artscapeレビュー

福住廉のレビュー/プレビュー

1970年大阪万博の軌跡

会期:2009/01/22~2009/02/08

国立科学博物館[東京都]

大阪万博を回顧する展覧会。資料やデータを網羅したほか、ミニチュア模型や公式ユニフォーム、太陽の塔の内部のレプリカ、当時の記録映画などなど、盛りだくさんの内容で楽しめた。ただし、最後の最後で映画『二〇世紀少年』の宣伝コーナーが組み込まれていたことに興醒めさせられた。万博を契機として消費社会に突入して行った日本社会が、今もなお広告や宣伝の論理に支配されていることをこれほどまであからさまに喧伝されると、恥ずかしくてしょうがない。開催期間が短すぎるのももったいない。

2009/02/07(土)(福住廉)

国宝 三井寺展

会期:2009/02/07~2009/03/15

サントリー美術館[東京都]

琵琶湖を望む三井寺の寺宝を開陳する展覧会。頭頂部が尖りぎみの《智証大師坐像(御骨大師)》や文字どおり面妖な《新羅明神坐像》、たおやかな品性を醸し出す《如意輪観音菩薩坐像》など、門外不出の秘仏が公開されている。仏像好きにはたまらない。

2009/02/06(金)(福住廉)

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篠山紀信 20XX TOKYO

会期:2009/01/22~2009/02/12

T&G ARTS[東京都]

写真家・篠山紀信の展覧会。深夜の街角で撮影されたゲリラ・ヌードの写真を発表した。いわゆるアーティスティックな風情がこれみよがしに醸し出されているが、篠山の写真といえば、何よりもまず雑誌のグラビアである。大衆的な写真と芸術的な写真を切り分け、両者をバランスよく使い分ける戦略は篠山だけのものではないが、大衆的な写真を発表する場としてあった雑誌メディアじたいが危機に瀕している現状を考えると、これからは芸術的な写真に安易に逃げ込むのではなく、大衆的な写真だけを突き詰めることのほうが、むしろ「芸術的」な態度となるのではないだろうか。大衆芸術と純粋芸術という旧来の図式は、いまや反転しつつあるのではないか。

2009/02/04(水)(福住廉)

ぼうしおじさんと中華街 写真展

会期:2009/01/28~2009/02/20

シネマジャック&ベティ・カフェ[神奈川県]

「ぼうしおじさん」こと、宮間英次郎を写した写真展。手作りのデコレーティヴな帽子を被り、横浜の中華街などに出没しては観光客の度肝を抜き、人気を集めている。けれども、展示そのものは本人のキャラが濃ゆすぎると展示がショボくなるというパターンを踏んでいて、あまり見応えはなかった。よく見るとキャプションがノートの切れ端だったが、これは「ねらっている」というより、むしろ「済ませている」という感じで、あまり感心できない。写真だけでなく、ぼうしおじさんの来歴やインタビュー、映像など、多角的にアプローチした展示であれば、もう少し楽しめたはずで、もったいない。

2009/02/04(水)(福住廉)

建物のカケラ 一木努コレクション

会期:2009/01/04~2009/03/01

江戸東京たてもの園[東京都]

歯科医・一木努のコレクション展。といっても、ここで展示されていたのは美術作品ではなく、建物のカケラ。900箇所にも及ぶ建物の解体現場に40年ものあいだ通い詰め、その断片を収集してきた個人コレクションのなかから、およそ700点あまりのカケラを一挙に公開した。東京都(府)美術館の階段の手すりから、美空ひばり邸の門扉、山口百恵が通っていたという銭湯のタイル(!)まで、じつにおびただしい。ひとつひとつ丁寧に見ていくと、建物のカケラといえども、形態からテクスチュア、ボリューム、模様、色合いなど、その構成要素は複雑多様で、絵画や彫刻にも勝る豊かな物質であることがわかる。それらが歴史的な時間性を感じさせることはいうまでもないが、都心部の建物のカケラを同心円状に配置することで、その空間的な広がりも想像させるなど、展示の仕方もたいへん優れていた。図録も無料で配布するなど、腹が太い。

2009/02/03(火)(福住廉)

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