2018年04月15日号
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artscapeレビュー

2015年08月01日号のレビュー/プレビュー

天野喜孝「想像を超えた世界」

会期:2015/06/27~2015/08/30

兵庫県立美術館 ギャラリー棟3F[兵庫県]

タツノコプロでのアニメのキャラクターデザインから始まり、ファンタジー小説の挿画・装幀、ゲーム「ファイナル・ファンタジー」のキャラクターデザインを経て、現在はオリジナルの絵画作品を制作している天野喜孝。その類いまれな画業を初めて通観した。特にアニメやゲームの仕事は思い入れのある人が多く、取材に参加した記者や関係者のなかにも興奮を隠し切れない人が少なからず見受けられた。彼は絵画や美術史の高等教育を受けたことがなく、仕事の必要に応じて知識や技術を吸収し、その過程で自分の好みが世紀末美術であることを自覚した。一般的な美術家とは異なるプロセスをたどったことが、作品のオリジナリティに寄与しているのかもしれない。近年の作品は、本人いわく「700年後も退色しないように」、自動車の塗料と仕上げ技術を駆使した極彩色の大作群だ。そこには過去の仕事で創造したキャラクターの変奏が惜しげもなく投入されている。未知の荒野を独力で切り開いた者ならではの境地と言えるだろう。

2015/06/26(金)(小吹隆文)

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舟越桂「私の中のスフィンクス」

会期:2015/06/27~2015/08/30

兵庫県立美術館[兵庫県]

筆者が舟越桂の作品を知ったのは1990年前後だが、そのときの驚きをいまも新鮮に覚えている。その木彫の半身像は、自分たちと同じような髪形をし、服を着ていた。彫刻なのに着色され、遠くを見つめる目には透き通った玉眼が嵌められていた。つまり舟越の作品には、同時代の等身大の価値観と日本の木彫の伝統が違和感なく同居していたのである。その後は断片的にしか彼の作品に接することがなく、進行する異形化を前に途方に暮れることもあったが、本展によりやっと彼のキャリアを一本の線として捉えることができた。展示はほぼ時系列で構成され、胴体が山のようになっていく過程やスフィンクス登場の必然性がおのずと理解できる。また、木彫作品の周囲には関連するドローイングが配置され、木彫とドローイングの深い関係も理解できた。総点数は、彫刻約30点、ドローイングなど約40点。少ないかと思ったが、実際はこれで十分、お腹がいっぱいになった。やはり彫刻の展示は空間を贅沢に取るべきだと、改めて実感した。

2015/06/27(土)(小吹隆文)

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月が水面にゆれるとき

会期:2015/06/27~2015/08/22

京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA[京都府]

木藤純子、曽谷朝絵、中村牧子、和田真由子が出品した本展。チラシの文面によると、本展のきっかけは「全国的に美大で女子学生の割合が増加しているのに、女性アーティストが顕著に増加していないのは何故だろう」、「美大を卒業した女性アーティストたちは何処へ向かおうとしているのか」(筆者要約)という素朴な疑問であるようだ。しかし、実際の展示はテーマ主義ではなく、各作家がそれぞれのスペースで自作を披露するオーソドックスな形式が取られていた。上記の問題意識への言及は、もっぱらトークイベントでフォローされていたようだ。4作家のうち3作家はすでに何度も作品を見たことがあるが、東京を拠点とする曽谷朝絵だけは詳しく知らなかった。彼女は絵画6点と《宙(そら)》と題した映像インスタレーションなどを出展したが、作品はどれも素晴らしく、彼女の作品を知ったことが私にとっての成果であった。

2015/06/27(土)(小吹隆文)

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中島麦「カオスモス ペインティング」

会期:2015/06/29~2015/07/11

GALLERY AMI-KANOKO[大阪府]

大阪・千日前の、酒場や風俗店が居並ぶ界隈に位置するGALLERY AMI-KANOKOで、中島麦が個展を開催した。彼が近年手掛けている《カオスモスペインティング》は、カラフルなドリッピング作品と単色の作品を、一対あるいは複数の組み合わせで構成した絵画シリーズである。中島は同作を、1階のホワイトキューブと2階の床の間に配置。絶妙なバランス感覚を発揮して、この場でしかありえない美しい空間を創出した。特に床の間の展示が素晴らしかったが、これは和室の基本単位である3尺×6尺を基に作品サイズを定めたことが奏功したと思われる。また本展では、画廊周辺の店舗や廃屋にも作品が掛けられた。画廊(あるいは美術)という制度の境界をなし崩しにするこの試みも、千日前の猥雑な土地柄と相性が良く、とても効果的だった。

2015/06/29(月)(小吹隆文)

ART OSAKA 2015

会期:2015/07/04~2015/07/05

ホテルグランヴィア大阪26階[大阪府]

JR大阪駅直結のホテルグランヴィア大阪を会場に行なわれている「ART OSAKA」。ホテル型のアートフェアとしては国内の老舗であり、現代美術に特化したアートフェアが長く続いてきたことは特筆すべきである。13回目の今年もプレビュー(7/3)含めた3日間盛況が続き、本稿執筆時点でクロージングレポートが未発表なものの、ひとまずは成功と言ってよいだろう(ちなみに昨年の成績は、入場者数3650名、売上総額3900万円)。その前提で敢えて言わせてもらうのだが、「ART OSAKA」はそろそろ次のステージに踏み出す時期ではなかろうか。それは規模の拡大とか派手な宣伝を行なうことではない。現在のコンパクトなサイズを維持しつつ、新たな客層を取りこむことで売上とブランド性の向上を図るのだ。たとえば、プレビューを活用して富裕層を顧客に持つ企業・ブランドの会員組織と提携するといったことが考えられるが、筆者はマーケティングに不案内なので、これ以上具体的なことは言えない。いずれにせよ、現状維持は停滞を意味する。この有意義なイベントを今後も継続・発展させていくためにも、主催者は次の一手を模索すべきであろう。

2015/07/03(金)(小吹隆文)

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