artscapeレビュー

Chim↑Pom展「REAL TIMES」

2011年06月15日号

会期:2011/05/20~2011/05/25

無人島プロダクション[東京都]

渋谷駅にある岡本太郎の巨大壁画《明日の神話》に絵が追加されたというニュースを見たとき、犯人はなんて礼儀正しい人(たち)だろうと思った。壁画本体を傷つけず空白部分にハメ込んだ手口といい、福島原発事故をテーマにしたタイムリーかつ社会批評的な画題といい、色彩や形態を壁画に同調させたそれなりの技術といい、きわめて計画的でしかも現代アートの作法にのっとったインターヴェンションだなあと感心したものだ。だから犯人がChim↑Pomだと聞いたとき、少し意外だったが、それ以上に納得がいった。今回はそのビデオ映像をはじめ、被災地で起こしたアクションを紹介。陸に打ち上げられた船やガレキの山を背景に、メンバーと地元の青年10人くらいがスクラムを組んで、「がんばろー!」「おー!」「まけないぞ!」「おー!」と気合いを100連発入れたり、白い防護服を着た男が白い旗にスプレーで円を描いて、日の丸のわりに円が小さいなと思ったらそのまわりに3個の扇型を描いて核のマークになり、その旗を立ててカメラが退くと背景に建屋の吹き飛ばされた福島原発が見えたり……。とまあ社会活動とアートと悪ふざけの境界線上を全力で突っ走る、そのバランス感覚とスピード感は見事というほかない。展示も「リアルタイム」でやりたかったのだろう、会期は6日間のみ、しかも入場料500円を徴収し、その一部を義援金として寄付するという。

2011/05/23(月)(村田真)

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