2017年12月15日号
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artscapeレビュー

山崎弘義「DIARY」

2009年09月15日号

会期:2009/08/20~2009/09/06

UP FIELD GALLERY[東京都]

山崎弘義は1956年生まれ。1980年代に森山大道に師事し、ストリート・スナップを中心に発表してきた。だが父や母の介護のため、写真活動を断念せざるを得ない状況に追い込まれ、今回が12年ぶりの個展になる。「DIARY」は2001年9月4日から、認知症の母のポートレートと自宅の庭の一隅を、毎日「日記的に」撮影し続けたシリーズである。母が亡くなる2004年10月26日まで、全部で1,149カット撮影され、会場にはそのうち40点(2枚組)が展示してあった。
ちょうど台風の大風と大雨が吹き荒れる日だったのだが、展示の雰囲気はとても穏やかで、優しい空気に包み込まれている。この種の「闘病もの」の写真にありがちな押し付けがましさが感じられず、山崎が祈るようにこの2枚だけを毎日撮影していった、その行為の痕跡が淡々とそこに置かれているのだ。とにかく必死に2カットを撮るだけでせいいっぱいで、他にシャッターを切る余裕はまったくなかったのだそうだ。むしろそのことが、過剰な感情移入をうまく回避することにつながったのではないだろうか。
展示はこれでいいが、1,149カットの厚みを体現できるような写真集も見てみたい。写真集を通常の形で印刷・出版するのは物理的に無理そうだが、出力したプリントを綴じ合わせるような私家版の形ならできそうな気もする。ぜひ実現してほしい。

2009/08/31(月)(飯沢耕太郎)

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