artscapeレビュー
彫刻の時間─継承と展開─
2011年11月01日号
会期:2011/10/07~2011/11/06
東京藝術大学大学美術館[東京都]
東京藝術大学美術学部彫刻科による企画展。同大学が所蔵する仏像や彫刻を中心に、同大学の教員による彫刻作品もあわせて約100点を展示した。なかでも見どころは、平櫛田中と橋本平八の作品が公開されていること。後者については「橋本平八と北園克衛」展(世田谷美術館、2010)があったが、前者とあわせて見る機会はなかなかない。両者による木彫彫刻がずらりと立ち並んだ展示の風景は圧巻だ。すべての輪郭線が明瞭な平櫛の彫刻と、柔らかな曲線で構成された橋本のそれはじつに好対照。天心や芭蕉、良寛など、おもに実在の人物(おおむね男性)を写実的に造形化した平櫛の彫刻は、リアルな再現性を重視する現在の彫刻家や造形師にとっての回帰点になりうるだろうし、猫や馬などを柔らかな曲線によって彫り出し、その内側にただならぬ気配を感じさせる橋本の彫刻も、超越性や神秘性を体感させる昨今の彫刻ないしはインスタレーションに、大きな示唆を与えるはずだ。平櫛田中と橋本平八を大いなる原点として、彫刻の歴史が展開していったことを如実に物語る展観だった。
2011/10/13(木)(福住廉)