2018年01月15日号
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artscapeレビュー

2010年02月01日号のレビュー/プレビュー

小谷元彦展 Hollow

会期:2009/12/17~2010/03/28

メゾンエルメス8階フォーラム[東京都]

小谷元彦の新作展。展覧会のタイトルにもなっている《Hollow》シリーズなど、10点が発表された。人体を構成する鋭角上の突起物が天に逆上していくような形態と白で統一した色彩によって、彫刻らしからぬ浮遊感を醸し出すのが特徴だが、ここには重力にもとづいた彫刻というジャンルへの反逆的な態度が貫かれている。反重力という志向性は、たしかに21世紀的であり今日的なモチーフなのだろう。けれども肉眼で作品を見た実感でいえば、どうにもこうにも粗雑な仕上がりが目について仕方がない。表面の処理が甘いからなのか、曲線が有機的に描き出されていないからなのか、フォトジェニックな魅力とは裏腹に、いくら実物を見ても視線の快楽が満たされることがないのである。そうした視線の寄る辺なさこそ、あるいは反重力的な彫刻を見るという矛盾した経験を如実に物語っているのかもしれない。しかし、究極的には、私たちは肉眼で鑑賞するほかなく、つまり「重力の圏内」から逃れられない以上、重力に規定された視線に耐えうる造形物をつくりだす必要があるのではないだろうか。重力と反重力のせめぎあいをよりいっそう極限化する余地が残されているように思えてならない。

2010/01/07(木)(福住廉)

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ドゥシャン・カーライの超絶絵本とブラチスラヴァの作家たち

会期:2009/11/21~2010/01/11

板橋区立美術館[東京都]

スロヴァキアの絵本作家、ドゥシャン・カーライの展覧会。《不思議の国アリス》や《アンデルセン童話集》などをモチーフとした原画、油彩画などおよそ250点と、カーライの影響を受けた絵本作家による挿絵の原画50点あまりが展示された。「超絶」というほどの超人的なテクニックが駆使されているようには見えなかったが、それでも絵の構図や色彩のセンスはたしかに唸るものがある。

2010/01/10(日)(福住廉)

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DOMANI明日展2009 未来を担う美術家たち

会期:2009/12/12~2010/01/24

国立新美術館[東京都]

文化庁による「芸術家在外研修(新進芸術家海外研修制度)」の成果発表展。12人の作家がそれぞれ作品を発表した。木製の廃材を高く積み上げて巨大な本棚を見せた高野浩子や、高層ビルが乱立する風景写真にレイヤーを重ね、求心力と遠心力を同時に体感させる安田佐智種などが見応えのある作品を見せた。それにしても展観を見終わって痛感するのは自律した批評の必要性だ。成果発表展という性格上、出品アーティストは短いコメントを発表させられていたが、「成果」を客観的に評価するには、観客や批評家による判断が不可欠である。だが、芸術家を海外に派遣する制度が確立されている一方で、そうした批評的な判断を成熟させる制度は十分に用意されていない。内容の如何が問われることがないまま、展覧会の履歴が自動的に更新されていき、その目録が新たな挑戦の資格となってしまう現状は、アーティストのみならず展覧会の企画者にとっても、彼らの表現がまっとうに吟味されないという点で、大きな不幸といえるのではないだろうか。

2010/01/11(月)(福住廉)

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大友良英 hyper wr player-without records hi-fi version-

会期:2010/01/08~2010/01/31

shin-bi[京都府]

会場の中央には、4本のアームがついたレコードプレーヤー型オブジェが1点。レコードは乗っておらず、本来レコード針があるはずのヘッド部分には独自の改造が施されている。それら4本のアームはランダムな動きを見せながらターンテーブルを引っ掻き、ノイズの自動演奏を行なうのだ。音楽を再生する機械から本来の目的を奪った時、そこからどんな音(音楽)が生みだされるのか。その実験の成果がこのサウンドオブジェなのだろう。

2010/01/12(火)(小吹隆文)

4人のペインティング

会期:2010/01/08~2010/01/30

小山登美夫ギャラリー京都[京都府]

福永大介、工藤麻紀子、桑久保徹、大野智史による絵画展。4人とも首都圏を拠点に活動している作家なので、私にとっては初めての出会い。今までなかなか見られなかった地元以外の作家と出会えるのは嬉しい。4人の中では桑久保徹の作品(画像)が気になった。海辺らしき情景をかなり引いた視点からパノラミックに描き出している。絵具を盛り上げた力強いタッチには、晩年のゴッホやムンクを思わせるところも。聞けばこのこの人、画家としての生き様に自覚的で、敢えて屋外で描いたことがあったり、自分のなかに架空の画家像を見出して制作過程を記録した書籍を自費出版しているらしい。なんだか興味が湧いてきた。ほかの作品も見てみたい。できれば次は個展で。

2010/01/12(火)(小吹隆文)

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