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2022年12月15日号のレビュー/プレビュー

宇都宮駅東口地区再開発、「これからの時間についての夢」「印象派との出会い─フランス絵画の100年 ひろしま美術館コレクション」

宇都宮美術館、栃木県立美術館[栃木県]

半年ぶりに宇都宮駅を訪れたら、工事中だった東口地区の整備が完成していた。これはさまざまな交流施設を組み合わせたものである。JR駅からブリッジで直結する隈研吾建築都市設計事務所のデザイン監修による《ライトキューブ宇都宮》(2022)(最大2000人収容のホールを含む、17室をもつ)、《宮みらいライトヒル》(2022)(水のプラザがあり、大階段を登ると緑のテラス、3階レベルに風のホワイエ=芝生の広場)、そしてホテル、飲食店、駐車場が入る《宇都宮テラス》(2022)などだ。目玉のLRTは来年8月の開通のため、駅の全容がわかるのはもう少し先である。《ライトキューブ宇都宮》は、やはり大谷石張りのファサードによって地域性を表現しているが、建築的な空間はあまりない。おいしい水を供給する2階の宮の泉も、大谷石によるオリジナルデザインが売りだが、実物は小さくて、しかも自販機の横だった。コスパを求める現代の最適解なのだろうが、ノンデザインに近い隣の商業施設に同化しそうなくらいである。ただし、外構には可能性をもち、今後、いかに3つの広場を生かすのかが重要になるだろう。



《ライトキューブ宇都宮》と《宮みらいライトヒル》芝生の広場、奥にカンデオホテルズ宇都宮




《宮みらいライトヒル》水のプラザ、右に《ライトキューブ宇都宮》、奥に《宇都宮テラス》




《ライトキューブ宇都宮》宮の泉


宇都宮美術館では、7章から構成された「開館25周年記念 全館コレクション展 これからの時間についての夢」展を開催していた。企画展ポスターの年譜に続き、第1回コレクション展の再現展示や3名の作家の新作、「1919-1943 日本とドイツ」などのテーマ展示が続く。改めて、同館がいち早くデザイン分野の収集に力を入れていたことがよくわかる。大巻伸嗣は、岡田新一による丸い空間と共鳴する円の作品だった。ちなみに、展示エリアは一層のY字プランという実に明快な建築であり、その結節点に円形の吹き抜けが位置する。髙橋銑の特別展示も、修復という視点から同館のバリー・フラナガンの彫刻《ホスピタリティー》(1990)と、群馬県立館林美術館にある同じ作家の《鐘の上の野兎》を比較する興味深い試みだった。



宇都宮美術館「これからの時間についての夢」展 25年の歴史を振り返るポスター群




宇都宮美術館「これからの時間についての夢」展 会場図




大巻伸嗣《Echoes-Infinity /2022》展示風景、宇都宮美術館


一方、50周年を迎えた栃木県立美術館の「開館50周年記念展 印象派との出会い —フランス絵画の100年 ひろしま美術館コレクション」展では、ひろしま美術館のコレクションをもとにフランスの近代絵画、ならびに同時代の日本人作家の絵を紹介している。常設エリアでも、所蔵品を使い、関連する展示が行なわれた。さすがに日本で人気のテーマなので、来場者が多い。ところで、最近、美術館を移転し、図書館と合体させて、体育館の跡地に新しく建てる計画が持ち上がっている。川崎清が設計した建築は、内外に独特の空間をもつ力作なので、もったいない気がするのだが、今後の行方が気になる。もし建て替えるなら、前よりも素晴らしい建築にして欲しいが、現代は安ければいいという風潮なので、はたして可能だろうか。



建築雑誌で紹介された栃木県立美術館「題名のない展覧会」


開館25周年記念 全館コレクション展「これらの時間についての夢」

会期:2022年9月25日(日)~ 2023年1月15日(日)
会場:宇都宮美術館
(栃木県宇都宮市長岡町1077)

栃木県立美術館 開館50周年記念「印象派との出会い──フランス絵画の100年 ひろしま美術館コレクション」

会期:2022年10月22日(土)〜12月25日(日)
会場:栃木県立美術館
(栃木県宇都宮市桜4-2-7)

関連レビュー

題名のない展覧会─栃木県立美術館 50年のキセキ|五十嵐太郎:artscapeレビュー(2022年07月15日号)

2022/12/04(日)(五十嵐太郎)

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カタログ&ブックス | 2022年12月15日号[近刊編]

展覧会カタログ、アートやデザインにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
※hontoサイトで販売中の書籍は、紹介文末尾の[hontoウェブサイト]からhontoへリンクされます





SHUZO AZUCHI GULLIVER 「Breath Amorphous:消息の将来」

編集:SAGYO,Tokyo/certo Tokyo
アートディレクション:岡本佳子[ certo Tokyo ]
発行:BankART1929
発行日:2022年10月14日
サイズ:A3、256ページ

2022年10月7日(金)~11月27日(日)まで、BankART KAIKOとBankART Stationにて開催されていた、シュウゾウ・アヅチ・ガリバーの展覧会「Breath Amorphous 消息の将来」のカタログ。






「かげ」の芸術家 ゲルハルト・リヒターの生政治的アート

著:田中純
発行:ワコウ・ワークス・オブ・アート
発行日:2022年10月15日
サイズ:19x13cm、128ページ

思想史学者の田中純(東京大学大学院総合文化研究所教授)によるゲルハルト・リヒターの作品論4編を収録。リヒターの制作史で重要な3つのシリーズ《アトラス》《1977年10月18日》《ビルケナウ》をイメージ論の観点から考察しながら、リヒター作品を生政治的なアートとして紐解いていく。






吉村朗の眼 ─Eyes of Akira Yoshimura─

写真:吉村朗/編:深川雅文
発行:さいはて社
発行日:2022年10月20日
サイズ:A4変形判、240ページ

写真表現の革新を目指し、絶えざる前進を続けた吉村朗。馴化されず、媚を売らず、自らの道を突き進んだ、孤高の写真家の眼差しの軌跡と奇跡に刮目せよ!






建築家・石井修―安住への挑戦

編著:倉方俊輔+石井修生誕100年記念展実行委員会
発行:建築資料研究社
発行日:2022年11月10日
サイズ:A4判、176ページ

地形の形状を最大限生かしながら住空間と緑の共生した建築を多く手掛けた住宅作家・石井修。 経年と共に建物は疲弊し、見た目が悪くなってしまうのが一般的だが、年月を掛けることで、自然と建物が一体となることを目指した設計手法は独特である。 今でこそ当たり前の屋上緑化やエコ住宅の考え方も、石井修の自邸「回帰草庵」など初期の作品から取り入れられている。 「建物に外観はいらないのです」という一言に、その建築への考え方が集約されている。 1986年度の建築学会賞を受賞した目神山の一連の住宅作品をはじめ、代表作・天と地の家など、美建・設計事務所を創設以来追い求めてきた建築の理想像-大胆なまでの樹木との調和・合体した住宅作品を収めた「別冊住宅建築No.34」以降、平成期の作品を設計年代順に一挙に収録する。






新宗教と巨大建築 増補新版

著:五十嵐太郎
発行:青土社
発行日:2022年11月14日
サイズ:19cm、445ページ

東大寺や法隆寺だけが美しい宗教建築ではない。著名建築家の作品だけが、先進的な現代建築ではない──。新宗教の巨大で絢爛たる建築が、なぜ信仰の堕落・虚偽の教えの象徴とされるのか。近代国家イデオロギー、天皇制、さらにマスコミが増長させた偏見によって、教団と建築は徹底して弾圧を受け続けた。建築批評の気鋭が読み解く、新宗教建築に投影された「日本近代」の夢と信仰の空間。大幅に増補された決定版。






THE NEW CREATOR ECONOMY[ニュー・クリエイター・エコノミー]

編集:庄野祐輔、hasaqui、廣瀬 剛、田口典子、藤田夏海
発行:ビー・エヌ・エヌ
発行日:2022年11月16日
サイズ:B5判変型、248ページ

本書では、アーティスト、コレクター、キュレーター、リサーチャーなどさまざまな立場の視点を借りて、現在のNFTアートの状況を多面的に解説するとともに、現在へと繋がる歴史にも目を向ける。このグローバルなムーブメントは、連綿と続いてきたコンピュータアートの歴史だけでなく、既成のアートのあり方も書き換えるのか。アーティストはどのような態度で創造に臨むのか。加速するデジタルアートの可能性を追う一冊。






DOMANI・明日展 2022–23 百年まえから、百年あとへ

監修:林洋子(文化庁) 編集:内田伸一、アート・ベンチャー・オフィス ショウ
発行:文化庁

サイズ:A5判、396ページ

2022年11月19日(土)~2023年1月29日(日)まで、国立新美術館にて開催されている展覧会「DOMANI・明日展 2022–23」のカタログ。







飯沢耕太郎「完璧な小さな恋人」

著:飯沢耕太郎
作品掲載作家:野村仁衣那、磯部昭子、下瀬信雄、村上賀子、サイトウマサミツ、ときたま、小林小百合、川田喜久治、小平雅尋、尾仲浩二、飯沢耕太郎

発行:ふげん社
発行日:2022年11月22日
サイズ:B5判、116ページ

写真評論を中心に活動してきた同氏の26年ぶりの詩画集。詩と自作を含むヴィジュアル(写真、ドローイング、コラージュなど)で構成。






合田佐和子 帰る途もつもりもない

監修:高知県立美術館、三鷹市美術ギャラリー
発行:青幻舎
発行日:2022年11月26日
サイズ:A5判、280ページ

合田佐和子(1940–2016)は高知に生まれ、1965年の個展デビュー以来、オブジェや絵画、写真といったメディアを横断しながら創作を展開しました。唐十郎や寺山修司とのコラボレーション、瀧口修造など美術評論家からの高い評価、またファッションや音楽など領域を超えたものたちとの親和性により、アングラが隆盛した時代の空気を体現するに至ります。しかし一転して90年代以降はその退廃的な作風を脱ぎ捨て、まばゆい光に満たされた、より内省的な世界を深めていきます。






青春20世紀美術講座 激動の世界史が生んだ冒険をめぐる15のレッスン

著:新見隆
発行:東京美術
発行日:2022年11月28日
サイズ:19cm、240ページ

「20世紀美術」は、産業革命ののち、「近代」が定着するとともに露呈したさまざまな問題に直面する中生まれました。芸術家は、「青春」をかけて芸術と社会の問題に取り組み、苦闘の中から前例のない作品を生み出したのです。一方「近代化」の影響は、地球環境問題やコロナ禍などに直面する現代へつながり、人々を苦悩へと引き込みます。解くのが容易ではない山積みの問題を前にした現代の我々は、どうしたらよいのか? 本書では20世紀美術を生み出した芸術家達の苦闘の中にその問いへの答えを探り、現代を生き抜くためのヒントを見出します。






沖縄と琉球の建築|Timeless Landscapes 3

写真:小川重雄
解説:青井哲人
発行:millegraph
発行日:2022年11月29日
サイズ:304×230mm、88ページ

伝統的民家、およそ半世紀前につくられたリゾート建築の金字塔、そしてグスク(城)の遺構、樋川(湧水)、御嶽に見られる密やかな人為の跡、フクギの防風林など、その風土ならではの人工環境を「建築」と捉えた1冊。






潜在景色

編著:アーツ前橋
写真:石塚元太良、片山真理、下道基行、鈴木のぞみ、西野壮平、村越としや
発行:ART DIVER
発行日:2022年11月下旬
サイズ:B5判、144ページ

石塚元太良、片山真理、下道基行、鈴木のぞみ、西野壮平、村越としや
これからの写真界を牽引する30歳代から40歳代の実力派作家6名による展覧会の公式カタログ。
撮り下ろし新作を含む、メディア未発表作品を多数掲載。






アートプレイスとパブリック・リレーションズ 芸術支援から何を得るのか

著:川北眞紀子(南山大学教授),薗部靖史(東洋大学教授)
発行:有斐閣
発行日:2022年12月5日
サイズ:A5判、282ページ

デジタル化とコモディティ化が進む現代,アートの「場」から得られる知見や着想,地域や文脈とのつながり,そして真正性は,企業にとって有益なものである。アートプレイスの構築から企業が得られるものとは何か。取材と分析から得られた知見をもとに伝えていく。






金サジ写真集『物語』

デザイン:佐々木暁
発行:赤々舎
発行日:2022年12月中旬(予約販売)
サイズ:B4変形

写真家 金サジの代表作「物語」シリーズの写真集。











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2022/12/14(水)(artscape編集部)

2022年12月15日号の
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