artscapeレビュー

NUDE 和光大学卒業制作展 2010

2010年04月01日号

会期:2010/02/20~2010/02/25

BankART Studio NYK[神奈川県]

美大の卒展といえば、おおよそどこでも似たような傾向が見受けられるが、どういうわけか和光大学の卒展はつねに異彩を放っている。今回注目したのは、北方沙依と星田大輔。北方の《CAN LIVE》は空き缶の表面を剥ぎ取り、360゜すべての面を使って短い物語マンガを描いた作品。言葉の使い方にまだ発展途上の感が否めないものの、空き缶を手に取ったときの軽さが物語のなかの寄る辺ない浮遊感を巧みに引き出していた。星田の《愛は慣性上に宿る》は、手塚治虫のマンガ『三つ目がとおる』の1ページにフキダシのセリフを勝手に当てはめ、そのページのなかでコマ割りを入れ換えながら物語を編み上げていく作品。だから十数頁にわたるマンガは、ほとんど同じ絵が続くことになるが、絶妙な言葉のセンスとコマ割りの工夫で、読者を決して飽きさせない。天才の絵を臆面もなく流用し、しかも同じ絵を何度も何度も使い倒すという図太さが、昔ながらのシミュレーショニズムを越えた凄みを醸し出していた。

2010/02/24(水)(福住廉)

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