artscapeレビュー

TOKYOGRAPHIE 2018

2018年11月01日号

会期:2018/10/26~2018/12/25

フジフイルム スクエアほか[東京都]

毎年春に京都を舞台に開催されている「KYOTOGRAPHIE」(京都国際写真祭)も今年で6回目を迎え、国際的な写真フェスティバルとして定着しつつある。今回、都内の各会場で開催された「TOKYOGRAPHIE」は、その「KYOTOGRAPHIE」の「SPECIAL EDITION」という位置づけのイベントである。オープニングプログラムとしてフジフイルム スクエアで開催された「深瀬昌久 総天然色的遊戯」展をはじめとして、小野規、ギデオン・メンデル、リウ・ボーリン、ジャン=ポール・グード、宮崎いず美らの展示は、いずれも今年の「KYOTOGRAPHIE」で開催された展覧会の再構成、あるいは縮小版であり、京都に足を運んだ者にとって新味はない。むろん、東京で初めて展示を見る観客にはありがたいイベントだが、できればもう少し独自の企画に力を入れてほしかった。

「TOKYOGRAPHIE」で初めて見ることができたなかでは、林道子の「Hodophylax~道を護るもの~」と関健作の「GOKAB~HIPHOPに魅了されたブータンの若者たち」(どちらもフジフイルム スクエア)が面白かった。林と関は、「KYOTOGRAPHIE 2018」のポートフォリオレビューで大賞と特別賞を受賞しており、このような形で作品のお披露目ができたのはとてもよかったと思う。ニホンオオカミ(Hodophylaxはその学名)と日本人との関わりを文化史的に跡づけていく林の作品も、ブータンの若者たちの生き方を思いがけない角度から浮かび上がらせた関の作品も、ドキュメンタリー写真の新たな方向性を示す力作であり、会場構成もきちんと練り上げられていた。まだいろいろな可能性がありそうなので、今回だけでこの企画を終わらせるのではなく、来年以降もぜひ続けて開催していただきたい。

2018/10/27(土)(飯沢耕太郎)

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