2017年08月01日号
次回9月1日更新予定

artscapeレビュー

小吹隆文のレビュー/プレビュー

プレビュー:よみがえれ! シーボルトの日本博物館

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会期:2017/08/10~2017/10/10

国立民族学博物館[大阪府]

江戸時代後期に来日した、オランダ商館付のドイツ人医師フィリップ・フランツ・フォン・シーボルト(1796~1866)。彼は禁制の地図を持ち出そうとした「シーボルト事件」で有名だが、当時の日本の自然や文化にまつわる膨大な資料を残したことでも知られている。本展はそのコレクションのうち、ミュンヘン五大陸博物館とブランデンシュタイン=ツェッペリン家(シーボルトの末裔にあたる)が所蔵する資料を通して、彼が建設を夢見ていた「日本博物館」の再現を試みるものだ。シーボルトの日本コレクションといえば、1996年に国立民族学博物館で行なわれた「シーボルト父子のみた日本」が印象深いが、同展はオランダの博物館(ライデンだったかな?)の所蔵品だったはず。約20年ぶりの大規模なシーボルト展、しかもドイツのコレクションがまとまって来日するとあって、筆者の気持ちは早くも高ぶっている。

2017/07/20(木)(小吹隆文)

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プレビュー:京都銭湯芸術の祭り MOMOTARO 二〇一七

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会期:2017/08/13~2017/08/20

梅湯、玉の湯、錦湯、平安湯[京都府]

京都市内の複数の銭湯を会場に、2014年と15年に開催された「京都銭湯芸術祭」。銭湯に美術作品を設置するという異種格闘技戦的な状態をつくり出すことにより、美術とはどういうものか、銭湯とはどういう場所かという根本的な命題に取り組んだ。2年ぶり3回目となる今回は、タイトルを若干改めたほか、パフォーマンス公演「MOMOTARO」を主軸に据えたイベントへとリニューアルしている。「MOMOTARO」は、イラクへ派遣されたスコットランド人兵士たちのインタビューを元に製作されたナショナル・シアター・オブ・スコットランドの演劇作品を、日本の文脈に沿ってアレンジしたもの。会期中に同作の公演が2度行なわれ、ほかには、インスタレーション、美術作品の展示、神輿巡行、自転車ツアー、盆踊りアワー、流しそうめん、ワークショップなどが行なわれる。銭湯とは社会での肩書や地位を脱ぎ捨てて、人間同士の裸の付き合いが行なわれる場所。そこで芸術祭を行なうことにより、芸術表現の新たな可能性を引き出すことがこのイベントの目的であろう。昨年は行なわれなかったのでこのまま自然消滅かと思っていたが、見事な復活を遂げて嬉しい限りだ。

2017/07/20(木)(小吹隆文)

プレビュー:東アジア文化都市2017京都 アジア回廊 現代美術展

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会期:2017/08/19~2017/10/15

二条城、京都芸術センター[京都府]

日中韓の3カ国から選ばれた3都市が交流し、1年間を通じてさまざまな文化芸術プログラムを行なう「東アジア文化都市」。今年は日本の京都市、中国の長沙市、韓国の大邱広域市が選ばれた。「現代美術展」は、京都市のコア期間事業「アジア回廊」のメインプログラムである。会場は世界遺産・元離宮二条城と京都芸術センターの2カ所、建畠晢がアーティスティック・ディレクターを務め、参加アーティストは、西京人、草間彌生、中原浩大、やなぎみわ、キムスージャ、ヒョンギョン、蔡國強、ヤン・フードンなど25組である。昨年の日本会場だった奈良市では、東大寺、春日大社、薬師寺、唐招提寺などの有名社寺を舞台に、大規模な現代美術展が繰り広げられた。今回は2会場と小ぶりな規模に落ち着いたが、その分濃密な展示が行なわれることを期待しよう。両会場は地下鉄で行き来でき、市内中心部のギャラリーや観光名所(平安神宮、南禅寺、知恩院など)にも地下鉄1本でアクセスできる。遠方の方は、京都観光も兼ねて出かけるのが良いと思う。

2017/07/20(木)(小吹隆文)

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源信 地獄・極楽への扉

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会期:2017/07/15~2017/09/03

奈良国立博物館[奈良県]

平安時代の僧・恵心僧都源信(942~1017)は、死後に阿弥陀如来の来迎を受けて極楽浄土に生まれることを願う「浄土信仰」を広めた人物であり、誰にでも分かりやすく地獄と極楽の姿を説いた『往生要集』を著したことでも知られている。本展では、源信の足跡をたどりつつ、地獄絵、六道絵、来迎図の名品によって、仏教の死後の世界観を体感するものだ。前後期で作品の多くが入れ替わるが、筆者が鑑賞した前期では、聖衆来迎寺の「六道絵」15幅は圧倒的な存在感があった。また来迎図、極楽図では、當麻寺の「當麻曼陀羅(貞享本)」と「當麻寺縁起 下巻」、知恩院の「阿弥陀聖衆来迎図(早来迎)」がおすすめだ。ただ、これらの作品は細密描写が多く、肉眼で細部まで見切るのは至難の業。しかも平安や鎌倉期の作品にはイメージがかすれているものも多い。これから出かける予定の方にはオペラグラスか単眼鏡の持参をおすすめする。それにしても本展で見られる地獄と極楽のイメージは現在でも十分通用する。逆に言えば我々日本人の死後の世界のイメージは、源信が活躍した時代に形成されたのだ。その事実を知ったことが、筆者にとって最大の収穫だった。

2017/07/14(金)(小吹隆文)

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バーンスタイン シアターピース「ミサ」

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会期:2017/07/14~2017/07/15

フェスティバルホール[大阪府]

20世紀後半を代表する指揮者であり作曲家のレナード・バーンスタインが、1971年に発表した舞台作品「ミサ」。同作は、オーケストラ、歌手、混声合唱、児童合唱、ロックバンド、ブルースバンド、ダンサーなど総勢約200人が出演する大規模なもので、台本と歌詞はローマ・カトリックの「ミサ」典礼文に、スティーブ・シュウォーツとバーンスタインがテキストを付け加えている。作品のテーマは、宗教が衰退し不安と混沌が渦巻く社会のなかで、人は何に救いを求めるのか。バーンスタインはユダヤ系アメリカ人だが、作品が発表された当時のアメリカは、ベトナム戦争、公民権運動、カウンターカルチャー、要人の暗殺(ケネディ大統領、キング牧師、マルコムXなど)などにより混迷の極みにあった。同作がそうした時代背景を元につくられたのは間違いない。また、「ミサ」が日本で上演されるのは23年ぶりだが、主催者の脳裏には同作と現代の不安な国際情勢を重ね合わせる意図があったのではないか。舞台は2幕で構成されており、聖と俗が入り混じながら進行する。フィナーレは清浄かつ壮麗な合唱で、心の奥に突き刺さるような感動を覚えた。この大作を見事にさばき、素晴らしい舞台を作り上げた井上道義(総監督・指揮・演出)をはじめとするメンバーに敬意を表したい。なお、同作には美術家、倉重光則の作品が重要な場面で使用されており、筆者は彼の計らいで公演前日の通し稽古を拝見させていただいた。深く感謝する。

2017/07/13(木)(小吹隆文)

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小吹隆文

1964年生まれ。美術ライター。情報誌の編集部勤務を経て、2005年より関西を拠点にフリーランスで活動。主に雑誌、新聞、ウェブで原稿を執筆し...

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