artscapeレビュー

高須健市 surface

2010年03月01日号

会期:2010/02/02~2010/02/14

neutron-kyoto[京都府]

壁一面がヴィトンのモノグラムで埋め尽くされ、床には大量の紙くず。よく見ると、壁に貼りつけられていたモノグラムは、いろんな紙を切り抜いたもので、マンガや広告に印刷された図柄がそのまま残されている。床にばら撒かれていたのは、それらの残骸だった。素材はすべて街なかで拾い集めた古新聞や古雑誌、広告チラシなど。原材料費は一切かけられていないというところに、ラグジュアリーブランドに代表される消費経済へのアンチテーゼが容易に読み取れるが、大量の紙くずが醸し出す、ある種の貧乏臭さはどうにも否めない。地域通貨にしろ、DIY的な実践活動にしろ、既存の経済体系にたいする対抗的なモデルにとって重要なのは、貧乏臭さに開き直ることではなく、多少の無理をしてでも別の豊かなイメージを打ち出すところにあるのではないだろうか。政治的実践ならともかく、アートのそれで勝負するなら、なにをかいわんやである。

2010/02/09(火)(福住廉)

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