artscapeレビュー

神村恵『次の衝突』

2009年11月1日号

会期:2009/10/16~2009/10/17

現代美術製作所[東京都]

身体の内側に向けた新たなアプローチは、手塚夏子との交流を通じて得たものなのだろうか。ただ立っているだけでも痙攣的な運動が身体のあちこちで明滅して目が離せない。意志をもって動く身体のなかに顔を覗かせる、勝手に動いてしまう身体。白いギャラリースペースの隅。扇風機がある。それだけの空間のなかで神村が見せるのは、純粋にダンス的な瞬間としかいいようのないなにか。枠を設定し、その裏をかく。「枠」などと言ってみたが、見ればすぐに感じられるほどわかりやすくはない。それは「意図」と言い換えてもいいかもしれない。時間が進むと、見る者の内に神村の動作が堆積してゆく。そこには、この「枠」「意図」と、それらからの逸脱の軌跡が山と積まれる。シンプルな作業ではある。ただし、あらゆるものが意図となりえ、あらゆる次の時間はそれをかいくぐる「裏」となりうる。その無数の可能性を丹念に探りつかみ取ってゆく頑固な知性が神村の魅力で、例えばそれは、終幕頃に突如椅子ごと舞台空間にじわじわ侵入し、すっと立ち上がると、お喋りを始めてしまう岸井大輔の起用にも感じる魅力である。会場では、小林耕平と福留麻里と共作した映像作品が上映されていた。そこでも枠の無数の生成と崩壊があちこちで起きていて、スリリングだった。

2009/10/16(金)(木村覚)

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