artscapeレビュー
小林耕平「右は青、青は左、左は黄、黄は右」
2009年11月1日号
会期:2009/09/26~2009/10/24
山本現代[東京都]
2作の映像作品と数点の絵画作品。映像作品における小林耕平の最近の特徴は、自分が出演してカメラを他者に委ねているところ。「セッション」と言えば聞こえはいいが、カメラマンが小林の言いなりになることなく、むしろ小林とは別系統の意志が映像に映り込んでいる。頻繁に主人公から気を逸らすカメラ。舞台は、どこでも見かけそうな郊外の公園と造成地。自転車に乗ったり、ビンやビニール紐や枝切り鋏を手にしたり、小林と小さなオブジェたちは空間に散らばる。そうしたことどもが画面上でおのずと「構図」を発生させる。そこにあるのは絵画? しばしば首がフレームアウトされ撮影される小林の身体は彫刻? 環境音は音楽に思われ、カメラマンの気まぐれで突然ズームアップが始まると、そもそもこれは映像作品だと我に返る。きわめてシンプルな映像のなかに多様な芸術ジャンルの問題が掴み出されて提示されている。そのことになにより驚愕した。時間芸術である映像作品ならではの豊かさを見た。もうひとつ気づかされたのは、なに気ない景色にも無数の見所があること。きっと小林は日々、なに気ない日常から多様なイメージを拾う作業をしているのだろう。そんな眼差しをあちこちへ投げかける身振りが小林の絵画作品からも感じられた。
2009/10/14(水)(木村覚)