2018年07月15日号
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artscapeレビュー

世界に挑んだ明治の美──宮川香山とアール・ヌーヴォー

2015年07月01日号

会期:2015/04/25~2015/08/30

ヤマザキマザック美術館[愛知県]

横浜・眞葛焼の創始者、宮川香山の仕事は明治の輸出工芸のひとつで、花鳥や蟹、鼠などの生き物を高浮彫と呼ばれる写実的な彫刻によって壺などの器の表面に表現した独特な陶磁器作品で知られる。本展は宮川香山作品のコレクターであり「宮川香山 眞葛ミュージアム」の設立者である山本博士氏のコレクションを中心に、香山の作品をラリック、ガレやドーム兄弟などによる同時期のヨーロッパのアール・ヌーヴォーの工芸や家具とともに展示、紹介している。工芸作品の展覧会というと、そのつくり手である工芸家に着目することが多い。しかし、京都の陶工であった香山が横浜に移って窯を開いたのは輸出陶磁器制作の注文を受けたことがきっかけであり、その作品のほとんどが海外に渡り、国内には残されていない。すなわち、香山の作品は日本人のためにつくられたのではない。それゆえ、彼の仕事を理解するためには、国内におけるつくり手側の事情と同時に、当時のヨーロッパでなにが求められていたのかを考える必要があり、今回の展示構成はその様相をとてもわかりやすく伝えていると思う。会場入口正面には、16世紀フランスの陶工ベルナール・パリッシーによる爬虫類などを浮き彫りにしたグロテスクな作品の、19世紀ドイツにおける写しが展示されている。パリッシーの作品が19世紀のヨーロッパで新たに人気を博していたということで、欧米人にとって香山の高浮彫のような作品はただエキゾチックで珍しいものではなく、その様式においてすでに受け入れる素地があったということになろうか。また展示ケースにアール・ヌーヴォーのガラス器と香山の高浮彫とが交互に並んでいながら両者が違和感なく収まっている姿を見ると、工芸の東西交流と相互の影響関係に至極納得がいく。[新川徳彦]

2015/06/27(土)(SYNK)

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