2017年12月15日号
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artscapeレビュー

Aokid『"Blue city"-aokid city vol.3』

2013年09月01日号

会期:2013/08/24

Shibaura house[東京都]

Aokidは現在25歳のダンサー。東京造形大学出身。ヒップホップをベースにしながらも、そこにかわいくて、フレンドリーなアイディアを盛り込み踊る。ぼくはこのダンサーが率直にいって好きだ。好きな理由のひとつは、アニメっぽかったり絵本ぽったりするイメージが、速い動きの最中、花火の炸裂するように散りばめられる、そんなところだ。Aokidのアクロバットは、たんなるテクニックの披露ではなく、まるで気まぐれに紙切れに書かれた漫画のようで、ぼくらが見慣れ過ぎている非人間的な身体イメージと似ていて、リアルだ。もうひとつ好きなのは、彼の優しさ。本作は、昨年12月から始まったAokid Cityという公演の3回目。会場のギャラリースペースに入ると、受付でドリンクが振る舞われ、着席すると、Aokid本人が観客にお菓子を振る舞うのだった。Aokidは忙しく会場を歩き回り、上演の準備の傍ら、観客に話しかけ、場を和ませてゆく。そうした振る舞いは、パフォーマーと観客との境界を曖昧にし、客席と舞台空間との境界を曖昧にする。ストーリーは簡単だ。Aokidが海を泳ぐうちに見知らぬ島に辿り着く。そこで怪獣と遭遇し闘い、犬と知り合いになってまた分かれ、クジラに呑み込まれたかと思えば、再びこの世界(Blue city)を後にする。まるで絵本のようなファンタジー。3歳の息子を連れて行ったのだが、彼は公演の1時間を集中して、ときに爆笑しながら楽しんで見ていた。クジラに呑み込まれた場面では、クジラの胃袋をレストランに見立てると、テーブルが舞台横に登場し、サンドウィッチや飲み物が観客に差し出された。上演が中断し、しばし歓談。「つながり」を楽しむほんわかした時間は、別に批評の対象ではないし、批評性のなさを批判するなんて無粋だ。「好き」なんていっている時点で、批評をぼくは放棄している。Aokidのダンスがもっている質は、今後、ダンスに新しい局面をもたらすかも知れないけれど、そうしたことはまあちょっと置いておこう。優しくてかわいい男の子によるささやかなパーティ、これはこれとして類い希な楽しさに満ちていたのだ。

2013/08/24(土)(木村覚)

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