2018年06月15日号
次回7月2日更新予定

artscapeレビュー

2015年09月01日号のレビュー/プレビュー

三田村陽「hiroshima element」

会期:2015/07/21~2015/08/08

The Third Gallery[大阪府]

関西在住で、広島とは縁もゆかりもない三田村陽。彼は約10年間にわたり月に一度広島を訪れて、スナップ写真を撮影し続けた。その作品をまとめた写真集『hiroshima element』の発行を記念して開催されたのが本展だ。広島は原爆と共に語られることが多いが、三田村は既成概念を避け、あえて白紙の状態から広島と向き合った。もちろん原爆にまつわる情景を撮った作品もあるが、あくまでも一モチーフに過ぎない。だとすれば、「なぜ広島なのか」との問いが脳裏をよぎるが、三田村は「むしろ自分もそれを知りたいのです」と言わんばかりに「わからなさ」を隠そうとしないのだ。むしろ戸惑いや問いかけの連続こそが彼の作品の本質であり、被写体と真摯に向き合う姿勢の積み重ねこそが作品の魅力なのだろう。「なぜ広島なのか」と思った人は、その問いかけこそ自分が既成概念にとらわれている証だと気付かされるに違いない。

2015/07/21(火)(小吹隆文)

他人の時間 TIME OF OTHERS

会期:2015/07/25~2015/09/23

国立国際美術館[大阪府]

日本、シンガポール、オーストラリアの美術館等が共同企画した国際企画展。アジア・オセアニア地域のアーティストを知る機会はまだまだ少なく、20作家の仕事を見られたこと自体に意義を感じた。今後関西でも同様の機会が増えることを期待している。作品は多様だったが、それぞれの国の歴史や社会問題に触れた作品が多い。現代アートと社会の影響関係でいえば、アジア・オセアニア地域のほうが日本よりも密接なのかもしれない。個人的に特に印象深かったのは、キリ・ダレナ、ホー・ツーニェン、サレ・フセイン、アン・ミー・レー。なかでも、実在したスパイの数奇な運命を描いたホー・ツーニェンの映像作品《名のない人》には大いに引き込まれた。

2015/07/24(金)(小吹隆文)

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ヴォルフガング・ティルマンス Your Body is Yours

会期:2015/07/25~2015/09/23

国立国際美術館[大阪府]

日本では11年ぶりの大規模個展、会場は大阪オンリー、そして展示プランも作家自身がデザインするとあって、開催前から大きな話題となっていた本展。筆者は約1年前に同じ会場で行なわれたアンドレアス・グルスキーの個展と対比しながら鑑賞したが、グルスキーが強固・厳格・冷徹であるのに対して、ティルマンスはその逆であるような印象を受けた。もちろんティルマンスも妥協のない制作を行なう作家に違いない。しかし、どれだけ厳格なプランに基づいた作品であっても、繊細で柔軟でしなやかで、目前に現われた事象を一人称で受け止めるような作家性が感じられたのである。これは筆者の偏見かもしれないが、ドイツの写真といえば、ザンダーにせよ、ベッヒャー派にせよ、緻密なコンセプトに基づく厳格な作風が持ち味である。そうした土壌からティルマンスのような表現が生まれたことに興味をそそられる。

2015/07/24(金)(小吹隆文)

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堂島リバービエンナーレ2015 Take Me To The River

会期:2015/07/25~2015/08/30

堂島リバーフォーラム[大阪府]

大阪市の堂島リバーフォーラムで隔年開催される同展。4度目となる今回は、英国からトム・トレバーをアーティスティック・ディレクターに招き、15組のアーティストの展示を行なった。展覧会タイトルの「テイク・ミー・トゥー・ザ・リバー」は、会場が堂島川に面していること、鴨長明が『方丈記』で記した「行く川のながれは絶えずして~」、ギリシャの哲学者ヘラクレイトスの「万物流転」などにちなんでいるが、特に重要なのは、スペイン出身の社会学者マニュエル・カステルが著書『ネットワーク社会の出現』で指摘した「流れの空間性」である。この説によると、グローバル化した社会では従来の地縁的なセルフ(自我)が衰退し、流動的なネットワークに依拠したセルフが現われるとのこと。池田亮司の巨大な映像・音響作品や、自らの家を金融商品化するフェルメール&エイルマンスなどは、まさに「ネットワークに依拠したセルフ」を具現化したかのようだった。一方、関西を拠点に活動するアーティスト集団プレイや、下道基行、島袋道浩の作品は「旅」がキーワードになっており、牧歌的な詩情が強く感じられる。このようにいくつもの「ザ・リバー」を提示した本展だが、読解力を要求する作品が多いので、現代美術ビギナーにはややハードルが高かったかもしれない。しかしこの機会にそうした作品に好感を持つ人が少しでも増えてくれればと思う。また本展では、過去3回と比べて建物のバックヤードを大胆に活用していた。普段は入れないエリアを探検する感覚が味わえたのも楽しかった。

2015/07/24(金)(小吹隆文)

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田中愛子 PAINTING Solo Exhibition

会期:2015/07/25~2015/08/21

THE TERMINAL KYOTO[京都府]

花や植物をモチーフにした半抽象画を制作する田中愛子。彼女のテーマは「絵画のここちよさ」を表現すること。モチーフは線と色彩に純化され、重なり合い響き合うことで不規則な揺らぎを放ち、「絵画のここちよさ」へと繋がっていく。田中は昨年に美大の大学院を修了したばかりの若手で、個展も3度しか経験していないが、今回大きなチャレンジを行なった。京都の繁華街・四条烏丸に程近い昭和7年築の京町家で大規模な個展を行なったのだ。作品数は絵画とドローイング合わせて18点。うち1点は約2メートル×約4メートルの大作で、他にも長辺2メートル超が1点、同1メートル超が2点あり、広大な屋敷の土間、床の間、板間に飾られていた。重厚な京町家に負けない作品を揃えてきたのは敢闘賞もので、今後の彼女の活躍が大いに期待される。

2015/07/28(火)(小吹隆文)

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