2017年06月15日号
次回7月3日更新予定

artscapeレビュー

小吹隆文のレビュー/プレビュー

プレビュー:田嶋悦子展 Records of Clay and Glass

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会期:2017/06/10~2017/07/30

西宮市大谷記念美術館[兵庫県]

陶とガラスにより生命感に満ちた造形をつくり出す田嶋悦子。1980年代は、兵庫県立近代美術館の「アート・ナウ」やギャラリー白で行なわれた「YES ART」など、当時の関西現代美術界における重要展で、カラフルかつ巨大な陶オブジェを発表していた。しかし1990年代以降は、装飾性を削いだミニマルな作風へと移行、やがて陶とガラスを組み合わせた独自の表現にたどり着いた。筆者は、いまは無き大阪の番画廊を中心に彼女の作品をコンスタントに見てきたが、美術館での鑑賞経験は乏しい。広大な展示室で田嶋がどのような展示を見せてくれるのか、いまから楽しみだ。なお本展では、陶とガラスを組み合わせた代表的なシリーズ《Cornucopia》のほか、1980年代から新作までのインスタレーションを中心とした15点が出展される予定だ。

2017/05/20(土)(小吹隆文)

プレビュー:アンキャッチャブル・ストーリー

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会期:2017/06/11~2017/07/17

瑞雲庵[京都府]

路上で見つけた拾得物を丁寧に配置し、言葉と組み合わせるなどした作品で知られる牛島光太郎、私小説的な風景画(しかし本当に自身が体験したものかは謎)を描く田中秀介、ふと出会った「わからない」言葉やイメージから、ドローイング、写真、旅、リサーチ、パフォーマンスを展開する阿児つばさの3人展。企画者はキュレーター/アートコーディネーターの武本彩子。現代は無数の発言、発信、ストーリーが世の中に溢れているが、SNSの炎上のように、発信する側も受け取る側も言葉を安直に扱い、無残にもてあそぶ傾向が広まっている。「わからない」ものを簡単に「わかる」ようにしない彼らの作品を通して、いま、われわれが取るべき態度について再考しようというのが本展の趣旨である。シリアスなテーマ設定だが、3人の作家は企画者の意図ですら、するりとかわしてしまうかもしれない。真面目に、でも肩をこわばらせずに彼らのメッセージを受け止めたい。

2017/05/20(土)(小吹隆文)

ベルギー奇想の系譜展 ボスからマグリット、ヤン・ファーブルまで

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会期:2017/05/20~2017/07/09

兵庫県立美術館[兵庫県]

15世紀後半から16世紀初頭に活躍したヒエロニムス・ボスから、現代のヤン・ファーブルまで、約500年間にわたり脈々と受け継がれてきたベルギーの奇想画の系譜をたどる展覧会。第1章では、ボス、ブリューゲル(父)、ルーベンスなど主に16世紀の作品が登場し、第2章では、ロップス、クノップフ、スピリアールト、アンソールなど、19世紀末から20世紀初頭の象徴主義を中心とした作家が並んでいる。そして第3章はデルヴォーやマグリットなどのシュルレアリスムから、ブロータールス、パナマレンコ、ヤン・ファーブルなど現代の作品までが。ルーベンスを奇想画に入れるのか?と思ったし、現代作家は何でもありな感じがしないでもないが、ベルギーの美術に一貫した流れがあるのは間違いない。奇想画というのは洋の東西を問わずどこの国でもあるものだが、担当学芸員によると、ベルギーはその傾向が抜きん出ているという。理由を訊ねたところ「ベルギーは19世紀にやっと独立国になったが、それまでの過程で何度も支配者が変わり、戦争が起こるなど複雑な歴史を抱えている。その影響が芸術表現に現われているのではないか」とのこと。あるいは、英仏独という大国に挟まれ、各国の文化が流入しやすい地理的特性が、奇想画の系譜を生み出したのかもしれない。ベルギー名物といえばビールとチョコレートだが、美術史においても独自の存在感を示していたのだなと、改めて思った。

2017/05/19(金)(小吹隆文)

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むらたちひろ internal works / 水面にしみる舟底

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会期:2017/05/16~2017/05/28

ギャラリー揺[京都府]

身近な風景を撮影した画像のネガを、インクジェット捺染でプリントした染色作品。エッジがぼやけた画像が、意識の底に沈殿した記憶を連想させる。作品はダブルイメージになっており、最初は布の表と裏からプリントしているのかと思った。実際は、プリントしていない面を表側にして、部分的に水をかけているそうだ。水の影響で裏面にプリントされた像が滲みながら浮かび上がり、白昼夢のような不思議な光景が出現する。作家にとってこれらのイメージは、「確かにあるけれど触れることができない存在(=記憶の断片や肉体を失った後の人)」や「他者の喜びや悲しみ(=完全には分かち合えない感覚)」に通じるとのこと。染色という物理的な現象を用いて、人間の繊細極まりない感覚を具現化した手腕に、静かな感動を覚えた。

2017/05/17(水)(小吹隆文)

舟田亜耶子展 Catch the pie in the sky

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会期:2017/05/13~2017/06/03

CAS[大阪府]

華やかなプリント柄のワンピースや、カラフルなハイヒールを着用した女性たちを、ファッション写真さながらのポーズで撮影した写真作品。でも、何かがおかしい。服と靴が舞台の書き割りのように平板なのだ。じつはこれらは、ファッション雑誌に掲載された服や靴をトレースした絵を元に拡大プリントしたパネルである。なるほどこの方法なら、どんな服でも着せ替え人形のように身に着けられる。憧れのファッションブランドも思いのままだ。フェイクだけど……。舟田の作品は、消費の欲望を「絵に描いた餅」として提示し、ブランド信仰を軽やかに皮肉っているところが面白い。そういえばずいぶん昔に、本作と似たエピソードを雑誌かテレビで見たことがある。とある女子高生が体育館シューズにサインペンでシャネルのロゴマークを手描きして履いていたのだ。この行為をアートに昇華すると本展になるということか。

2017/05/15(月)(小吹隆文)

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小吹隆文

1964年生まれ。美術ライター。情報誌の編集部勤務を経て、2005年より関西を拠点にフリーランスで活動。主に雑誌、新聞、ウェブで原稿を執筆し...

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