artscapeレビュー

山根秀信 個展「風景」

2012年04月01日号

会期:2012/03/12~2012/03/17

Gallery K[東京都]

山口市在住で、昨年の第65回山口県展大賞を受賞した山根秀信の個展。宅地造成した土地に住宅が点在する寂寥感のある風景を平面に描いてきたが、今回の個展では、それに加えて、米粒を敷き詰めたジオラマ作品も発表した。壁面に展示された水彩の鮮やかな彩りと白で覆われた床面の対比が美しい。しかもこれらの米粒はすべて山根が自ら育て、収穫したもので、それらを納めていた米袋も平面作品とあわせて壁面に展示されていた。それらを見ていると、食であろうと芸術であろうと街であろうと、人間は太古の昔より自然の恵みから多くを負ってきたという厳然たる事実を改めて思い知らされる。都市社会が成熟した反面、その暗部がまざまざと浮き彫りになっているいま、この食と芸術と都市が一体となった原点に回帰することが求められているのではないか。

2012/03/16(金)(福住廉)

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