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縄文人展 芸術と科学の融合

2012年08月01日号

会期:2012/04/24~2012/07/01

国立科学博物館 日本館1階企画展示室[東京都]

縄文人の骨を見せた展覧会。さほど大きくない会場の中央には、男性と女性のほぼ全身の骨格がガラスケースの中にそれぞれ展示され、彼らの骨の細部をとらえた上田義彦による写真がその周囲に貼り巡らされた。おもしろいのは、解説文と写真、そして骨そのものをあわせて見ることによって、縄文人の暮らしや文化、時間、そして人生がまざまざと浮き彫りになるところ。それが、残された骨からさまざまな情報を読み取る研究者による解説文に由来していることはまちがいない。上田によって撮影された美しい写真も大きく寄与しているのだろう(丸い石かと思ったら頭蓋骨の頭頂部だった)。だが、それ以上に、印象に残ったのは、やはり骨という物質そのものである。この存在感と説得力はとてつもなく大きく、だからこそ私たちは、縄文人という人間が、かつて、確かに生きていたことに思いをめぐらせることができたのである。「芸術と科学の融合」というより、文字と写真、そして物質が有機的に統合されることによって、私たちの想像力を刺激した、きわめて良質の展覧会である。

2012/06/30(土)(福住廉)

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