artscapeレビュー
あいちトリエンナーレ2016 虹のキャラヴァンサライ 創造する人間の旅
2016年09月01日号
会期:2016/08/11~2016/10/23
愛知芸術文化センター、名古屋市美術館、名古屋・豊橋・岡崎のまちなか[愛知県]
3回目を迎えた「あいちトリエンナーレ」。芸術監督の港千尋が掲げたテーマは「虹のキャラヴァンサライ」だ。キャラバンサライはペルシャ語で「隊商宿」を意味する。虹は「多様性」の言い換えであろう。つまり、世界各国の多様な文化的・地理的・宗教的背景を持つアーティスト(虹)が旅をして愛知県(キャラヴァンサライ)に集い、新たな創造の芽が育まれる、と解釈できる。美しいがややドリーミーではではないか。取材前はそう感じていた。しかし、名古屋、豊橋、岡崎での展示を見るうち、このテーマが現在の不穏な国際情勢(テロ、紛争、難民問題、不寛容など)を反映した切実なメッセージだということに気付いた。一見ドリーミーを装って、じつはきわめて硬派な国際芸術祭。それが「あいちトリエンナーレ2016」なのである。3エリアを比較すると、規模の大きさでは圧倒的に名古屋だが、もっともテーマを体現していたのは豊橋だったと思う。岡崎も、石原邸と岡崎シビコは見応えがあった。名古屋だけを見て帰るつもりの人には、ぜひ豊橋と岡崎にも足を運びなさいと申し上げたい。また名古屋の名古屋市美術館の展示は収まりが良すぎて、おとなしい印象を与えた。国際芸術祭なのだから、もっとはっちゃけても良かったと思う。
2016/08/11(木)・2016/08/17(水)(小吹隆文)