artscapeレビュー

クロダミサト「裸婦明媚」

2018年11月01日号

会期:2018/10/05~2018/10/21

神保町画廊[東京都]

クロダミサトは昨年から今年にかけて、SNSでモデルを募集して、6回にわたってヌード撮影のセッションをおこなった。今回の個展では、19名の女性たちをiPhoneで撮影した写真、600枚を、11×11センチの大きさにプリントして展示している。撮影場所は、写真展の会場になった神保町画廊であり、打ち合わせや準備等を入れると実際に撮影できる時間は30分くらいだという。

このシリーズは、ありそうであまりない取り組みだと思う。女性のヌードは、おおむね性的な欲望の対象として消費されるか、美的なフォルムや陰影を追求するかのどちらかになりがちだ。だが、クロダのヌードはことさらにエロスを強調しているわけでも、リアルなオブジェとして描写しているわけでもない。等身大の女性たちの「からだ」のあり方を、とても丁寧に、その細部にまで視線を届かせながら押さえている。個々の写真には、名前や年齢や日付けなどのデータは一切省かれているが、それもかえってよかったのではないだろうか。写真を見ながら、自分自身で意味付けしていかなければならないことで、写真(被写体)と観客との間に自発的な対話が成立していた。

大学時代の同級生をモデルに撮影した2011年の写真集『沙和子』以来、クロダは『沙和子 無償の愛』(2013)、『美しく嫉妬する』(2015)と、ヌード写真集の発表を積み重ねていった。そこで培われていった、モデルとの距離感を細やかにコントロールしていく撮影法が、本シリーズでも充分に活かされている。

2018/10/17(水)(飯沢耕太郎)

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