2018年11月15日号
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artscapeレビュー

第15回岡本太郎現代芸術賞展

2012年04月01日号

会期:2012/02/04~2012/04/08

川崎市岡本太郎美術館[神奈川県]

岡本太郎現代芸術賞といえば、いまや日本の若手アーティストたちにとっての登竜門としてすっかり定着しているが、ここ数年の受賞作の傾向は全般的に定型化されている印象が否めない。それが自らの様式に呪縛されていった晩年の岡本太郎を彷彿させることはともかく、いずれにせよ審査員の全面的な入れ替えを断行しない限り、例えば「動脈硬化」に陥って久しいVOCA展やシェル美術賞と同じような末路をたどることは目に見えている。どういうわけか、選考する権力に固執する美術評論家や学芸員が多いが、おのれの存在が状況の停滞を招いているという客観的な事実が見えないようであれば、同時代の美術の動向を的確に見抜くことなどできるはずがないではないか。このようなコンクール展で頻出する、ある種の「遅さ」は、年に一度催されるという制度に端を発していると言われることが多いが、じつは、ひとえに選考する者自身の眼力に由来しているのである。
そのことを踏まえたうえで、なお本展で注目したのは、千葉和成。これまでダンテの『神曲』を現代的に解釈した作品を制作してきたそうだが、今回は東日本大震災における津波や地震、原発事故をモチーフとして盛り込んだ平面と立体を発表した。福島第一原発の地下に巣食う怪物によってメルトダウンの悪魔的な光景を描写した立体作品の迫力に比べると、平面作品は全体的に画面の構成が粗く、随所に仕掛けられたユーモアも逆効果に終わっているという難点がないわけではない。ただ、そうだとしても、画面の四方八方を貫く執拗な粘度は見る者の視線を惹きつけるには十分すぎるほどであり、これが近年の絵画に大きく欠落している特質であることには変わりがない。時事的な主題を強引に作品に取り込み、自らの世界観を更新してみせた力技も、評価できる。

2012/03/16(金)(福住廉)

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