artscapeレビュー
LIFE 永井一正ポスター展
2013年08月01日号
会期:2013/07/09~2013/08/30
dddギャラリー[大阪府]
グラフィックデザイナー永井一正の「LIFE」シリーズを中心に、動植物をモチーフとしたシリーズ・ポスターを紹介する展覧会。これらの作品群は、永井が1980年代後半からライフワークとして取り組んでいるシリーズで、かけがえのない命や自然への強いメッセージを発信している。1929年に大阪で生まれた永井は、東京藝術大学の彫刻科に進学したものの眼底出血の発病により中退し帰郷する。彫刻家の夢を断念し失意のまま家で過ごしていたある日、父親が働いていた大和紡績から声がかかり宣伝部で働くことになる。こうして永井のデザイナー人生は始まった。永井はデザイン学校に通うなどの正規的なデザイン教育は受けなかったが、日本デザインセンターの創設に関わり、また数々の革新的なポスターを発表し続けるなど、日本のデザイン界のみならず、時代を牽引してきた人物である。初期は「アサヒスタイニー」や「ニコン」のポスターなど幾何学的な造形美を表現し、中期には写真と細かい線による平面的な構成やモンタージュ手法を用いた抽象的な作品を発表した。今回の動植物をモチーフとしたシリーズは永井の作風としては後期ともいえるもので、手描きによる有機的な形態をした、無邪気で時には幻想的にも見える生き物たちが登場する。大きな目でこちらを見つめる動物たちを見ていると、切実な訴えが聞こえてくるような気がする。「あなたたち人間は快適さと便利さを求め環境を破壊し続けてきました。そして私たちの小さな住処までを奪ってしまいました。いま地球は、弱い命たちは、悲鳴をあげているのです」と。生きること、そして共に生きることについて改めて考えさせられる。
生きものの形を描きながら、
生きとし生けるものたちとの
共生の意義を考えたい。
出典=永井一正『つくることば いきることば』(六耀社、2012)58頁
[金相美]
2013/07/18(木)(SYNK)