2018年10月15日号
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artscapeレビュー

文字の劇場『ドキュメンタリー』

2018年06月01日号

会期:2018/04/28~2018/04/29

SCOOL[東京都]

マレビトの会の周辺が面白い。近年のマレビトの会の作品はほとんど何もない舞台空間と大雑把なマイムを特徴とし、両者の間にフィクションが立ち上る瞬間、あるいはフィクションからふと現実が顔を覗かせるような瞬間に焦点をあてる。主宰の松田正隆はそれを「出来事の演劇」と呼び、プロジェクト・メンバーとともにその思考/試行を展開している。文字の劇場を主宰する三宅一平もそのひとりだ。

『ドキュメンタリー』は映像上映と演劇作品の上演の二部構成。前半の映像(橋本昌幸が担当)は演劇/映画における演技に関するインタビューで構成されたドキュメンタリーで、松田のほかにアートプロデューサーの相馬千秋やダンス批評家の桜井圭介、劇作家・演出家の犬飼勝哉、後半の演劇作品に出演する俳優の生実慧、桐澤千晶、西山真来など、さまざまな立場の人間がインタビューに答えている(ちなみに私もそのひとりで、その縁で今回はゲネプロを拝見した)。

後半の演劇作品は娘が幼いころに離別した父親に会いに行く話だ。娘はドキュメンタリー映画を撮っており、父との再会もドキュメンタリーとして残そうとカメラマンの友人を同行する。前半の映像が演技に関するさまざまな思考の種を用意し、後半の演劇作品を観る観客は自然と演技に関する、あるいは目の前で演技をする身体に関する思考へと誘われる。戯曲にあらかじめ記された登場人物の言動とそれを演じる現在の俳優の身体。それは一方で未来のドキュメンタリーにおいて定着される、確定された過去を現在進行形で生成していく。過去と現在、現在と未来、確定性と不確定性。それらの間で揺れ動く俳優の身体のあり様が興味深い。

映像を媒介とした身体をめぐる試みには思考が刺激されたが、原理的な取り組みについても物語とのバランスや関係性についてもさらに思考を深める余地があるだろう。試行錯誤を共有する場所があることは強い。今後のさらなる展開を楽しみに待ちたい。

公式サイト:https://note.mu/mojigeki

2018/04/27(山﨑健太)

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