2017年12月15日号
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artscapeレビュー

2009年09月15日号のレビュー/プレビュー

HANDO×hando

会期:2009/08/03~2009/08/08

文房堂ギャラリー[東京都]

古本屋めぐりのついでに立ち寄る。東京造形大の学生たちによる版画展。出品者の女の子に冷たい麦茶を差し出され、買ったばかりの重たい荷物をもってもらいながら言うのもなんだが、作品の大半は「版」というメディアをなんの疑いもなく受け入れた、問題意識の感じられない素朴な版画だ。これでは学生の版画と同じではないか。あ、学生の版画でした。つーか、少なくとも美大生なら、テクニックとかセンスとかテーマとか以前に、自分の使うメディアを疑い、壊すことから始めてほしいなあ。

2009/08/04(火)(村田真)

混沌から躍り出る星たち2009

会期:2009/07/31~2009/08/08

スパイラルガーデン[東京都]

思わず赤面しちゃいそうなタイトルの展覧会は、毎度おなじみ京都造形芸術大学の卒業・修了制作展からの選抜展。今回なぜかウェブ的表現がめだつ。といってもインターネットを使った表現ではなく、西村郁子(招待作家)や坂本いづみや藤井まり子のようにファブリックを素材にしたもの、絵でも神馬啓佑や川上幸子のような編み目のイメージ、建築では若松堅太郎による蟻塚みたいに入り組んだ集合住宅プランなど、見た目や構造が「ウェブ的」な作品が多いのだ。こうした傾向にはいくらでも理屈をつけられそうだが、どうせ屁理屈に終わるのでやめとこう。いずれにせよ「混沌から躍り出る星たち」というより、「(ウェブ的)混沌のなかでもがく星たち」だ。

2009/08/04(火)(村田真)

それってゴミ?

会期:2009/07/28~2009/08/06

国連大学内 地球環境パートナーシッププラザ(GEIC)ギャラリースペース[東京都]

なぜトーキョーワンダーサイト(TWS)が、なぜこんなハンパな場所で、なぜこんな短い会期で、なぜゴミをテーマにした展覧会を開くのか。どうやら7月31日に行なわれたシンポジウム「アートと環境との対話」がメインで、展覧会はその「ついで」に開かれたということらしい。でもなんでTWSがゴミ問題に首を突っ込むのか。そりゃ東京都だからゴミ問題に直面せざるをえないのかもしれないが、それじゃわかりやすすぎないか。アートなんだからさ。

2009/08/04(火)(村田真)

銀河観音Sachi&Peace展

会期:2009/08/01~2009/08/16

ZAIMギャラリー[神奈川県]

現代美術とかモダンアートの文脈とはまったく異なる次元でつくられた、「女神の画家」高杉嵯知さんの水墨画と素朴画。作品の内容もさることながら、窓際にも黒い額の絵を立てかけ、かたわらに花を添えるインスタレーションは、まるで葬式みたい。このように展示と本人の存在感で場の空気を変えてしまうマジックは見習いたいもの。

2009/08/04(火)(村田真)

石塚元太良『LENSMAN』

発行所:赤々舎

発行日:2009年5月30日

石塚元太良と石川直樹はどこか似ている。精力的な旅人というポジションに立ち、旺盛な創作意欲で次々に作品を発表している。着眼点がよく、撮影の方法論を的確に設定し、プリントの仕上げや展示も悪くない。にもかかわらず、いつも「物足りなさ」が残ってしまう。ボールを蹴る所まではいいのだが、それがすっきりとしたファイン・ゴールに結びつかないのだ。
このシリーズは、もしかすると石塚の転回点になる作品かもしれないとは思う。「あとがき」にあたる文章に彼が書いているように、今回は「特別どこにも出かけないで目のまえのモノたちを、普段見慣れたモノたちを、僕は次のモチーフとして撮るのだ」という意気込みで撮影された写真が並んでいるからだ。石塚はそのアイディアを、アラスカの石油パイプラインの撮影の終着点、北極圏のデッドホースという土地で思いついたのだという。地球上で最も遠い場所まで出かけていった時に、ふとかつて撮影した晴海のスクラップ工場の眺めを思い浮かべる。そしてさらに記憶をさかのぼって、幼年時、身のまわりのモノたちに違和感を覚えて「自分をつなぎ止めるようによく自分の手のひらを眺めていた」という原体験にまで行きつくことになる。
この方向づけはまっとうであり、彼がようやく写真家としてのスタートラインをきちんと引き直そうとしているのがわかる。だが、結果的にこの写真集から見えてくるのは「物足りなさ」であり「もどかしさ」だ。被写体としてのモノ、ヒト、記号の選択の仕方、その配置、レイアウト──すべて悪くはない。が、すとんと腑に落ちない。これがいま伝えたいものだというメッセージがクリアに焦点を結ばないのだ。どうすればいいのか。もがき続けるしかないだろう。「レンズマン」の旅はまだ始まったばかりなのだから。

2009/08/05(水)(飯沢耕太郎)

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