artscapeレビュー

2010年08月15日号のレビュー/プレビュー

パフォーマンス「からだをどうぞ~音とダンスの即興セッション」

会期:2010/07/16~2010/07/17

shin-bi[京都府]

サウンドアーティスト鈴木昭男とダンサー宮北裕美の即興パフォーマンスライブ。ちょっかいを出して邪魔するように宮北の動作にあわせて自作の楽器を鳴らしたり、それを床に落としたりする鈴木さんのいたずらっ子のような表情がチャーミングでクスクスという笑い声も会場のあちこちから聞こえる。ダンサーのしなやかな体の動きや姿勢の美しさにも見蕩れてしまった。

2010/07/16(金)(酒井千穂)

瀬戸内国際芸術祭2010

会期:2010/07/19~2010/10/31

男木島+小豆島[香川県]

朝イチの飛行機で高松に行き、高松港近くの受付でプレスパスやガイドマップをもらい、チャーター船で島めぐり。直島、豊島、女木島、男木島、小豆島、大島、犬島というおもに香川県の7つの島々に繰り広げられた作品を見てまわる、壮大かつ無謀なアートプロジェクト。今日は3島まわるつもりだったけど、島の滞在時間と船の出発時刻を考えると1日2島が限度だと気づく。まずは男木島。ここは集落がひとつに固まり、その空家を利用したインスタレーションが多いので、1時間もあれば10数点の作品がひととおり見られる。ただし平地が少なく斜面に民家が密集しているため、炎天下、迷路のような坂道を行き来しなければならない。ま、それも楽しい経験だが。待てよ、この感覚どこかで体験したなあ。そう、越後妻有の「大地の芸術祭」。男木島の参加アーティストはジャウメ・プレンサ(未完成)、大岩オスカール、松本秋則、北山善夫、谷山恭子といった顔ぶれだが、肝腎の作品は既視感のあるものが多く、新鮮な驚きや発見に欠けた。そんななかで、木造民家の外壁にカラーペイントした眞壁陸二の壁画プロジェクトは、場所といいモチーフといい点数といい最良の作品。期待していた谷山作品はマップ上に特定されておらず、残念ながら見過ごしてしまった。
男木島から小豆島へ。直島と豊島を経由したので2時間以上かかった。小豆島はこの7つの島のなかではケタ外れに大きいので、バスをうまく利用しなければならない。見るべき場所は豊福亮とスゥ・ドーホーの作品がある土渕海峡周辺と、岸本真之、王文志、ダダン・クリスタント、栗田宏一、河口龍夫らの作品が点在する内陸部。まずバスで内陸部まで行って、帰りに海沿いの作品を見ようと考えたが、炎天下とぼとぼと見て歩くうちに帰りのバスが行ってしまい、残念ながら豊福とスゥは次回に持ち越し。王の竹のドームは力作だし、栗田の土の標本も美しいが、どちらも見たことがある。このふたりだけでなく、岸本もダダンも河口も昨年新潟市で行なわれた「水と土の芸術祭」に参加している。いくらディレクターが同じ(北川フラム)とはいえ、ちょっと重なりすぎ。

2010/07/17(土)(村田真)

パラモデルの世界はプラモデル

会期:2010/06/26~2010/08/01

西宮市大谷記念美術館[兵庫県]

エントランスホールはまさに工事現場のイメージ。工事中の柵があり、会場の柱を金網が取り囲んでいる。辺りに積み上げられた段ボールや床に置かれた工具箱など、あらゆる箱に車輪のようなものが付き、区切られたスペースに収まり整列していた。プラレールのインスタレーションから写真、アニメーション、立体作品、絵画などパラモデルのさまざまな作品が館内いっぱいに繰り広げられた個展。館全体も車に見立てられているのだが、はては世界全体、宇宙までも“動産”というイメージでいたるところに、駐車場を表わす「P」の文字や落書きのように描かれた車輪を見つけることができる。これまで何度もプラレールのインスタレーションは目にしたが、本展で床から天井まで張り巡らされたそれは特に、植物や風景をイメージしたモチーフの連なりが造形的に美しく壮観。会期も後半になって訪れたが、2階の展示室ではグレーのパイプのユニットを継ぎ合わせて増殖させていく作品がまだまだ制作中という状態。ラジオ放送が流れ、まさに作家自身の制作アトリエさながらの雰囲気のなかで、作家が来場者と和やかに会話し、展示作業を続ける光景も微笑ましかったが、この展示室はあと二日で終了という日もまだ作業が続いていた。タイトルは《無限会社パラモデル・パイプライン》。タイトルリストに7月中旬完成予定と記載されていたが、もしかすると最終日まで展示作業は続いたのかもしれない。二度目に訪れたときには、もはや会期終了後の搬出作業を想像して恐ろしい気分にもなったが、現実の切なさが果てない空想や夢の世界と隣り合わせにうかがえるのもパラモデルらしく、それも含めて素敵な展覧会だった。

2010/07/17(土)(酒井千穂)

渡邊聖子「結晶」

会期:2010/07/08~2010/07/20

現代HEIGHTS Gallery Den.ST[東京都]

下北沢の現代美術スペース、現代HEIGHTSの小さな部屋で5月から開催されている連続展(企画/言水制作室)。田島鉄也(ペインティング)、七七(視覚詩)、早川桃代(ドローイング)に続いて渡邊聖子の作品が展示された。内容的には渡邊がこのところずっと試みている、写真、ガラス、ゴムなどを使ったインスタレーションの延長上の作品である。写真のコピーやドローイングを綴じあわせた皺くちゃの紙の束がダンボール箱に入れられて放置され、ガラスとゴムの板が床に置かれ、波をかぶった巨大な岩の写真がフレームにおさめられて壁に立てかけてある。これらの全体から浮かび上がってくるのは、事物の「物質性」が写真やコピーによって「像化」され、ガラスやゴム板による干渉を被ることで、どのように変質し、イメージそれ自体の「物質性」を獲得するのかというプロセスである。その変化の相を、部屋の床や壁の触感も巧みに活かしつつ、細やかに検証しようとしている。興味深いのは、コピーの束、ガラス板、岩の写真などの道具立てが、ある種のセットとして扱われていること。つまり、同じ材料が異なった環境にインスタレーションされることで、微妙に違った見え方をしてくるのだ。はじめて見る観客にはそのあたりがわかりにくいのが難点だが、展示を続けて見ていると、その枝分かれしつつ増殖するようなあり方がなかなか面白い。いっそのことセットを完全に固定してしまって、もっと積極的に(ゲリラ的に)いろいろな場所で展示してみてもいいかもしれない。

2010/07/17(土)(飯沢耕太郎)

瀬戸内国際芸術祭2010

会期:2010/07/19~2010/10/31

犬島+豊島[岡山県、香川県]

2日目はプレスツアーで犬島へ。7島のうち唯一岡山県下の犬島では、この芸術祭に先行してすでに柳幸典によるアートプロジェクト「精錬所」が公開されているので、まずはそちらを鑑賞。これはすごい。光を求めて迷路状のトンネルをさまよい歩く趣向だが、さすがカネのかかったプロジェクトは見ごたえがある。そのあと、柳の作品と妹島和世の建築によるコラボレーション「家プロジェクト」4点を見る。4点ともそれほど離れてないので、1時間もあれば見て歩ける。こちらは逆にカネをかけるほどのもんかという気もするが、空家が無駄に朽ちていくよりはるかに建設的な試みではある。
産業廃棄物不法投棄という不名誉な話題で知られる豊島へ渡る。人里離れた海岸のはずれに建つ医院のような建物が、クリスチャン・ボルタンスキーの《心臓音のアーカイブ》。メインルームに入ると世界中から採集した心臓の鼓動が響き、それに合わせて光が明滅する。越後妻有の廃校でのインスタレーションも含めて、どうもボルタンスキーの作品はコケおどしにしか感じられてならない。また、港近くのオラファー・エリアソンの虹をつくるインスタレーションもそうだが、なぜ豊島に《心臓音のアーカイブ》をつくったのか理由がわからない。それに比べれば、神社の貯水槽の上に水紋を思わせる鉄の彫刻を置いた青木野枝や、空家に滞在し「藤島八十郎」として絵本を書く藤浩志らのほうが、よほど場所に即した作品づくりをしていて好感がもてた。論議を呼びそうなのが、同じ地区の空家を利用したジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラーの《ストーム・ハウス》。これはもはや既視感というレベルではなく、昨年「大地の芸術祭」で発表され、あまりのバカバカしさに感動した同じ作者のインスタレーション《ストーム・ルーム》を、そのまま瀬戸内に移設しただけのもの。地元の人たちには初めてかもしれないけど、観客のおそらく何割かは越後妻有も体験しているはずなので、幻滅する人も多いのではないか。世界中でこうした国際芸術祭が増えれば、当然アーティストもダブってくるし、同じコンセプトの作品が各地に増殖していく事態は避けられないだろう。しかしテーマパークのアトラクションと違い、アートは地域特有の文化資源を掘り起こす役割を担っているのではなかったか。まあ彼らの作品は芸術祭のなかでも「アトラクション」に近いが。

2010/07/18(日)(村田真)

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