2021年04月01日号
次回4月15日更新予定

artscapeレビュー

書籍・Webサイトに関するレビュー/プレビュー

カタログ&ブックス | 2021年4月1日号[テーマ:夫妻]

テーマに沿って、アートやデザインにまつわる書籍の購買冊数ランキングをartscape編集部が紹介します。今回のテーマは、東京・世田谷美術館で開催中のアアルト夫妻とその建築に関する展覧会「アイノとアルヴァ 二人のアアルト フィンランド─建築・デザインの神話」にちなみ「夫妻」。「芸術・アート」ジャンルのなかでこのキーワードに関連する、書籍の購買冊数ランキングトップ10をお楽しみください。
ハイブリッド型総合書店honto調べ。書籍の詳細情報はhontoサイトより転載。
※本ランキングで紹介した書籍は在庫切れの場合がございますのでご了承ください。

「夫妻」関連書籍 購買冊数トップ10

1位:愛の手紙 作曲家・古関裕而と妻・金子の物語

編集・発行:マガジンハウス
発売日:2020年4月23日
サイズ:29cm、95ページ

明治末期に福島市で誕生した古関裕而は、5000曲以上の曲を世に送り出した、昭和を代表する作曲家だった。
2020年度前期放送のNHK連続テレビ小説『エール』のモデルとなった古関夫妻の足取りを追うことで、ドラマを観ながら、大正から昭和への時代背景も楽しむことができます。巻頭には連続テレビ小説の内容解説と、主役である窪田正孝さんとヒロイン・二階堂ふみさんの最新インタビューを掲載。古関裕而の偉業を支えたのは、文通によって心を通わせ、後に妻となった金子の存在だった。結婚前の恋文と当時ならではの心温まるやりとり、大正時代のエピソード、作曲家見習い時代、戦争を乗り越え、「平和の祭典」である1964年の東京オリンピックのために「オリンピック・マーチ」を作曲するまでのストーリーがページ内に。聴き覚えのあるメロディや、怪獣映画『モスラ』での主題歌、美空ひばりや島倉千代子など日本コロムビアの人気歌手と古関メロディの秘話、『紺碧の空』他スポーツ応援歌のこぼれ話も交えて。夫婦の軌跡を多彩な図版を添えてご紹介。
古関夫妻が子ども時代を過ごした大正時代や、新婚時代を過ごした昭和初期の文化などについてもわかりやすく解説。古関裕而の故郷・福島市のガイドと金子の故郷・豊橋市のガイドも。大正昭和の歴史好きも朝ドラファンも必携の一冊がここに!


2位:猪熊弦一郎のおもちゃ箱 やさしい線

監修:丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、ミモカ美術振興財団
発行:小学館
発売日:2018年2月26日
サイズ:22cm、256ページ

日本を代表する洋画家の初の物語作品集。
パリでマティスに師事し、藤田嗣治には「ちゃん」づけで呼ばれる仲だった猪熊さんは、イームズ夫妻やイサム・ノグチなど、多くの人から愛されました。自由な絵を描く、自由な人でした。道端で拾ったゴミも、お菓子の包み紙も、猪熊さんの手にかかれば美しいオブジェになりました。常に二人三脚だった妻の文子さんをモデルに、たくさんの絵を描きました。描く対象はいつでも「自分の愛するもの」で、90歳で亡くなるまでロックを聴きながら、明るく明るく生きました。三越の包装紙を見たことはありますか? あの「華ひらく」は、いのくまさんと「アンパンマン」の作者、やなせたかし氏のコラボレーションによるものです。
本書は、物語とともに時代を追って紹介する数々の楽しい作品や、世界中で集めたビンや小物などのセンスあふれるコレクション、ガラクタを集めてつくった不思議なオブジェたちに大好きだったモチーフの猫や鳥のスケッチブックなど、見ているだけで明るい気持ちになる作品と、心温まる物語が詰まった一冊です。さらに、84年に刊行し、長らく復刊が求められていた『画家のおもちゃ箱』も特別再収録しています!


3位:すぐわかる正倉院の美術 見方と歴史 改訂版

著者:米田雄介
発行:東京美術
発売日:2019年10月12日
サイズ:21cm、135ページ

天平文化の粋を伝える聖武天皇夫妻遺愛の品々を中心に、東大寺の儀式用品や文書、武具など約9000件の宝物を収めた正倉院について、代表的宝物の見どころと特質、その歴史を簡潔にまとめた決定版ガイドの新装増補。



4位:星野道夫と見た風景(とんぼの本)

著者:星野道夫、星野直子
発行:新潮社
発売日:2005年1月
サイズ:21cm、125ページ

クマを憎んではいません──。星野道夫がヒグマの事故で急逝して8年。直子夫人が夫妻で過ごした5年半を初めて追想する。撮影同行時の作品を中心に名カット110余点を掲載。写真家、夫、そして父として生きた星野が今、蘇る。



5位:古伊万里入門 佐賀県立九州陶磁文化館コレクション 珠玉の名陶を訪ねて─初期から爛熟期まで Koimari: An Elegant Porcelain

監修:佐賀県立九州陶磁文化館
発行:青幻舎
発売日:2007年9月
サイズ:15cm、255ページ

伊万里焼の草創期、爛熟期、後期までを年代順に通観し、古伊万里の特徴と様式の変化を紹介する。佐賀県立九州陶磁文化館所蔵品の中から柴田夫妻コレクションを含む300余点を解説とともに掲載し、その魅力を探る。



6位:《原爆の図》のある美術館 丸木位里、丸木俊の世界を伝える(岩波ブックレット)

著者:岡村幸宣
発行:岩波書店
発売日:2017年4月5日
サイズ:21cm、63ページ

原発と原爆を一体のものとして批判していた丸木位里・丸木俊夫妻の共同制作〈原爆の図〉はいかに描かれたのか。2人の生い立ちと遍歴、美術史的にも再評価が進む〈原爆の図〉について、丸木美術館の学芸員が語る。



7位:モーツァルト演奏法と解釈 新版

著者:エファ・バドゥーラ=スコダ、パウル・バドゥーラ=スコダ
監訳:今井顕
翻訳:堀朋平、西田紘子
発行:音楽之友社
発売日:2016年4月21日
サイズ:23cm、669ページ

ウィーンの伝統を受け継ぐ巨匠バドゥーラ=スコダ夫妻が、モーツァルト作品の演奏法と解釈を、長年の研究をもとにまとめる。装飾音や強弱など、モーツァルト様式の実践的なアドバイスが満載。参考音源はダウンロード可能。



8位:文様別小皿・手塩皿図鑑 佐賀県立九州陶磁文化館柴田夫妻コレクション

監修・執筆:大橋康二
発行:青幻舎
発売日:2014年5月26日
サイズ:15cm、311ページ

佐賀県立九州陶磁文化館柴田夫妻コレクション(国登録有形文化財)より、小皿・手塩皿906点を厳選し、項目ごとに解説・作品データを付す。古伊万里の深い世界を堪能できる一冊。



9位:美の朝焼けを通って シュタイナーの芸術観

著者:今井重孝、はたりえこ
発行:イザラ書房
発売日:2019年7月8日
サイズ:21cm、126ページ

シュタイナー夫妻が生み出した舞踏芸術「オイリュトミー」は、なぜ未来の芸術と呼ばれるのか。シュタイナー思想の2人のスペシャリストの対談と往復書簡を収録。オイリュトミーと脳波の関係、意識魂の時代についても解説する。



9位:ゴースト・ハンターズ完全読本 怪異を追う者たち─『事件記者コルチャック』から『死霊館』まで

編著:尾之上浩司
発行:洋泉社
発売日:2018年2月8日
サイズ:21cm、271ページ

カール・コルチャック、エド&ロイレン・ウォーレン夫妻という、2大ゴースト・ハンターズの軌跡と活躍を網羅。ほか、おすすめのゴースト・ハンターもののドラマ、ロバート・E・ハワードの未訳小説「同志の刃」も掲載。



9位:西表島・紅露工房シンフォニー 自然共生型暮らし・文化再生の先行モデル

著者:石垣昭子、山本眞人
発行:地湧社
発売日:2019年3月10日
サイズ:19cm、294ページ

西表島でさまざまな天然素材を使って手紡ぎ手織り、草木染の工房を営む染織家、石垣昭子・金星夫妻の暮らしと仕事をまとめた一冊。その作業の全貌を写真と共に紹介するほか、自然観や生き方についてのインタビューなども収録。





artscape編集部のランキング解説

世田谷美術館で2021年3月20日から始まった「アイノとアルヴァ 二人のアアルト フィンランド─建築・デザインの神話」展。フィンランドを代表する建築家アルヴァ・アアルト(1898-1976)とその妻のアイノ(1894-1949)が出会い、活動を共にした25年間に焦点を当て、二人のものづくりの軌跡を俯瞰する展覧会です(※展覧会図録はこちら)。
「夫妻」というキーワードで抽出された今回のランキングには、古今東西さまざまな夫妻が登場。彼・彼女らの、芸術における創造的な連帯のあり方や関係性の多様さが浮かび上がってきました。1位に輝いた『愛の手紙 作曲家・古関裕而と妻・金子の物語』をはじめとして、その夫妻が生きた時代特有の空気も時折見えてきます。
注目してみたいのは、佐賀県立九州陶磁文化館に計10,311点にも及ぶ有田磁器のコレクションを寄贈した、柴田夫妻(柴田明彦[1940-2004]・祐子[1944-]両氏)に関係する本が2冊ランクインしているところ(5位、8位)。体系的かつ網羅的に収集されたそのコレクションは学術的にも非常に重要なコレクションとして位置付けられており、佐賀県立九州陶磁文化館には柴田夫妻コレクション専用の展示室も常設されています。柴田夫妻の収集にかける並々ならぬ情熱を入り口に、古伊万里の魅力に触れてみるのもまた一興。
時代を大きく遡って奈良時代、『すぐわかる正倉院の美術 見方と歴史 改訂版』(3位)においてゆかりの品を多数取り上げられている聖武天皇と光明皇后も、ある意味「コレクター夫妻」と呼べるのかもしれません。聖武天皇を亡くした光明皇后が、彼の冥福を祈って愛用の品を収めたのがその始まりとされる正倉院。先述のガイドブックは「螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)」などをはじめとした美麗な美術工芸品の数々をそのディテールまで楽しめる一冊です。
共に制作活動を展開するアーティスト/職人夫妻の姿をテーマにした本もやはり複数ランクイン。『《原爆の図》のある美術館 丸木位里、丸木俊の世界を伝える』(6位)では、共同制作《原爆の図》を「誰でもいつでもここにさえ来れば見ることができるように」と、埼玉県東松山市に原爆の図丸木美術館をオープンさせた画家の丸木位里(1901-95)・俊(1912-2000)夫妻の生涯や、3.11以降改めて注目が集まる《原爆の図》の制作背景や過程について、丸木美術館の学芸員の視点を通して語られます。一方で、西表島で染色織物工房を営む石垣金星(1946-)・昭子(1938-)夫妻の暮らしを追いかけた『西表島・紅露工房シンフォニー 自然共生型暮らし・文化再生の先行モデル』(9位)は、西表島の生き字引きでもある二人の、つくり手としてのサステナブルな姿勢が示唆に富む一冊。
夫妻という単位で仕事を残している上記の人々から共通して感じられるのは、補い合うという行動のナチュラルさ。今回は「夫妻」縛りでランキングを見てみましたが、今後さらに多様な連帯のしかたが広がることも、併せて願いたいところです。


ハイブリッド型総合書店honto(hontoサイトの本の通販ストア・電子書籍ストアと、丸善、ジュンク堂書店、文教堂など)でジャンル「芸術・アート」キーワード「夫妻」の書籍の全性別・全年齢における購買冊数のランキングを抽出。〈集計期間:2020年3月10日~2021年3月9日〉

2021/04/01(木)(artscape編集部)

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カタログ&ブックス | 2021年3月15日号[近刊編]

展覧会カタログ、アートやデザインにまつわる近刊書籍をartscape編集部が紹介します。
※hontoサイトで販売中の書籍は、紹介文末尾の[hontoウェブサイト]からhontoへリンクされます




二重のまち/交代地のうた

著者:瀬尾夏美
発行:書肆侃侃房
発行日:2021年3月1日
サイズ:19cm、253ページ

僕の暮らしているまちの下には、お父さんとお母さんが育ったまちがある──。2021年公開映画「二重のまち/交代地のうたを編む」の中で朗読される物語などを収録。2018年3月〜2021年2月の「歩行録」も併録。



形象の記憶 デザインのいのち

著者:向井周太郎
発行:武蔵野美術大学出版局
発行日:2021年2月5日
サイズ:21cm、319ページ

ほんの少し太陽を見つめて目を閉じると、まぶたに残像が現れる。最初はオレンジ、やがてじわじわと別の色が広がり、その形はまるで蝶の翅にある眼状紋のようだ……私たちの身体の内に太陽が潜んでいる。「内」と「外」という「あいだ」に近代を読み解く博覧強記のデザイン論。バウハウス運動の原像(ウアビルト)をいかに継承し、変革(メタモルフォーゼ)させていくか、今日の課題に迫る。『かたちの詩学』待望の再編復刊。



歌集 ここでのこと

著者:谷川電話、戸田響子、小坂井大輔、寺井奈緒美、辻聡之、野口あや子、千種創一、惟任將彥、山川藍
発行:ELVIS PRESS
発行日:2021年2月
サイズ:105×180mm、156ページ

愛知県にゆかりのある9人の歌人、谷川電話、戸田響子、小坂井大輔、寺井奈緒美、辻聡之、野口あや子、千種創一、惟任將彥、山川藍が、県内の様々な場所を想いながら作歌したアンソロジー歌集。愛知県文化芸術活動緊急支援金事業/アーティスト等緊急支援事業「AICHI⇆ONLINE」の企画の一環で制作した1冊。






平成美術 うたかたと瓦礫 1989-2019

編集:椹木野衣、京都市京セラ美術館
ブックデザイン:松本弦人
発行:世界思想社
発行日:2021年2月20日
サイズ:26cm、229ページ

平成年間の日本の現代美術を総括する
経済崩壊、大震災、テロ……すべてがうたかたと消え、瓦礫となりうる時代、美術は、個人の作品ではなく、離合集散するアーティストたちの集合的活動になった! 平成を代表する14のグループや集合体の主要作約70点を200枚余の写真でフルカラー掲載。椹木野衣の平成美術論、平成美術史カラー年表(731項目、図版77点)、赤坂真理・立岩真也・片山杜秀の平成論を収載。



柚木沙弥郎のことば

著者:柚木沙弥郎、熱田千鶴
写真:木寺紀雄
発行:グラフィック社
発行日:2021年2月8日
サイズ:19cm、191ページ

いつからはじめたっていいんだよ。僕だって物心ついたのは80歳になってからなんだから。──染色家・柚木沙弥郎
98歳の今も第一線を走り、年々モダンな民藝、染色作品をつくり続ける柚木沙弥郎。柚木を長年取材しつづける編集者・熱田千鶴だからこそ書ける、柚木の思い、信念、ことばを編んだ、柚木初の「ことば」の単行本。





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2021/03/15(月)(artscape編集部)

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カタログ&ブックス | 2021年3月1日号[テーマ:東日本大震災]

テーマに沿って、アートやデザインにまつわる書籍の購買冊数ランキングをartscape編集部が紹介します。今回のテーマは、この3月で発生から10年を迎える「東日本大震災」。「芸術・アート」ジャンルのなかでこのキーワードに関連する、書籍の購買冊数ランキングトップ10をお楽しみください。
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「東日本大震災」関連書籍 購買冊数トップ10

1位:嵐みんなの卒業証書2011−2019 WAKUWAKU SCHOOL OF ARASHI(ARASHI PHOTO REPORT)

編集:ジャニーズ研究会
発行:鹿砦社
発売日:2020年4月25日
サイズ:26cm、159ページ

2020年末の活動休止を控えたARASHI。「日々是気付」をテーマに、東日本大震災が発生した2011年からチャリティーイベントとしてスタートした「ワクワク学校」を、2019年の最終回まで収めた完全版フォトレポート。


2位:風の電話 映画ノベライズ(朝日文庫)

著者:狗飼恭子
発行:朝日新聞出版
発売日:2020年1月7日
サイズ:15cm、228ページ

東日本大震災で家族を失ったハルは、心の傷が癒えないまま広島の伯母のもとで暮らしていた。ある日、伯母が倒れたことをきっかけに、ハルは一人、故郷を目指す旅に出る。「どうして自分だけが生きているのか?」──その答えを探しながら。


3位:Fukushima 50 オフィシャルフォトブック

著者:若松節郎、Fukushima50製作委員会
原作:門田隆将
発行:KADOKAWA
発売日:2020年3月6日
サイズ:26cm、89ページ

東日本大震災が発生、福島原発事故後も現場に残った名もなき作業員たち。岩代太郎による日本映画史に残る映画音楽3曲を収録した豪華特典CD付き! 忘れてはならない男たちの闘いの記録がここに──。



4位:やすらぎの刻〜道〜 第5巻

著者:倉本聰
発行:双葉社
発売日:2020年4月2日
サイズ:19cm、792+16ページ

脚本家の菊村栄は師と仰ぐ人物の遺稿を目にし、失いかけていた「道」執筆の情熱を取り戻す。「道」の中では、東日本大震災の日を境に状況が一変し…。テレビ朝日系ドラマのオリジナル・シナリオ原稿を元にまとめたもの。完結。



5位:時の余白に 正

著者:芥川喜好
発行:みすず書房
発売日:2012年5月1日
サイズ:20cm、279ページ

創作の内実に迫る美術記事を長年にわたって書いてきた練達の記者が、「周縁」から美を見つめ続けた定点観測。新聞連載コラム。2006年春の連載開始から東日本大震災後の2011年秋まで、丹阿弥丹波子による深沈とした銅版画とともに好評を博した珠玉エッセイ66篇。



6位:震美術論(BT BOOKS)

著者:椹木野衣
発行:美術出版社
発売日:2017年9月6日
サイズ:20cm、449ページ

自然災害による破壊と復興、そして反復と忘却を繰り返してきた日本列島という「悪い場所」において、はたして、西欧で生まれ発達した「美術」そのものが成り立つのか──。
東日本大震災をひとつのきっかけに、日本列島という地質学的条件のもとに、「日本列島の美術」をほかでもない足もとから捉え直すことで、「日本・列島・美術」における「震災画」の誕生、そして、そこで「美術」はいかにして可能となるのかを再考する画期的な試み。
〈本書に登場する災害、作家たち〉
リスボン大地震/カント/ヴォルテール/ペストの大流行/御嶽山噴火/関東大震災/三陸大津波/山下文男/飯沼勇義/山内宏泰/伊勢湾台風/赤瀬川原平/東松照明/土砂災害/瓜生島沈没伝説・慶長豊後地震/磯崎新/岡本太郎/安政江戸地震/狩野一信/三陸大津波/山口弥一郎/東南海・三河・昭和南海地震/藤田嗣治/東日本大震災/高山登/笹岡啓子/畠山直哉/村上隆/Chim↑Pom



7位:The Pen

著者:池田学
発行:青幻舎
発売日:2017年2月8日
サイズ:30×31cm、167ページ

1ミリ以下のペン先が1日に生み出す10センチ四方。その20年の軌跡を収めた池田学の画集。著者厳選の100点をはじめ、東日本大震災への想いを込めた大作「誕生」の制作ドキュメントも収録。



8位:日の鳥 1

著者:こうの史代
発行:日本文芸社
発売日:2014年5月1日
サイズ:21cm、129ページ

突然いなくなった妻を捜して旅に出た雄鶏が見た、東日本の風景とは…。東日本大震災の記憶を、ぼおるぺんの優しいタッチで描く。『週刊漫画ゴラク』連載を単行本化。



9位:日の鳥 2

著者:こうの史代
発行:日本文芸社
発売日:2016年5月30日
サイズ:21cm、128ページ

妻を探して、雄鶏の旅は続く。震災を生き延びた樹に、誰も住まぬ民家の窓に、懐かしい面影をただ求める…。震災から5年の東日本の姿を、ぼおるぺんの優しいタッチで描く。『週刊漫画ゴラク』連載に描き下ろしを加え単行本化。



10位:写真で伝える仕事 世界の子どもたちと向き合って

著者:安田菜津紀
発行:日本写真企画
発売日:2017年2月23日
サイズ:21cm、45ページ

ゴミを拾い家計を支える男の子、仮設住宅の暮らしが続く中学生…。世界の貧困・難民問題や東日本大震災を取材するフォトジャーナリストが、自身の仕事について語るとともに、これまでに出会った子どもたちを紹介する。





artscape編集部のランキング解説

あれから10年。2011年3月11日に発生した震災の日の記憶をまだ鮮明に覚えている人も多いでしょう。水戸芸術館での「3.11とアーティスト:10年目の想像」など、3.11とそれからの10年間を振り返る展覧会も開催されているなか、今月はカテゴリ「アート・芸術」にまつわる書籍のなかから「東日本大震災」というキーワードでの販売数ランキングを抽出してみました。
1位は、2020年末をもっての活動休止も記憶に新しいアイドルグループ・嵐による、東日本大震災を契機に東京ドームと京セラドームで毎年開催されるようになったチャリティイベント「嵐のワクワク学校」の軌跡をまとめたフォトブック。嵐のメンバーが教師役となりさまざまなテーマの講義を繰り広げ、東日本大震災だけではなく2016年の熊本地震や平成30年7月豪雨、令和元年房総半島台風などの被災地域に収益金の一部を寄付したそう。アイドルゆえの社会への寄り添い方や責任などについても思いを巡らせてしまう一冊です。
美術評論の分野からは、椹木野衣による『震美術論』が6位に。1995年の阪神・淡路大震災をひとつの契機として書かれた『日本・現代・美術』に登場する「悪い場所」論の再考に始まり、災害の絶えない日本列島における美術と美術史のあり方を、明晰な文体で問い続ける一冊。
『この世界の片隅に』のこうの史代による、震災から少しの時間が経過した東日本の町や自然の風景のスケッチと短い言葉で編まれた『日の鳥』も1・2巻続けてランクイン(8、9位)。震災の生々しい爪痕を残した風景や、復興に向かっていく市街地など津々浦々の様子を主人公の雄鶏の目線で辿っていくうちに、心にほんのりと明かりが灯るような感覚が生まれます。
フォトジャーナリストの安田菜津紀による『写真で伝える仕事 世界の子どもたちと向き合って』(10位)では、津波から生き残った著者の夫の父に「奇跡の一本松」の写真を見せたときに掛けられた「なんでこんなに海の近くに寄ったんだ!」という言葉をはじめ、現地での対話なくしては気づくことのなかった被災者の心の傷や、写真という手段で世間に現状を伝える葛藤や意義に思いを寄せるきっかけになる一冊です。ウガンダ、シリア、ヨルダンなど政情の不安定な地域に生きる子どもの生活をとらえた章のなかには、陸前高田の仮設住宅で暮らす13歳の女の子の姿も。
10年経った現在でも、いまださまざまな影響を残す東日本大震災。この10年間で何が起こり、私たちの生活や心にどのような変化をもたらしたのか。3.11以降も絶えず起こる災害の存在は、この国の機能不全や積み残された問題をそのたびに浮き彫りにしています。今回のランキングをきっかけに、あなたの問いを探してみてください。


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2021/03/01(月)(artscape編集部)

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カタログ&ブックス | 2021年2月15日号[近刊編]

展覧会カタログ、アートやデザインにまつわる近刊書籍をartscape編集部が紹介します。
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分離派建築会100年 建築は芸術か?

編集:大村理恵子、本橋仁
デザイン:西岡勉
発行:朝日新聞社
発行日:2020年10月
サイズ:B5判、276ページ

日本初の建築運動といわれる分離派建築会。東京帝国大学建築学科の学生たちが、作品展などを通じて旧来の様式にとらわれない新しい建築のあり方を世に問いました。のちに大型の都市建築や住宅建築に携わった建築家も多く輩出しています。本展は、会の結成から100年という節目に開催。図面、模型、写真、映像、関連する美術作品といった多彩な視点で彼らの業績を振り返ります。
図録はオールカラー図版で展示作品を丁寧に紹介しつつ、分離派研究会メンバーによるテキストも収録。本展図録は建築・建築史を学ぶすべての人にとって、第一級の貴重な研究資料ともなるでしょう。



拡張するキュレーション 価値を生み出す技術 (集英社新書)

著者:暮沢剛巳
発行:集英社
発行日:2021年1月15日
サイズ:18cm、269ページ

情報を組み換え、新しい価値を創る!
梅棹忠夫の「知的生産技術」
柳宗悦の「創作的蒐集」
岡本太郎の「対極主義」
ハラルド・ゼーマンの「構築されたカオス」
新たな価値をいかに生み出すのか。
「価値」「文脈」「地域」「境界」「事故」「食」「国策」という七つのテーマごとに、現代美術に限らない「知的生産技術」としてのキュレーションの実践を読み解く。



消しゴム石

著者:チェルフィッチュ×金氏徹平
編集:黒澤浩美、中田耕市、池田あゆみ(以上金沢21世紀美術館)、 板橋茉里、大神崇(SHUKYU)
デザイン:前田晃伸、黒木晃(MAEDA DESIGN LLC.)
発行:SHUKYU
発行日:2021年1月20日
サイズ:A4変型、144ページ

人とモノが主従関係ではなく、限りなくフラットな関係性で存在するような世界を演劇によって生み出すことはできるのだろうか?チェルフィッチュ×金氏徹平は、劇場版『消しゴム山』、美術館版『消しゴム森』を通して、それぞれの異なる形式の中で、人とモノと空間と時間の新しい関係性を提示することを試みています。
その『消しゴム山』、『消しゴム森』の戯曲や上演記録、インタビュー、批評などが凝縮された書籍版『消しゴム石』。消しゴムシリーズを読み解く上で鍵となる一冊です。



石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか

著者:石岡瑛子
寄稿:安藤忠雄、小池一子、杉本博司、佐藤卓、朽木ゆり子ほか
クリエイティブディレクション:石岡怜子
アートディレクション:永井裕明
発行:小学館
発行日:2021年1月28日
サイズ:26cm、336ページ

世界初の大規模回顧展の全貌
日本を代表するアートディレクターであり、グラフィックデザインを皮切りに、プロダクトや衣装デザイナーとしても活躍した石岡瑛子の世界で初めてとなる大規模回顧展が2020年11月から東京都現代美術館にて開催されています(~2021年2月14日)。本書は、その展覧会の公式図録で、石岡瑛子の世界を網羅した決定版となる一冊です。



DOMANI・明日展2021 公式カタログ

発行:文化庁
発行日:2021年2月
サイズ:25cm、152ページ

〈主な掲載内容〉
・全アーティストの作品図版に加え、今回のために寄せられたテキストや略歴等資料
・DOMANI展や文化庁の文化芸術支援と、コロナをめぐる世界の動きをまとめた「新型コロナ禍タイムライン 2020」年表
・2020年夏に緊急開催された「DOMANI・明日展 plus online 2020」のドキュメント
・本展企画者の林洋子(文化庁芸術文化調査官)による論考と、現役在外研修員の清水チナツ(インディペンデント・キュレーター/メキシコ・オアハカ)の寄稿





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2021/02/15(月)(artscape編集部)

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須藤健太郎『評伝ジャン・ユスターシュ──映画は人生のように』

発行所:共和国

発行日:2019/04/25

本書『評伝ジャン・ユスターシュ』は2019年4月に刊行された。いまだ謎の多いフランスの映画作家についての──日本語では初となる──モノグラフであり、昨年(2020年)の表象文化論学会賞、渋沢・クローデル賞奨励賞を立て続けに受賞した。末尾の謝辞にある通り、本書は2016年にパリ第三大学に提出された著者の博士論文(Jean Eustache : génétique et fabrique)がもとになっている。その学術的な達成がいかほどのものであるかは、その華々しい受賞歴が示す通りだ(いずれも選評がオンラインで公表されている)。だが、本書はすぐれた学術書であると同時に(あるいはそれ以上に)、ユスターシュの映画を愛する者にとって、あるいは映画一般に関心を寄せる者にとって必携の一冊である。刊行後すでにさまざまな媒体で取り上げられているが、著者とほぼ世代を同じくする人間として、いくぶん個人的な回想も交えつつ本書を紹介することにしたい。

現在、ジャン・ユスターシュ(1938-81)という作家について、いったいどれほどのことが知られているだろうか。約3時間半におよぶユスターシュの長篇『ママと娼婦』(1973)が日本で初めて劇場公開されたのは1996年のことである。その後、2001年には特集上映「ジャン・ユスターシュの時代」がユーロスペースで開かれ、『わるい仲間』『サンタクロースの眼は青い』『ママと娼婦』『ぼくの小さな恋人たち』『不愉快な話』『アリックスの写真』の6作品が上映された。その後、幻の作品『ナンバー・ゼロ』が発見され、2003年の山形国際ドキュメンタリー映画祭で上映されたことは大きな話題となった。その後、わたしの知るかぎり、ユスターシュの映画がまとまって上映される機会はしばらくなかったが、2019年にはふたたびユーロスペースとアンスティチュ・フランセ東京で特集上映が行なわれた。本書『評伝ジャン・ユスターシュ』の刊行計画も、この特集上映と同時進行で進められていたという(第11回表象文化論学会賞「受賞者コメント」より)。

ユスターシュはわずか2本の長篇映画と、数本の中篇映画・ドキュメンタリー作品のみを残して、1981年11月に拳銃自殺した。初長篇『ママと娼婦』は1973年のカンヌ国際映画祭で複数の賞を受賞するなど批評的な成功を収めたが、つづく『ぼくの小さな恋人たち』(1974)は公開当時にかならずしも好評をもって迎え入れられたわけではなかった。何より、後述する複雑な権利問題により、ユスターシュの死後に生まれた世代がその作品を実見できる機会はきわめて乏しかった。東京都内にかぎって言えば、2001年の特集上映以来、前述の2本の長篇が上映される機会はままあったため、その限られた機会に劇場に足を運んだ者も多かったはずである。本書はまず、そうしたユスターシュの映画に魅了された観客にとって待望の一冊として現われた。

本書は、ユスターシュの作品について、現在アクセスしうるあらゆる資料と、関係者への膨大なインタビューをもとに書かれた、きわめてスリリングな一書である。ユスターシュという作家をめぐる今日の評価は揺るぎないものであるが、先に挙げたような制約もあって、実際にその作品に接するには大きなハードルがある。それもあってか、42歳で亡くなったこの映画作家に捧げられた書物は、仏語や英語でもけっして多いとは言えない。まして、これだけ多くの関係者にインタビューを行ない、各作品の制作背景をはじめとする事実を明らかにした書物は、おそらく今後も存在しえないだろう(なぜなら本書の調査・執筆時においてさえ、すでに鬼籍に入っていた者が少なくなかったのだから)。

さらに言えば、読み物としても非常に魅力的な本書は、ユスターシュの映画にふれたことのない読者をも、大いに興奮させることだろう。先述したように、ユスターシュの作品は、日本で一時期発売されていた──現在では入手困難な──DVD-BOXを除けば、いっさいソフトになっていない。しかしその一方で、現在ではそのほとんどが英語字幕つきでYouTubeにアップされている。こうした奇妙な状況の中心にいるのが、現在ユスターシュの作品の権利をもつ次男ボリス・ユスターシュである。本書では、この次男のみならず、『ナンバー・ゼロ』の被写体であるユスターシュの祖母オデット・ロベール(第二章)、『ママと娼婦』の登場人物マリーのモデルであり、初号試写の直後にみずから命を絶ったカトリーヌ・ガルニエ(第七章)、『不愉快な話』をはじめとする数作品に出演するなど、公私ともにユスターシュの重要な友人であったジャン=ノエル・ピック(第八章)など、この映画作家の周囲にいた人物たちに次々と輪郭が与えられる。

本書は「ジャン・ユスターシュの伝記」ではなく、あくまでその「作品の伝記」であると著者は言う(12頁)。ユスターシュは「カメラが回れば、映画はひとりでにできあがる」として、映画における「作者」の概念を否定した。これはこれでひとつの美学であろうが、しかし少なくとも文章の場合、そこでは一定のオートマティスムに基づく映画よりもはるかに「作者」の介入が必要とされることは言うまでもない。この「作品の伝記」という困難な試みを可能にしているのは、ほかでもなく、この著者の堅実かつ魅力的なエクリチュールである。

★──このあたりの詳しい事情については、須藤健太郎×廣瀬純の対話「ジャン・ユスターシュとは誰か? 人生は映画のように[前篇]」(『Digging Deep|共和国のウェブマガジン』2019年11月12日公開)を参照のこと。

2021/02/08(月)(星野太)

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