artscapeレビュー

IPP#0「風景の逆照射」

2012年02月15日号

会期:2012/01/06~2012/01/21

京都精華大学ギャラリーフロール[京都府]

私たちは、日頃何気なく「風景」という言葉を使う。この展覧会は、そのような、すでに浸透し定着してしまっている「風景」の概念、人間主体のいわゆる西洋近代的な考え方でこれまで私たちが眺めてきた「風景」についてあらためて考え、「風景」と人間の関係性を問いなおそうというものであった。出品者で、企画者でもある林ケイタと安喜万佐子の、「見る」ということについての意見交換が発端で開催に運んだという今展には、ほかに、柏原えつとむ、木下長宏、杉浦圭祐、坪見博之、森川穣、濱田陽、(故)山中信夫、RADという人々が参加していた。美術、芸術思想史、俳句、脳科学、映像、宗教、建築と、じつにさまざまなフィールドで活動する専門家だ。このメンバー全員が作品を発表していたのだが、見事だったのは個々の作品が単独で展示されているというのではなく、それぞれが他の出品者の作品との連関を持ちながら成立し、会場全体をつくっていたこと。各々の作品も、それらのイメージが緩やかに他とオーバーラップしていく構成も美しい。本展が目指す大きなテーマや「風景」の問いに丁寧に取り組み、話し合いや考察を重ねてきたのだろうメンバーの姿勢が裏打ちとしてうかがえるものでもあった。二階のフロアの壁面には、木下長宏氏の「風景」に関するテキストがプロジェクターで投影されていたのだが、これも含め、素晴らしい展覧会だった。

2012/01/21(土)(酒井千穂)

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