artscapeレビュー

2009年12月01日号のレビュー/プレビュー

入口卓也 ceramic works「はじまりは今」

会期:2009/10/23~2009/10/28

AD&A gallery[大阪府]

複数の陶土の塊を投げつけたかのように合体させ、両手で張ったテグスでカットした陶オブジェ(やきものなので、当然内部は空洞に加工されている)。岩石を連想させるそのフォルムはどこか人為を越えた魅力を放っており、火山地帯の奇景やイヴ・タンギーの絵画を連想させる。床の間に飾ったら似合いそうだし、逆にモダンリビングの部屋でも異彩を放ちそうだ。茶道家や華道家とコラボして新たな可能性を引き出すのもきっと楽しいだろう。

2009/10/26(小吹隆文)

藤浩志“Toys Saurus”

会期:2009/10/17~2009/11/21

MORI YU GALLERY[京都府]

近年の藤浩志といえば「かえっこ」プロジェクトに代表される“アートプロジェクトの人”という印象が強い。そんな彼が個展を行なうのは意外な気もした。実際、関西での個展は1993年の芦屋市立美術博物館以来ではなかろうか。作品は、玩具やガラクタを合体させて作った怪獣やお城、乗物など。これまでの活動で発生した廃棄物を上手にリサイクルしつつ、アーティストとしての一貫性を保っている。同時にドローイングも多数発表。意外な(といっては失礼か)絵の上手さにも軽い驚きを覚えた。

2009/10/27(小吹隆文)

写真の現在・過去・未来─昭和から今日まで

会期:2009/10/09~2009/10/28

横浜市民ギャラリー[神奈川県]

横浜開港150周年事業のひとつとして催された写真展。タイトルに示されているように、現在と過去と未来をそれぞれ振り分けて展示を構成することで、写真を貫く時間軸を浮き彫りにしようとしたようだ。じっさい、横浜市民ギャラリーと横浜美術館が所蔵するコレクションから選んだ「昭和の写真」、市民参加型のプロジェクト「未来に残したいヨコハマの風景」、そして池田昌紀、進藤万里子、原美樹子の3人のフォトグラファーによる「現代の写真表現」を順番に見ていくと、写真にまつわる直線的な時間の流れをじつに明快に理解することができる。けれども、大きな疑問だったのは、市民が撮影した写真を「未来」に位置づけていたこと。当然のように、横浜の代名詞ともいえる「山の手」を写した写真が大半を占め、結果的にどれも変わり映えのしない凡庸な展示になってしまっていたが、これはむしろ横浜の「現在」をテーマとしたほうが、よりバラエティに富んだ写真が集まっていたのではないだろうか。人工的で無機的、あるいは潔癖症的な「みなとみらい」と灰色の空気が立ち込める「寿町」のように、横浜の現在は両極端な街並みと人びとによって構成されているからだ。あらゆるアプローチによってリアリティを追求する写真が、その両端をおさえないで、はたして写真といえるのだろうか。

2009/10/28(福住廉)

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秋山陽 展

会期:2009/10/27~2009/11/21

アートコートギャラリー[大阪府]

巨大な陶オブジェが、たっぷりとした空間を伴って展示されている。皿状のパーツを無数に積み重ねて大きなフォルムを形成している作品は大層迫力があり、その存在感はまるで古代遺跡の出土品のようだ。こういうスケールの大きな作品をギャラリーで見ると、大抵は手狭な感じがするものだが、会場のギャラリーは十分な広さと高さを持つので作品に負けていない。結果、美術館クオリティの劇的な作品展示を堪能できた。照明が巧みだったことも付記しておく。

2009/10/29(小吹隆文)

ルイ・カーン展

会期:2009/10/10~2009/11/22

ギャラリーヤマキファインアート[兵庫県]

ルイ・カーンといえばシュポール/シュルファスの作家。その程度の知識しかなく、有名作家の新作を関西で見られるなんて、という一点で画廊に出かけた。メッシュの上に半透明の絵具で描かれた作品は、エレガントな軽やかさを放っており、いかにもフランス人という感じ。モネの《睡蓮》との関連もうかがえる。支持体の特性ゆえ透過光が壁面に映り、エコーのような効果を上げているのも印象的だった。

2009/10/30(小吹隆文)

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