artscapeレビュー
『ペンギンブックスのデザイン 1935-2005』
2011年11月01日号
1935年に英国で創刊されたペンギンブックスの70年間にわたる表紙デザインを追った、じつに目に楽しく(図版は500点を超える)、読んで面白い(綿密な調査分析に基づく)本である。なによりもご覧のとおり、「表紙デザイン買い」をしてしまいそうな装丁。「ペンギン」のブランド・カラーであるオレンジが、本論頁の紙にも効果的に使われている。それもそのはず、著者はロンドンのセントラル・セントマーティンズ美術大学で教える傍ら、フリーランスのグラフィック・デザイナーとして活躍している人物。ブック・デザインが象徴的に示すとおり、本書は、ペンギン・ブランドがどのように構築・展開されていったかについて、会社の歴史・デザイナーの手法・各「シリーズ」「ブランド」の特徴と変遷・タイポグラフィ分析・技術的変化など、複数要素を通じて探求している。巻末にはヤン・チヒョルトが考案した「ペンギン組版規則」が掲載されてもいる。同社の歴史が、グラフィック・デザインの発展といかに轍をひとつにしてきたか、深く考えさせられる。[竹内有子]
2011/10/15(土)(SYNK)