artscapeレビュー
建物のカケラ 一木努コレクション
2009年03月01日号
会期:2009/01/04~2009/03/01
江戸東京たてもの園[東京都]
歯科医・一木努のコレクション展。といっても、ここで展示されていたのは美術作品ではなく、建物のカケラ。900箇所にも及ぶ建物の解体現場に40年ものあいだ通い詰め、その断片を収集してきた個人コレクションのなかから、およそ700点あまりのカケラを一挙に公開した。東京都(府)美術館の階段の手すりから、美空ひばり邸の門扉、山口百恵が通っていたという銭湯のタイル(!)まで、じつにおびただしい。ひとつひとつ丁寧に見ていくと、建物のカケラといえども、形態からテクスチュア、ボリューム、模様、色合いなど、その構成要素は複雑多様で、絵画や彫刻にも勝る豊かな物質であることがわかる。それらが歴史的な時間性を感じさせることはいうまでもないが、都心部の建物のカケラを同心円状に配置することで、その空間的な広がりも想像させるなど、展示の仕方もたいへん優れていた。図録も無料で配布するなど、腹が太い。
2009/02/03(火)(福住廉)
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