artscapeレビュー

2009年03月01日号のレビュー/プレビュー

おいッ!パーティやんぞ!

会期:2009/02/06

六本木・buLLEt's[東京都]

ぼくはこの分野の状況を評する知識も経験も乏しい。けれども、あまりに面白かったのでメモしておきたいのだ。近年、J-COREなどと呼ばれる音楽の一傾向がある。アニソンやJ-POPを大量に混入させたハッピーハードコアな(ナードコアに通じる)テクノ。日本人的で「同人音楽」的な音楽(DJテクノウチほか『読む音楽』を参照した)。と書いてみても、まだ自分のなかでよく咀嚼できていないのだけれど、オタク的、テクノ的、ハウス的な要素が混在する(ただしそこにアートは含まれない)様が、ともかく痛快だったのだ。クラブイベントなのでDJプレイとLIVEと称するパフォーマティヴな演奏が交替で続く。神戸から来たtofubeatsはWIRE08に出演したことで名の知れた高校生DJ。Perfumeをポップに破壊したサウンドに、フロアは機敏に反応する(9.5割が男子、その5割は眼鏡)。DJテクノウチのプレイが機材のトラブルで5分と聴けなかったのは残念。CDRやパジャマパーティーズの真摯に自分を否定したり肯定したりするパフォーマンスはなかなか感動的だった。オタクのオタク性は自分のなかの「好き」を大事にするところにある。高等なアートの自己批判性より、シャイで率直な彼らの振る舞いこそ、今後いろいろなものを繋ぎ束ねてゆく力となるのではないか、と思わされた。六本木buLLEt'sという会場も面白くて、お金を払うと客は入口で靴を脱ぎ赤いカーペットの上で踊るのだった。友達の家に居るようなコージーな雰囲気がイベントのあり方とぴったりあっていた。

2009/02/06(金)(木村覚)

1970年大阪万博の軌跡

会期:2009/01/22~2009/02/08

国立科学博物館[東京都]

大阪万博を回顧する展覧会。資料やデータを網羅したほか、ミニチュア模型や公式ユニフォーム、太陽の塔の内部のレプリカ、当時の記録映画などなど、盛りだくさんの内容で楽しめた。ただし、最後の最後で映画『二〇世紀少年』の宣伝コーナーが組み込まれていたことに興醒めさせられた。万博を契機として消費社会に突入して行った日本社会が、今もなお広告や宣伝の論理に支配されていることをこれほどまであからさまに喧伝されると、恥ずかしくてしょうがない。開催期間が短すぎるのももったいない。

2009/02/07(土)(福住廉)

風間サチコ 昭和残像伝

会期:2009/02/04~2009/03/14

無人島プロダクション[東京都]

版画家・風間サチコの新作展。炭鉱をモチーフにした版画作品やオブジェなどを発表した。「巣鴨プリズン」を取り扱った前回の個展に比べると、若干想像力が大人しくなっているのは否めないが、それは炭鉱の残像を追い求めて過去を掘削していくなかで硬い岩盤に突き当たったということなのかもしれない。もはや山本作兵衛のような作品が望めない今、必要なのはこの岩盤のありかを共有し、なんとかしてそこを突き抜けていく身ぶりを獲得することだろう。

2009/02/08(日)(福住廉)

赤塚不二夫のコニャニャチハ展

会期:2009/01/17~2009/02/22

杉並アニメーションミュージアム[東京都]

故・赤塚不二夫の回顧展。小規模な展示とはいえ、直筆原稿、パネルによる年表、スナップ写真、「天才バカボン」のアニメ版など堅実な構成でその偉業を振り返っていた。なかでも、石丿森章太郎のアシスタントを勤めていたトキワ荘時代に描いたマンガ原稿を、誰がどこを描いたのかを解説しながら展示するなど、工夫が凝らされていた。

2009/02/08(日)(福住廉)

大ガラパゴス展

会期:2009/02/06~2009/02/08

東京藝術大学千住キャンパス[東京都]

東京藝大音楽環境創造科の卒業・修了制作展。キャンバス内の教室や体育館を使って作品を発表したり、論文の要旨を公開していたが、昨年に比べると全体的に完成度が粗いといわざるを得ない。せっかく、外部の人に作品が見せられる機会だというのに、準備が間に合っていなかったり、解説文の日本語が不明瞭なため作品の鑑賞方法が分かりにくくなっていたり、詰めの甘さが目立ってしょうがない。どうやらホームで開催することの利点が裏目に出たようだが、「作品を見せる」ことに全力を注がない限り、アウェーで勝負することは到底かなわない。

2009/02/08(日)(福住廉)

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