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平成26年度 第38回 東京五美術大学 連合卒業・修了制作展

2015年03月15日号

会期:2015/02/19~2015/03/01

国立新美術館[東京都]

巨大美術館の2フロアを占める5美大の絵画・彫刻系の卒業生と修了生、目録をざっと数えたら943人いた。不参加の学生も含めて、毎年東京だけで千人を超すアーティストの卵が「排出」されてるわけだが、たぶん10年後に活躍しているのは10人にも満たないでしょう。絵画では、ズバリ「絵画性」を追求したもの、支持体や展示方式をイジるもの、マンガやイラストを採り入れたサブカルものなど、いくつかのパターンが見られた。まず絵画性を追求したものでは、ハデな色彩と多彩な技巧で内臓的イメージを集大成した橋口美佐、モノクロームの抽象なのに見ごたえある画面を構築した山野兼、ジグソーパズルみたいなキャンバスに額縁状の矩形を描いた黒木彩衣(以上多摩美)、ピンクや紫などの微妙な色彩を巧みに使った梅本曜子と舘あかね(武蔵美)など。支持体をイジったものでは、30-40個の小さめの段ボール箱の表面に動物や魚の絵を描いた石黒ゆかり(武蔵美)、ホストのつかの間の人気ランキングをモザイクで表現した吉本絵実莉(女子美)など。サブカル系では、巨大画面に山水画とモガを強引に組み合わせた奥村彰一(多摩美)、さまざまなマンガの目を40個くらい並べて描いた藤城滉高(日芸)などが印象に残った。彫刻では、隅のほうにできそこないみたいな木彫の天使像を置いた池田かがみ(造形)、大きな台座の上にティッシュやハンガーなどの取るに足りない本体を載せた木彫の内堀麻美(武蔵美)などが逆に目を引いた。ところで、第2次大戦末期につくられた陶器の手榴弾を再制作した成清北斗(武蔵美)の作品が、美術館の指示により撤去されたという。どういうことだ?

2015/02/23(月)(村田真)

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