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artscape編集部のレビュー/プレビュー
カタログ&ブックス | 2023年12月1日号[テーマ:デジタルテクノロジーの現在から「人間とは?」を逆照射する5冊]
生の感覚そのものが新たな技術によって目まぐるしく更新され続ける現代。それらに触れるためのインターフェースを多領域の作家が提示する金沢21世紀美術館「D X P (デジタル・トランスフォーメーション・プラネット) 」展(2024年3月17日まで)にちなみ、私たち人間の姿を捉え直す契機になる本を選びました。
※本記事の選書は「hontoブックツリー」でもご覧いただけます。
※紹介した書籍は在庫切れの場合がございますのでご了承ください。
協力:金沢21世紀美術館
今月のテーマ:
デジタルテクノロジーの現在から「人間とは?」を逆照射する5冊
1冊目:未来をつくる言葉 ─わかりあえなさをつなぐために─(新潮文庫)
著者:ドミニク・チェン
発行:新潮社
発売日:2022年8月29日
サイズ:16cm、246ページ
Point
情報学研究者である著者が、娘の出産への立ち会いや、その後の生活のふとした瞬間、あるいはデジタルテクノロジーとヒトとの距離を扱った自らの制作など、半生を振り返りつつ綴るエッセイ。「はじまり」と「おわり」に挟まれた生の時間のなかで突き当たる、コミュニケーションやその齟齬について立ち止まって考えたい人に。
2冊目:親子で知的好奇心を伸ばす ネオ子育て
著者:草野絵美
発行:CCCメディアハウス
発売日:2022年4月1日
サイズ:19cm、253ページ
Point
デジタル技術とは切っても切り離せない現代の子育て。DXP展の出展作家でありデジタルネイティブ世代の草野絵美は、自らの子供(と、その親である自分自身)とどう向き合い、感覚を日々更新しているのか。あくまで育児書の体裁を取りつつ「ヒトが育つ」ことの普遍性も再認識させてくれる、パワフルな気持ちになる一冊。
3冊目:言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか(中公新書)
著者:今井むつみ、秋田喜美
発行:中央公論新社
発売日:2023年5月24日
サイズ:18cm、277ページ
Point
DXP展でも扱われている大きなテーマのひとつとして、昨今ますます私たちの心をざわつかせている人工知能。それらとヒトとの間にある決定的な差とは何か、そもそもある対象について「知っている」とはどんな状態を指すのか。言葉を使ううえでの「身体感覚」に焦点を当て、言語学の観点から人の営みを照らし出す話題書。
4冊目:身ぶりと言葉(ちくま学芸文庫)
著者:アンドレ・ルロワ=グーラン
翻訳:荒木亨
発行:筑摩書房
発売日:2012年3月29日
サイズ:15cm、680ページ
Point
箸や筆記具、あるいはキーボード──私たちの脳神経と手と指と、その先にある外界を橋渡しする道具(≒インターフェース)の数々と、古来から大きくは変わらない私たちの身体との間にある、絶えず更新され続けてきた関係性の変遷を紐解く一冊。原著の出版は1960年代半ばでありながら、新鮮な驚きをくれるはず。
5冊目:プロトコル・オブ・ヒューマニティ
著者:長谷敏司
発行:早川書房
発売日:2022年10月18日
サイズ:20cm、292ページ
Point
事故で片脚を失ったコンテンポラリーダンサーが、再起をかけてAI制御の義足を身につけることを通しての出来事を描くSF小説。現実世界でもすでに人工知能を用いた芸術作品が数多く生まれている昨今だからこそ、その先に何が起こりうるのか、人間性とは何かという問いが胸に迫ります。リアルなダンスシーンの描写も必見。
D X P (デジタル・トランスフォーメーション・プラネット) ─次のインターフェースへ
会期:2023年10月7日(土)~2024年3月17日(日)
会場:金沢21世紀美術館(石川県金沢市広坂1-2-1)
公式サイト:https://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=17&d=1810
[展覧会図録]
「D X P (デジタル・トランスフォーメーション・プラネット) ─次のインターフェースへ」公式図録
タイトル:デジタル・バイツ アート&テクノロジーの摂り方(仮)/Digital Bites How to eat Art and Technology
編集:長谷川祐子、金沢21世紀美術館
発行:株式会社ビー・エヌ・エヌ
発売日:2024年1月以降(予定)
サイズ:B5判変型、フルカラー、240ページ、バイリンガル(予定)
◎金沢21世紀美術館ミュージアムショップ、全国書店にて販売予定。詳細情報は展覧会ウェブサイトをご参照ください。
2023/12/01(金)(artscape編集部)
カタログ&ブックス | 2023年11月15日号[近刊編]
展覧会カタログ、アートやデザインにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
※hontoサイトで販売中の書籍は、紹介文末尾の[hontoウェブサイト]からhontoへリンクされます。「honto」は書店と本の通販ストア、電子書籍ストアがひとつになって生まれたまったく新しい本のサービスです。
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革命と住宅
著者:本田晃子
発行:ゲンロン
発行日:2023年10月1日
サイズ:四六判、348ページ
革命は「家」を否定する──社会主義の理念を実体化すべく生み出された、ソビエト/ロシアの建築の数々。しかしその実態は当初の計画からかけ離れ、狭小で劣悪な住宅環境と、建てられることのない紙上の「亡霊建築」に分離していく。理想と現実に引き裂かれた建築から見える、大国ロシアが抱える矛盾とはなにか。そしてそこで生きる人びとの姿はどのようなものだったのか。
地衣類、ミニマルな抵抗
著者:ヴァンサン・ゾンカ
訳者:宮林寛
発行:みすず書房
発行日:2023年10月10日
サイズ:四六判、392ページ
「地衣類は科学者のみならず、「共生」──ないし「寄生」──について考えるためのさまざまなきっかけを思想家たちに提供してきた。本書はそうした過去の言説にも立脚しつつ、人新世の時代における共生の問題をあらためて俎上に載せた、詩情豊かなエッセイである。」(星野太)
関連レビュー
Vincent Zonca, Lichens. Pour une résistance minimale |星野太:artscapeレビュー(2021年10月15日号)
ユニバーサル・ミュージアムへのいざない──思考と実践のフィールドから
著者:広瀬浩二郎
発行:三元社
発行日:2023年10月20日
サイズ:A5判、184ページ
近年、各地のミュージアムで「さわる鑑賞プログラム」が実施されている。それは、ミュージアムを「目で見る」施設から、「全身の感覚でみる」体験の場に変えていく試みでもある。「ユニバーサル」とは、単なる障害者支援ではない。「健常/障害」という二項対立の垣根を取り払い、「誰もが楽しめる」ユニバーサル・ミュージアムを創ることで、触感豊かな共生社会の未来像を提示できるだろう。
バロック美術──西洋文化の爛熟
著者:宮下規久朗
発行:中央公論新社
発行日:2023年10月23日
サイズ:新書判、336ページ
西洋文化の頂点、バロック様式。17世紀を中心に花開いたバロックの建築・彫刻・絵画は、ルネサンス期の端正で調和のとれた古典主義に対し、豪華絢爛で躍動感あふれる表現を特徴とする。本書は、カラヴァッジョ、ルーベンス、ベルニーニ、ベラスケス、レンブラント、フェルメールらの代表的名作を網羅。美術史上の位置づけ、聖俗の権力がせめぎ合う時代背景など、バロック美術の本質を読み解く。
New Habitations from North to East: 11 years after 3.11
写真:トヤマタクロウ
詩:瀬尾夏美
装丁:米山菜津子
編集:柴原聡子
翻訳:大久保玲奈、サム・ベット
発行:YYY PRESS
発行日:2023年10月28日
サイズ:18.8×26.3cm、312ページ
アーティストで詩人の瀬尾夏美は、東日本大震災以降、岩手県陸前高田市をはじめ、近年増え続ける自然災害の被災地を訪ね、土地の人びとのことばと風景の記録を考えながら絵を描き文章を書いています。2022年、彼女はこれまで飛び石的に訪れていた被災各地を歩き直した軌跡を一冊の本にまとめることにしました。そして、写真家のトヤマタクロウが、2022年秋から2023年春にかけて岩手県北部から茨城県中部までを点と点を結ぶように辿り、各地の今の風景を収めました。
ここちよい近さがまちを変える──ケアとデジタルによる近接のデザイン
著者:エツィオ・マンズィーニ
監修・訳・解説:安西洋之、山﨑和彦
訳・解説:本條晴一郎、森一貴、澤谷由里子、⼭縣正幸
発行:Xデザイン出版
発行日:2023年11月3日
サイズ:A5判、351ページ
「Livable proximity=ここちよい近さ(近接)」。イタリアのデザイン研究者でありソーシャルイノベーションとサスティナビリティデザインに関する第一人者エツィオ・マンズィーニが著してくれるこの視点は、国のボーダーを超えてこれからの時代の“まち、地域、都市、ケア、コミュニティ、デジタル、経済、デザイン”への見方を変えてゆくと考えてやみません。本書は彼が記した「Livable proximity -- ideas for the city that cares」の翻訳書として、ポストコロナにこそ意味を放つこの視点・考え方・アプローチを我が国に広く伝えることを目的に、日本版オリジナルコンテンツとして当文脈における意義深い日本の事例や解説も追加されています。
沖縄画──8人の美術家による、現代沖縄の美術の諸相
編集:土屋誠一、富澤ケイ愛理子、町田恵美
発行:アートダイバー
発行日:2023年11月6日
サイズ:18.2×25.7cm、79ページ
沖縄という地縁だけを手掛かりに、ユニークな作品を展開する新進気鋭の美術家8名を紹介した展覧会「沖縄画―8人の美術家による、現代沖縄の美術の諸相」。同展の出品作品のほか、土屋誠一らによる「沖縄画」を巡る論考や、「東北画は可能か?」でも知られる三瀬夏之介を招いたシンポジウムを収録した記録集。
小杉武久 音の世界 新しい夏1996
編集:岡本隆子、菅谷幸、村井啓哲
デザイン:佐々木暁
翻訳:桜本有三
協力:芦屋市立美術博物館、山本淳夫(横尾忠則現代美術館)
発行:GALLERY 360°、HEAR/Estate of Takehisa Kosugi
発行日:2023年11月10日
サイズ:B5判、64ページ
今回の書籍は、芦屋市立美術博物館で1996年5月18日~7月7日に開催された「小杉武久 音の世界 新しい夏」展の図録の改訂版として出版されました。A6版 変形だった判型をB5版にし、新たに英文翻訳、図版、注釈を加えました。
スターハウス 戦後昭和の団地遺産
編著:海老澤模奈人
著者:志岐祐一、川崎直宏、古林眞哉、岡辺重雄
発行:鹿島出版会
発行日:2023年11月10日
サイズ:A5変型判、216ページ
三角形の階段室にY字型平面をもつユニークな星形住宅(スターハウス)。板状住棟が並ぶ団地景観に変化を与え、戦後団地を象徴する建物として、1970年半ばまで日本各地で建設された建築遺産の記録。
フランク・ロイド・ライト──世界を結ぶ建築
監修・著:ケン・タダシ・オオシマ、ジェニファー・グレイ
著者:水上優+田中厚子+田根剛+マシュー・スコンスバーグ
編集:豊田市美術館+パナソニック汐留美術館+青森県立美術館
発行:鹿島出版会
発行日:2023年11月10日
サイズ:B5版、256ページ
帝国ホテル二代目本館100周年記念展覧会「フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築」展公式カタログ。華麗な装飾、自然との調和、独自の存在感を放つ造形、素材と構法の革新、未来的なヴィジョンの数々。近年のF.L.ライトの調査研究の成果を基にした、四半世紀ぶりに日本で開催される待望の展覧会。
モニュメント原論──思想的課題としての彫刻
著者:小田原のどか
発行:青土社
発行日:2023年11月14日
サイズ:A5判、613ページ
彫刻を「思想的課題」と自らに任じ、日本近現代の政治・歴史・教育・芸術そしてジェンダーを再審に付す。問い質されるは、社会の「共同想起」としての彫像。公共空間に立つ為政者の銅像が、なぜ革命・政変時に民衆の手で引き倒される無残な運命に出遭うのか――。画期的かつ根源的な思索の書。
この国(近代日本)の芸術──〈日本美術史〉を脱帝国主義化する
編者:小田原のどか・山本浩貴
発行:月曜社
発行日:2023年11月18日
サイズ:四六判、852ページ
気鋭の作家/キュレーター/研究者22人よる論考とインタビューによって、帝国主義が隠蔽してきた〈芸術〉、そして〈日本美術史〉なるフィクションを解体=再編し、読みかえを迫る出色の論集。
とるにたらない美術──ラッセン、心霊写真、レンダリング・ポルノ
著者:原田裕規
編集:五十嵐健司
デザイン:加瀬透
発行:ケンエレブックス
発行日:2023年11月20日
サイズ:四六判変型、352ページ
誰もが知っているにもかかわらず、「とるにたらない」と決めつけられることによって、誰もが直視してこなかった美術の死角。それを敢えて見つめることによって、盲点の側から「美術」の自画像を浮かび上がらせることができるのではないか──(「はじめに」より)
2023/11/14(火)(artscape編集部)
カタログ&ブックス | 2023年11月1日号[テーマ:「保存・修復」の視点から、美術館スタッフのニッチな奮闘を覗き見る5冊]
美術館の社会的役割のうち普段注目される機会の少ない、所蔵作品や文化財の「保存」。ダリをはじめ同館所蔵作品の保存・修復のプロセスを見せていく諸橋近代美術館「ミュージアム・ワークス─みんなの知らない美術館」(2023年11月12日まで)の開催に際し、普段見えにくい美術館の仕事の現場のニッチな醍醐味に出会える本たちをご紹介。
※本記事の選書は「hontoブックツリー」でもご覧いただけます。
※紹介した書籍は在庫切れの場合がございますのでご了承ください。
協力:諸橋近代美術館
今月のテーマ:
「保存・修復」の視点から、美術館スタッフのニッチな奮闘を覗き見る5冊
1冊目:文化財と標本の劣化図鑑
編集:岩﨑奈緒子、佐藤崇、中川千種、横山操
協力・監修:京都大学総合博物館
発行:朝倉書店
発売日:2023年10月10日
サイズ:26cm、126ページ
Point
こんな図鑑があったとは。保存方法や環境に細心の注意を払っていても、完全には止めることは難しい「劣化」。京都大学総合博物館の所蔵品から劣化の進んだものの特徴を分類し、その状態をじっくり観察できるだけでなく、プロはそこにどう対応し食い止めるのか、その悪戦苦闘も含め知ることができるユニークな一冊です。
2冊目:国宝 普賢菩薩像 令和の大修理全記録
監修:東京国立博物館
発行:東京美術
発売日:2023年4月18日
サイズ:26cm、135ページ
Point
東京国立博物館の所蔵品を代表する国宝「普賢菩薩像」が、2019年からつい最近まで3年間に及ぶ修復を施されていたことはあまり知られていません。最新技術を用いた作業前の調査と分析や、修理方針の変更、そしてまさかのコロナ禍の到来──1作品だけにフォーカスし、蟻の目で見届けるその修復過程はまさにドラマです。
3冊目:学芸員の観察日記 ミュージアムのうらがわ
著者:滝登くらげ
発行:文学通信
発売日:2023年2月27日
サイズ:21cm、175ページ
Point
ある博物館での学芸員やスタッフたちの日常を4コマで描くお仕事マンガ。保存・修復に焦点を当てた第4章「まもって、のこす」をはじめ、ほのぼのとしたタッチとは裏腹に、著者の実際の体験が凝縮されているであろう「職業病」的な描写の連続に心くすぐられます。読後に美術館を訪れる際には新たな視点が加わっているはず。
4冊目:あっけなく明快な絵画と彫刻、続いているわからない絵画と彫刻
著者:近藤恵介、冨井大裕
発行:HeHe
発売日:2023年3月20日
サイズ:21cm、85ページ
Point
現代の作品も、歴史的作品と同じくもちろん美術館の保存・修復の対象。現代を生きる作家たちは、自作の劣化や損傷に対してリアルタイムでどう感じ、何をするのか。2019年の東日本台風で被災した近藤恵介と冨井大裕の共作シリーズの修復と、それを踏まえた新たな制作、再展示までの過程と心境を綴ったドキュメント。
5冊目:カビの取扱説明書
著者:浜田信夫
発行:KADOKAWA
発売日:2022年5月24日
サイズ:15cm、269ページ
Point
文化財のみならず日常の至るところに偏在し、気を抜くと発生しているカビ。食の世界ではポジティブな存在にも反転したりと、私たちは彼らと共生していると言っても過言ではないものの、その具体的な習性や種類まで考える機会は少ないはず。その文化的背景から対応策まで、カビたちに少しだけ親近感が湧いてしまう一冊。
ミュージアム・ワークス─みんなの知らない美術館
会期:2023年7月15日(土)~11月12日(日)
会場:諸橋近代美術館(福島県耶麻郡北塩原村大字桧原字剣ヶ峯1093-23)
公式サイト:https://dali.jp/exhibition
2023/11/01(水)(artscape編集部)
カタログ&ブックス | 2023年10月15日号[近刊編]
展覧会カタログ、アートやデザインにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
※hontoサイトで販売中の書籍は、紹介文末尾の[hontoウェブサイト]からhontoへリンクされます。「honto」は書店と本の通販ストア、電子書籍ストアがひとつになって生まれたまったく新しい本のサービスです。
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中園孔二 ソウルメイト
著者:中園孔二
発行:カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社
発行日:2023年8月10日
サイズ:B4判、80ページ
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館で開催された企画展「中園孔二 ソウルメイト」の記録を収めた日英バイリンガル仕様のカタログ。作家が最期の時を過ごした香川県において約200点の作品を展示した過去最大規模の個展をふりかえる。
未来社会と「意味」の境界 記号創発システム論/ネオ・サイバネティクス/プラグマティズム
編著:谷口忠大、河島茂生、井上明人
発行:勁草書房
発行日:2023年8月30日
サイズ:A5判、176ページ
AI・ロボットと人間が共存する未来社会における「意味」の意味とは何か。大規模言語モデルを超えて新たな意味の学理を構想する。
はじまりはクロマニョン 1
著者:内田れいな
発行:ART DIVER
発行日:2023年8月31日
サイズ:B5判変形、198ページ
舞台はおよそ2万年前、描いた絵を恋人に見せたい──その純粋な心から、クロマニヨン人の少女レイナは、画家を目指すのだが……。
絵画の起源とされる「洞くつ」壁画を題材に、クロマニヨンの主人公レイナが様々な困難にぶつかりながらも、画家として成長していく愛と成長の物語。記念すべき第1巻です。
メディア論の冒険者たち
編者:伊藤守
発行:東京大学出版会
発行日:2023年9月1日
サイズ:A5判、400ページ
メディアについての議論百出諸説紛紛。ベンヤミン、マクルーハン、ボードリヤール、エーコ、マクロビー、キットラー、マノヴィッチ、ラマール、ホイ……。彼ら/彼女らがメディアに関して紡いだ思考の核心を浮かび上がらせる。第一線で活躍するメディア研究者が執筆するメディア論を知り学ぶための最強テキスト。
「第11回ヒロシマ賞受賞記念 アルフレド・ジャー展」カタログ
編集:洲濱元子、清水和音
発行:広島市現代美術館
発行日:2023年9月14日
サイズ:A4判変形、184ページ
第11回ヒロシマ賞の受賞者アルフレド・ジャーの受賞記念展(広島市現代美術館)を記録したカタログ。作家にとって日本国内で初の本格的な個展となる本展は、その代表作から新作までを総覧するものとなった。
新版 卒業設計コンセプトメイキング リサーチ・デザイン・プレゼンテーション
著者:松本裕
発行:学芸出版社
発行日:2023年9月20日
サイズ:四六判、256ページ
卒業設計は、学生自らがテーマを探し出し、論理的思考プロセスを積み重ね、オリジナリティある提案をすることが必要となる。実際の学生の作品をもとにした対話を軸に解説。新版では、課題設定、フィールドワーク/リサーチ、建築的・空間的なアイデア、プレゼンの4つに再編成。より本質的なコアな部分に絞り込む内容とした。
アートベース・リサーチの可能性 制作・研究・教育をつなぐ
編著:小松佳代子
発行:勁草書房
発行日:2023年9月20日
サイズ:A5判、384ページ
アートをベースにするとはいかなることか。最新の研究動向をとらえ、美術研究者・芸術家がアートベース・リサーチを多角的に分析。
建築思想図鑑
編著:松田達、横手義洋、林要次、川勝真一
イラスト:寺田晶子
発行:学芸出版社
発行日:2023年9月25日
サイズ:A5判、256ページ
建築思想を理解すれば、つくる建築、語る言葉の説得力が増す。いま知っておくべき建築思想63項目の基本を、本質を押さえたイラストと、気鋭の執筆陣による解説で理解できる入門書。難しそうな言葉でも、まずはイラストを眺めて一歩を踏み出し、建築の奥深さに触れてみよう!時代の流れや項目同士の結びつきも見えてくる。
K-PUNK 夢想のメソッド──本・映画・ドラマ
著者:マーク・フィッシャー
翻訳:坂本麻里子+髙橋勇人
発行:Pヴァイン
発行日:2023年9月26日
サイズ:四六判、416ページ
ポスト左翼がブレグジットに直面した際に、旧来の左翼の惰性を非難し「右傾化」することが「大人」だとされたときも、マーク・フィッシャーはその惰性をどうしたら脱却できるのかと向き合い、安易な「右傾化」に同調することもなかった。
アカデミックになることなく、つねにポピュラー・ミュージックや映画、大衆文学を出発点としながら大衆迎合主義に陥ることも回避しつづけてきた知性の、彼の人気を決定づけた原点にしてすべて──それが彼の伝説のブログ『K-PUNK』だった。
坂本龍一のメディア・パフォーマンス
編著:松井茂、川崎弘二
発行:フィルムアート社
発行日:2023年9月26日
サイズ:四六版、284ページ
坂本龍一が「パフォーマンス元年」と称する「1984年」に注目し、生涯にわたって「メディア」を革新し続けた芸術家としての足跡をあらためて紐解く。
メディア戦略としての出版社「本本堂」、書籍というメディウムそのものによるパフォーマンス、世界最大級のテレビ「ジャンボトロン」を用いたメディア・イベント「TV WAR」……
多彩なプラットフォームで発表された作品群、その時々に遺された発言、そして、坂本龍一へのインタビューをもとに、「マス・メディアの中の芸術家像」を「メディア・パフォーマンス」というキー・タームから解き明かす。
戒厳令下の新宿 菊地成孔のコロナ日記 2020.6-2023.1
著者:菊地成孔
発行:草思社
発行日:2023年9月28日
サイズ:四六判、384ページ
神田沙也加、瀬川昌久、上島竜兵各氏への追悼、村上春樹氏との邂逅、コロナ感染記……。音楽業界を壊滅的状況に陥れたコロナ禍、その抑鬱と祝祭の二年半の記録。
写真よさようなら 普及版
著者:森山大道
発行:月曜社
発行日:2023年9月29日
サイズ:B5判、316ページ
写真集史上の永遠の問題作にしてロングセラー。1972年に写真評論社より刊行された『写真よさようなら』を底本とし、2019年に月曜社より刊行された『森山大道写真集成(3) 写真よさようなら』における構成をもとに、装丁を新たにし判型をコンパクトにした普及版。中平卓馬との対談全文掲載。収録写真145点。「写真というものを、果ての果てまで連れて行って無化したかった」(森山大道)というそのラディカリズムは、刊行後50年以上を経てなお、その衝撃力を失っていない。
絵画の解放 カラーフィールド絵画と20世紀アメリカ文化
著者:加治屋健司
発行:東京大学出版会
発行日:2023年9月29日
サイズ:A5判、368ページ
ヘレン・フランケンサーラー、モーリス・ルイス、ケネス・ノーランド、ジュールズ・オリツキー、フランク・ステラら、20世紀半ばのアメリカで隆盛したカラーフィールド絵画の代表的画家5名を取り上げ、同時代の展覧会評や批評、美術動向に関する言説を丹念に読み解き、20世紀アメリカ文化との豊かな関係性を明らかにする。
マルクス解体 プロメテウスの夢とその先
著者:斎藤幸平
翻訳:竹田真登、持田大志、高橋侑生
発行:講談社
発行日:2023年10月26日
サイズ:四六判、432ページ
いまや多くの問題を引き起こしている資本主義への処方箋として、斎藤幸平はマルクスという古典からこれからの社会に必要な理論を提示してきた。本書は、マルクスの物質代謝論、エコロジー論から、プロメテウス主義の批判、未来の希望を託す脱成長コミュニズム論までを精緻に語るこれまでの研究の集大成であり、「自由」や「豊かさ」をめぐり21世紀の基盤となる新たな議論を提起する書である。
2023/10/13(金)(artscape編集部)
カタログ&ブックス | 2023年10月1日号[テーマ:荒川修作+マドリン・ギンズと「意味」の湖を楽しく泳げるようになる5冊]
「意味」とは何か。「荒川修作+マドリン・ギンズ《意味のメカニズム》全作品127点一挙公開 少し遠くへ行ってみよう」展(セゾン現代美術館にて2023年10月31日まで開催)で出会えるのは、我々が思考のなかで圧倒的な力をもつ言語や論理を超えて、意味の構築を探る実験場。“少し遠く”への補助線となる5冊を紹介します。
※本記事の選書は「hontoブックツリー」でもご覧いただけます。
※紹介した書籍は在庫切れの場合がございますのでご了承ください。
協力:セゾン現代美術館
今月のテーマ:
荒川修作+マドリン・ギンズと「意味」の湖を楽しく泳げるようになる5冊
1冊目:22世紀の荒川修作+マドリン・ギンズ 天命反転する経験と身体
編著:三村尚彦、門林岳史
発行:フィルムアート社
発売日:2019年12月25日
サイズ:21cm、307+10ページ
Point
死なないための方法を模索していた荒川の、没後10年に編まれた書籍。巨匠から若手まで幅広い書き手による論考・エッセイだけでなく、三鷹天命反転住宅でのワークショップのレポートや、そこに住む人々の素朴な所感に触れられる対話録まで、さまざまな形の荒川+ギンズとの接点や思い入れに触れられる賑やかな一冊。
2冊目:荒川修作の軌跡と奇跡
著者:塚原史
発行:NTT出版
発売日:2009年4月
サイズ:21cm、255+56ページ
Point
荒川の生涯通じての作品や仕事、その変遷をある程度俯瞰して知りたい人におすすめ。生前の荒川+ギンズと深い親交のあったダダイスム・シュルレアリスム研究者の塚原史氏だからこその親密な視点が端々で垣間見えます。豊富な図版や対談を通して、荒川が一貫して希求していたものが読む前よりも立体的に見えてくるはず。
3冊目:絶滅へようこそ 「終わり」からはじめる哲学入門
著者:稲垣諭
発行:晶文社
発売日:2022年4月8日
サイズ:19cm、377ページ
Point
上で紹介した『22世紀の〜』にも寄稿する気鋭の哲学研究者・稲垣諭による論考集。人類はすでに絶滅に向かっているという仮定に立って考える、現代の私たちの「生」との距離。その思索の入り口として登場する、iPhoneなどのデバイスや、セルフレジ、K-POPのアイドル、村上春樹といったトピックの並びも絶妙。
4冊目:数学する身体
著者:森田真生
発行:新潮社
発売日:2018年4月27日
サイズ:16cm、227ページ
Point
学生時代に荒川に出会い衝撃を受け、数年後に三鷹の養老天命住宅に入居。晩年の荒川と時間を共にし、大きな影響を受けた1985年生まれの数学者・森田真生のデビュー作。本書で綴られる荒川とのエピソードの面白さはもちろんながら、身体的な思考の道具として数学を捉え直すきっかけとして、数学アレルギーの人こそぜひ。
5冊目:考える練習
著者:保坂和志
発行:大和書房
発売日:2013年4月17日
サイズ:19cm、302ページ
Point
荒川にまつわるテキストをたびたび書いている小説家・保坂和志による語りの連なり。文学についてだけでなく社会問題、スポーツ、経済といった身近な話題を通じ、いかに論理的思考や「わかる」ことから遠くに行って思考できるかのを模索をテーマにしているという点でも《意味のメカニズム》との強い共振を感じさせます。
荒川修作+マドリン・ギンズ《意味のメカニズム》 全作品127点一挙公開 少し遠くへ行ってみよう
会期:2023年4月22日(土)~10月31日(火)※会期延長
会場:セゾン現代美術館(長野県北佐久郡軽井沢町長倉芹ケ沢2140)
公式サイト:https://smma.or.jp/exhibition/shusakuarakawamadelinegins
2023/10/01(日)(artscape編集部)