2017年12月15日号
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artscapeレビュー

2009年06月15日号のレビュー/プレビュー

ケンチクのウンチクvol.1 建築学生のハローワーク編

アップリンク・ファクトリー[東京都]

渋谷のアップリンク・ファクトリーにて開かれた建築イベントの第1回。『建築学生のハローワーク』(彰国社)の編著者である五十嵐太郎氏、ぽむ企画の平塚桂とたかぎみ江さんが司会。ゼネコン、アトリエ、デベロッパー、非建築家をそれぞれ代表して、コンペキラーで名を馳せ竹中工務店にて活躍する宮下信顕氏、いわば正反対の安藤忠雄事務所とSHoPを経て独立した豊田啓介氏、ゼネコンからデベロッパーに転職した篠原徹也氏、日本のドラッグ・クイーンの第一世代であるヴィヴィアン佐藤氏が、それぞれの就職や転職にまつわる経験をプレゼンテーションした。コンペ必勝法や、お金の流れなど、学生にとっては普段聞けない話がたくさん聞けたはず。かくいう筆者もかなり勉強になった。建築関係の異なる業界の人たちが横断的に語る機会はなかなか珍しく、この種の建築関係のイベントとしてまったく新しいタイプのものであり、面白かった。
アップリンクは建築映像のDVDを多く発売していることでも知られるが、マイクロ・カフェシアターであるアップリンク・ファクトリーでは、映画の上映を初めとしてトークショー、シンポジウムなど、さまざまなイベントも行なっている。毎月第2週・第4週の月曜日・火曜日には、クリエイターのために無料でスペースを貸し出しているのだという。渋谷でこれだけ自由に使える場所があるとはすごい。クリエイティヴィティを感じる場所である。

2009/04/29(水)(松田達)

森太三「世界の果て」

会期:2009/04/11~2009/05/03

PANTALOON[大阪府]

オープンが17時ということもあって訪れたのは日も沈みかけた頃。展示はこれまでも森が発表してきた見立ての「風景」だが、雪に覆われた大地を俯瞰するようなイメージもあるこの作品は、その都度、観る者の視線の導線を意識した演出になっていて、空間や観る時間帯によっても表情がそれぞれ異なるため、毎回新鮮な印象と趣きが感じられる。今回は民家を改築した吹き抜けの空間が特徴的な会場。天井から雨粒のような数珠状の玉がぶら下がっていて、視線は必然的に上方へと向かう。誘われるように2階へ続く階段を上ると山脈のように連続する起伏が床面に広がるインスタレーション。白いカーテン越しに射し込む鈍い光が起伏の連なりをいっそう幻想的に見せていた。一方、閉め切られた真っ暗な空間の窓にときどきピカっと稲妻のような閃光が走る作品は新しい試み。静かに移ろう時間を意識させる起伏の作品とは対照的だ。素材や手法は特別なものではないが、どちらもこれから何かが起こるという期待と、兆しを感じさせて演劇を見ているようだった。

2009/05/01(金)(酒井千穂)

ヤノベケンジ──ウルトラ展

会期:2009/04/11~2009/06/21

豊田市美術館[愛知県]

テスラコイル(人工稲妻発生装置)という巨大な装置の中で火花が散る最新作《ウルトラ──黒い太陽》。これが今展の最大の見どころなのだが、その大掛かりな作品のインパクトよりも、これまでに発表された模型やドローイング、立体作品など、制作の軌跡をたどる会場の展示自体がヤノベケンジという作家の魅力を余すところなく伝えていた印象で、見終わる頃には胸がいっぱいになるような感覚を覚えたのが一番の収穫。ここに至るまでの活動が大きなひとつの物語としてつながっていく面白さ、今後の展開への期待など、想像はあれこれめぐっていくのだが、なによりも、何度も同じ場所に立ち返り、かすんで見えるものを自らの目で確認しようとするような、現実を直視する愚直な姿勢に勇気という言葉が浮かんでくる。
ヤノベケンジ──ウルトラ展:http://www.museum.toyota.aichi.jp/exhibition/2009/temporary/yanobe_ultra.html

2009/05/02(土)(酒井千穂)

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江戸時代尾張の絵画 巨匠 中林竹洞

会期:2009/04/01~2009/05/06

名古屋城天守閣2階展示室[愛知県]

江戸時代の「文人画」の画家、中林竹洞の初期から晩年までの作品を展観。四十代半ばで眼病を煩うという画家としての絶望的状況に陥った竹洞の制作の変遷が青年期から丁寧に紹介されていて、見応え充分のボリューム。若い時代のものは強烈なインパクトはないと思うけれど、描写力と点描のような独特の手法も時代を追うごとに洗練されて、独特の作品世界が形成されていくのがよく理解できる。特に晩年の山水図には、絵画というよりもデザイン的に優れたセンスが感じられて、なんとも絶妙な趣きがあった。こんなに沢山の作品を見たのは初めてだったが、感覚的にはちっとも古さを感じず、むしろ新鮮。
江戸時代尾張の絵画 巨匠 中林竹洞:http://www.nagoyajo.city.nagoya.jp/02_events/21/210401/index.html

2009/05/03(日)(酒井千穂)

池田亮司 +/- [ the infinite between 0 and 1]

会期:2009/04/02~2009/06/21

東京都現代美術館[東京都]

1階では、暗い部屋に細かい数字を打ち込んだ彫刻を浮かび上がらせたり、デジタル映像を壁面いっぱいにプロジェクターで流したり。地下1階では逆に床まで白いホワイトキューブに黒い彫刻を置き、対比を強調している。内容はともかく、形式的にはミニマル、コンセプチュアルな色彩、形態、演出をベースに、デジタルメディアを使って光や音を採り込み、さらに靴を脱いで上がらせるという観客参加まで試みている。つまりこの展覧会、現代美術の主要な要素(おいしいところ)をほとんど採り込んでいるのだ。だから意外と飽きない。
池田亮司 +/- [ the infinite between 0 and 1]:http://www.ryojiikeda.mot-art-museum.jp/

2009/05/04(月)(村田真)

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