2018年07月15日号
次回8月1日更新予定

artscapeレビュー

犬飼勝哉『木星のおおよその大きさ』

2018年07月01日号

会期:2018/06/20~2018/06/25

こまばアゴラ劇場[東京都]

「宇宙は社会の縮図である」とキャッチコピーを掲げた犬飼勝哉が全七場の連作で描くのは〈(株)ジュピター〉を取り巻く人間模様。意味のない会話や冗長な社交辞令が延々と続くなかに社会/会社が抱える「おかしさ」が浮かび上がる。

例えば女性への偏見。第一場「木星の日面通過」では女性社員(深澤しほ)が喫煙所にたむろする男性社員への不満をだらだらと口にするのだが、彼女もまたさりげなくタバコを取り出し、男性社員のひとり(前原瑞樹)はそれに引いてしまう。女性はタバコを吸わない、あるいは吸わないでほしいという勝手なイメージを押しつける男性は少なくない。第二場「木星からの物体X」には取引先の女性(西山真来)に対し「てっきり、男性の方だと思ってまして」「やはり女性の方だと」などと連発する男性社員(浅井浩介)が登場する。誇張されたやりとりは笑いを生むが、これらが偏見に基づくセクハラであることは言うまでもない。

女性/男性への固定観念を持っているのは登場人物だけではない。描かれる「あるある」のなかには女性社員同士のランチタイムの駆け引きや男子トイレでのマウントなども含まれている。観客もまたそれらを「あるある」だと認識しているからこそそこに笑いが生じるのであって、それに気づくとはたしてこれは笑ってよいものかと考えてしまう。

一歩引いた場所から人間社会にアイロニカルな視線を投げかけている者もいる。「個体増殖のしかたが、少し複雑すぎる」などと人間を揶揄する串田(本橋龍)が観客に自ら説明するところによると、彼はその見た目とは異なり「およそ2万年前に、この星に落下してきた」「いまあなたが見ているモノに見える」生命体らしい。それはもちろん俳優としての宣言でもあるわけだが、しかし観察者を装う彼が誰よりも他人の視線によって自らのありようを規定されてしまっているというのも皮肉な話だ。アイロニカルな視線は「観客」にも向けられている。

[撮影:冨田粥]

公式サイト:http://astronautsboard.com/

※本文中の出演者名に誤りがありましたので、2018年7月4日、修正いたしました。謹んでお詫び申し上げます。

2018/06/21(山﨑健太)

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