄弟のどちらが何をするという明確な役割分担があるわけではないのだという。さらに、これまで彼らは2週間以上離れていたことがないという話まで聞くと、一卵性双生児であるクエイ兄弟のあいだにはなにか言葉以外の不思議なコミュニケーションの手段が存在するのではないか、そして二人の存在自体が彼らの奇妙な作品の一部なのではないだろうかと思われてくる。
なお、映像作品に関しては、7月8日から28日まで、渋谷・イメージフォーラムで合計30作品が上映される。[新川徳彦]


会場風景

2017/06/16(金)(SYNK)

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オープン・スペース 2017 未来の再創造

会期:2017/05/27~2018/03/11

NTTインターコミュニケーション・センター(ICC)[東京都]

今年もメデイア・アートの新作が揃うが、過去にもあったような試みのバージョンアップ的なプロジェクトよりも、その作品自体が科学や社会のトピックに絡み、なおかつ美しさをもつタイプが好みである。それゆえ、アメリカにおける女性と銃弾に関する意外な切り口を提示するオーラ・サッツの《銃弾と弾痕のあいだ》の映像とインスタレーションが印象に残った。

2017/06/09(日)(五十嵐太郎)

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