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artscapeレビュー

高橋堅《Brass Clinic Private Viewing》

2009年11月15日号

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[千葉県]

竣工:2009年

クリニックの内装。入ってみておそらく誰もが驚くだろう。多くの面が、サンダー処理された真鍮板で覆われており、クリニック全体が、白と黄金を基調として構成されている。真鍮には各種病原体の殺菌力があり、あらゆる環境表面に真鍮板を用いた世界で初めての抗菌クリニックだという。真鍮へのこだわりは徹底しており、ドアノブから幅木まで、あらゆる部分に真鍮が用いられ、金物等で現われそうな銀色は一切見えない。建築において金色は、金閣寺や中尊寺金色堂の例はあるが、特に現代建築ではほとんど御法度というくらい用いられない。しかしそれを高橋堅氏はあえて空間の中核に据える。エントランスの受付カウンターの荷物置きの窪み、空調の吹き出し口には角度が付けられており、これらいくつかの斜めの面の存在によって、白と黄金でできた空間の単調さは回避され、リズムが付けられる。不思議なことに、空間からはどことなく「抽象的な和風」も感じられた。これは通路がやや広めであったりと、ゆったりとした雰囲気があったことも影響しているのではないだろうか。もしかしたらこの空間は、建築を知っている人ほど戸惑いを感じるかもしれない。というのもここでの空間体験は、これまで自分が知っている既存の空間のカテゴリーに入らない新しいカテゴリーの体験であると感じたからである。咀嚼に時間がかかる。しかしそれこそが、新しい空間の誕生を意味するものである。

2009/10/24(土)(松田達)

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