artscapeレビュー
池田龍雄 アヴァンギャルドの軌跡
2010年08月01日号
会期:2010/06/19~2010/07/19
山梨県立美術館[山梨県]
美術家・池田龍雄の本格的な回顧展。戦後間もない時期からアヴァンギャルドとして制作活動を開始し、ルポルタージュ絵画や「制作者懇談会」、概念芸術への接近以後の《梵天の塔》《BRAHMAN》など、池田が歩んできたアヴァンギャルドの軌跡を一望できる展観となっていた。とりわけ見応えがあったのは、朱色を多用した油彩画や水彩を丁寧に塗り重ねたペン画など、細やかな手わざを駆使した初期の作品で、アヴァンギャルドの精神が堅実な技術と明確な絵画意識に支えられていたことが明らかにされていた。その決して短くない軌跡に現われていたのは、芸術で社会を変革するという外向性が次第にみずからの内奥と宇宙空間を連続してとらえようとする内向性へと反転していく過程。それは、いってみれば戦後美術の変転の様子と重なっているのであり、その意味で池田の制作活動には戦後美術の歴史が凝縮されているように思えた。今後、川崎市岡本太郎美術館、福岡県立美術館に巡回予定。
2010/07/18(日)(福住廉)
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