artscapeレビュー
「戦争と宣伝」阿智村ポスターが語る
2012年09月15日号
会期:2012/07/28~2012/09/02
長野県立歴史館[長野県]
長野新幹線で上田に出て、しなの鉄道に乗り換えて屋代駅で下車、そこから徒歩で25分かかるのだが、炎天下を歩くのはツライので駅でチャリを借りてようやく長野県立歴史館に到着。なんでこんな山奥の、でもないか、風光明媚な場所に来たかというと、そのあとで越後妻有に行くという「ついで」もあるが、ここで開催中の企画展「戦争と宣伝」をパフォーマンス・アーティストの霜田誠二がワケあってススメていたからだ。この展覧会、同県の阿智村の土蔵に残されていた第2次大戦中のプロパガンダポスターを公開するもの。これら国策宣伝ポスターは敗戦後に焼却命令が出たが、当時の村長が密かに保存していたという。ポスターは計135点あり、うち約70点を国民精神総動員、貯蓄奨励、志願兵徴募などに分類展示し、あわせて先行する欧米のポスターなどを例に、いかにプロパガンダポスターがつくられたかも検証している。ポスターの大半は名もない図案家による素朴なイラスト系が占め、それはそれで当時の日本の美意識がうかがえて感慨深いものだが、なかには横山大観や竹内栖鳳らの絵画に基づいたものや、当時としては斬新な写真を組み合わせたポスターなどもあって興味は尽きない。レアもの中のレアものは、「海軍志願兵徴募」の「昭和21年度採用」と書かれたポスター。これは敗戦の昭和20年8月以前につくられたものだろうが、海軍はこの期におよんでまだやる気満々だったのか。大きな展覧会ではないが、見ごたえのある意義深い企画だった。さてこれから長野に出て、飯山線でちんたら越後妻有へ。
2012/08/23(木)(村田真)