artscapeレビュー

福住廉のレビュー/プレビュー

石内都 展 ひろしま/ヨコスカ

会期:11/15~1/11

目黒区美術館[東京都]

写真家・石内都の大々的な回顧展。70年代の横須賀から現在の広島にいたるまで、石内の写真の変遷を逐一追った堅実な展示だった。いずれも「痕跡」を示した写真だが、よく見ていくとその痕跡の中に閉じ込められた時間を強く感じさせる写真であることがわかる。広島の被爆者たちが残した衣服を写したカラー写真は、白黒でしかイメージできないわたしたちの原爆イメージに色を付け加えているが、そうすることで原爆が現在と分かちがたく結ばれていることを物語っていたようだ。

2008/12/23(火)(福住廉)

沖縄・プリズム 1872-2008

会期:10/31~12/21

東京国立近代美術館[東京都]

沖縄をテーマにした展覧会。沖縄出身者と本土から沖縄に向かったアーティスト34名による作品を見せている。全体的にモノクロのイメージをあえて前面化させることによって、いかにも南国の原色でイメージされる沖縄とは異なる、もうひとつの沖縄像を提案していたようだ。けれども、それが「プリズム」といえるほど乱反射しているかどうかは、微妙なところだ。

2008/12/21(日)(福住廉)

吉岡徳仁ディレクション「セカンド・ネイチャー」展

会期:10月17日~1月18日

21_21 DESIGN SIGHT[東京都]

デザイナーの吉岡徳仁によってディレクションされた企画展。全体的に白く透明感のある空間に仕立て上げたいようで、その無邪気な白さが妙に気恥ずかしい。天井から無数のビニールコードを吊り下げた《CLOUDS》は、素材は異なるものの、大巻伸嗣の《Liminal Air》とそっくりだったが、大巻に比べて圧倒的にボリュームに欠けており、その密度の薄さが貧乏臭い。

2008/12/14(日)(福住廉)

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氾濫するイメージ──反芸術以後の印刷メディアと美術 1960’sー1970’s

会期:11月5日~1月25日

うらわ美術館[埼玉県]

60年代から70年代の印刷メディアにおける視覚的なイメージを紹介する展覧会。赤瀬川原平、木村恒久、中村宏、つげ義春、タイガー立石、宇野亜喜良、粟津潔、横尾忠則による作品、じつに500点あまりが展示された。政治的・社会的なメッセージが原色によって織り込まれたポスターや表紙、挿絵、絵画、コラージュ写真、漫画などを見ていくと、時代の匂いにむせ返ると同時に、印刷メディア自体が困難を迎えている今となっては、その時代への羨望の念を抱かずにいられない。これからの時代はほんとうに貧しくなってゆくばかりで、気が滅入る。

2008/12/12(金)(福住廉)

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フェルメール展 光の天才画家とデルフトの巨匠たち

会期:8月2日~12月14日

東京都美術館[東京都]

「一生に一度」というコピーは使い古されている気がしないでもないが、この手の展覧会には必ずといっていいほど、こうした強迫的な宣伝文がつきものだ。後学も兼ねて1時間待ちの列に並び、やっとのことでフェルメールと対面。しかし、強い印象を覚えたのは、むしろヘラルト・ハウクヘーストによる《デルフト新教会の回廊》。三次元を二次元に無理やり落とし込むためのさまざまな工夫が解説されるとともに、現在の教会内部を写真で紹介するなど、展示手法がじつに丁寧で、わかりやすい。

2008/12/10(水)(福住廉)