2018年12月01日号
次回12月17日更新予定

artscapeレビュー

2010年07月01日号のレビュー/プレビュー

國森康弘 人生最期の1%

会期:2010/05/20~2010/05/31

コニカミノルタプラザ ギャラリーB[東京都]

島根県内の介護施設「なごみの里」で暮らす90歳代の老人3人の晩年をとらえた写真作品。それまでにどんな辛苦や苦労があったか、写真からうかがい知ることはできないけれど、最後の最後で自分の生をまっとうしていた老人たちの姿は、望まない死を迫られる人びとが依然として多い世界にあって、ひとつの幸福のかたちを示していたように思う。では自分はどのように生きて、どのように死を迎えるのか。その点を突きつけてくるメメント・モリとしての写真である。

2010/05/22(土)(福住廉)

『アヒルの子』

会期:2010/05/22

ポレポレ東中野[東京都]

2005年制作の小野さやか監督作品。みずからの家族をモチーフにしたドキュメンタリー映画で、カメラとともに親兄弟一人ひとりに向き合うことによって、表面的には模範的に見える「家族」を内側から突き崩していく。なるほど、ヒリヒリとするような内面を剥き出しにしながら、個人的な物語を語る「私映画」ではある。けれども、この映画が特異なのは、観客にとって未知の「家族」の内実が曝け出されているからではない。それは、「家族」の構成員にとっても(おそらくは)見知らぬ秘密さえも暴き出している。妹である小野監督を中心に、両親や2人の兄、姉と一対一の関係性に沿って明らかにされる事実や思いは、それぞれ固有のものであり、「家族」として共有されているわけではないだろう。小野が文字どおり涙と嗚咽とともに浮き彫りにしたのは、「家族」というもっとも身近で、だからこそ厄介な近代的な社会集団が、決して一枚岩のものでも安定したものでも何でもなく、それぞれ固有の関係性を維持したり隠すことによって辛うじて成立する、脆くも儚い人工的な作り物であるということだ。その意味で、「家族」に復讐するという小野の企ては、「家族」にとらわれていた自分自身との対決でもあった。

2010/05/22(土)(福住廉)

田中幹人 PHOTO EXHIBITION~あぶない所へ行ってみよう~

会期:2010/05/25~2010/05/30

同時代ギャラリー[京都府]

工事中の高速道路の橋脚や今は使われていない遊園地の観覧車、公園のモニュメントなどに登ってポーズを決めた写真を、地上から仰ぎ見るように撮影している。写っているのは作家本人だ。基本はゲリラ活動で、時には管理者に怒られながらも懲りずに制作を続けているらしい。とてもシンプルで馬鹿馬鹿しいとも言えるのだが、それゆえに痛快さが際立っていた。アホなことを真剣にやる格好良さ。その一点に賭けた作品だ。

2010/05/26(水)(小吹隆文)

第6回馬橋映画祭

会期:2010/05/29~2010/05/30

高円寺エンジョイ北中ホール(素人の乱12号店)[東京都]

「作品のジャンル、監督のキャリア、その他オールバラバラ映画祭」。いってみれば、アンデパンダン展の映画版で、何から何まですべて手作りの映画祭だ。入場も無料。6回目を迎えた今回は、20組による作品が5つのブロックに分けられ、この回はNaka-O「絶体絶命」、川辺雄「あなたは誰の神話なのか?」、ISHIKAWA Haruka「Leur passage」、じゃましマン「そう病の記録」が上映された。限界芸人・じゃましマンの初期の活動を記録した貴重な映像も見ものだったが、ISHIKAWA Harukaの映像にも眼を奪われた。窓の向こうのブロック塀の上を行き交う猫たちを定点観測した映像で、固定カメラを無視して堂々と歩く猫から何かと室内を伺う猫まで、性格の異なる生態を巧みにとらえた。編集もおもしろい。

2010/05/30(日)(福住廉)

渡辺信子 展

会期:2010/05/31~2010/06/05

信濃橋画廊[大阪府]

4室を有する信濃橋画廊のうち、メイン以外の小展示室3つで個展を開催。木枠に布を張った彼女ならではの作品だったが、点数は控えめで部屋ごとに色遣いを変えていた。作品による空間の変容がテーマで、作品単体ではなくコーディネートが重視されていたのだ。見慣れた展示室がいつもとは少し違って見えたのが印象的だった。こういう試みを日常的空間、例えば個人の邸宅や住宅展示場で行なったらどうなるのだろう。さぞかしユニークな展覧会になると思うのだが……。

2010/05/31(月)(小吹隆文)

2010年07月01日号の
artscapeレビュー

文字の大きさ